2009/08/10
映画批評0124「コネクテッド」
┏ 映画批評と物語構成論0124 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ 『コネクテッド』 Connected / 保持通話 (08) ┏┏┏┏ 謎の集団に誘拐され、荒地のボロ小屋に監禁される若い母親。 壊れた電話をなんとか組み立て直すが、繋がった先は見知らぬ男性。 ──「誘拐? だったら警察に電話しろよ!!」 男性は話を信じてくれるのか? 犯人グループの目的は一体なんなのか? 香港映画がハリウッドをパクらずに、 正式にリメイク権を取得して、それで製作された歴史的な作品 ……という触れ込みですが、 たしかにわざわざリメイク権を取得しただけのことはある 自信に溢れた、完成度の高い傑作アクション映画に仕上がっています。 ただし、出だしは悪いです。 出だしだけは悪いです。 オリジナル版の『セルラー』ではキム・ベイシンガー演じる 若い(?)母親は「高校の生物教師」という設定でしたが 「生物の先生がどうして壊れた電話を組み立て直すことができるんだよ」 という一応のツッコミどころがありました。 ですので今回は母親は「天才ロボット設計士」という設定に改められ、 配線や基盤に詳しい、工学系。 これなら電話を簡単に直してみせたとしても不思議はありません。 そして夫に先立たれた「若い」シングルマザーという設定にすることで、 主人公の男性との恋愛関係をも予感させつつ、 売れっ子設計士で、社長で、豪邸に住んでいる。 「金持ちであるがゆえに犯人グループに狙われたのかな?」 というミスリードを違和感なく可能にしています。 しかしながら「天才ロボット設計士」という設定そのものは 電話を直す以外にはその後いっさい活かされません。 オリジナルのほうの「生物教師」という設定は、終盤で 犯人の1人を動脈を突いて倒すシーンでその知識が活かされます※。 (※このシーンはリメイク版にもそのまま継承) その代わりに生物教師が電話を直すシーンには違和感が残ります。 (リメイク版のほうは動脈への深い造詣に逆に違和感) 要するに両方に一長一短あるわけですが、 犯人の動脈を突くシーンなんて実はどうでもいい。 はるかに大事なのは「電話を直す」ことのほうなのであって、 「ロボット設計士」という設定のほうが、正しく、理想形です。 しかしこの映画のなかにあって唯一「ロボット」という言葉だけが 未来的で、未来的であるがゆえに、突出してしまっています。 今回わざわざ「ロボット設計士」という特殊な職業を選んだ理由は おそらくは安易な考えで、 「工学系で、高給取りで、なんかない?」 「ロボット設計士とか?」 「それだ!」 これで実際にロボットを組み立てているシーンの1つや 実際に図面を引いているシーンの1つでもあれば グッとリアリティーが増すはずなのに、それもありません。 (パソコンの画面に図面の断片が表示されるだけ) あるいは作り手側が 「ロボット設計士」という言葉が この時代のこの映画のなかで浮いてしまっていることに対して 自覚的なのかもしれません。 いずれにせよ台詞で表現されること以上の描写は特にありません。 印象に残る、特異な職種が活かされない。 それは電話を受け取る側の主人公の男にもいえることで、 彼は「気弱なサラリーマン」。 ではなくて「気弱な『取り立て屋』」。 この彼を「取り立て屋」に設定した理由は、 物語の展開上どうしても拳銃を入手しておく必要があったからで、 アメリカ、ではなく、香港で無理なく拳銃を入手できる職業として 「取り立て屋」が選ばれ、「彼の同僚が拳銃を持っていた」という設定。 しかし取り立て屋という職種そのものは 最後まで特に活かされません。 むしろ感情移入しにくいです。 気弱なサラリーマンに見えるけど、彼の同僚は拳銃を持っている。 これでは感情移入しにくいです。 これだけのハチャメチャな展開であれば、ほかの方法で 偶然拳銃を入手してしまうシチュエーションがあっても良かったはずです。 ……というような具合で、男のほうにしろ、女のほうにしろ、 もっとリアルに平凡な職種でも良かったはずなのに、 わざわざ特殊な職業にした。 でも特に活かされない。 そこが非常に惜しいです。 細かいツッコミどころはほかにもあります。 犯人グループは最初にもっと真剣に山を捜索すべきだったのでは……とか お母さんは美人なのに娘がブサイクすぎる……とか しかしそんな些細なツッコミはこの映画の圧倒的なパワーのまえでは 大した意味はありません。 とにもかくにも── なんの非もない女性が命を狙われ なんの関係もない男性が命を張って助けに向かう この映画の主題は「携帯電話」でもなければ 「主人公の男が携帯電話片手に移動しまくる」ことでもない。 巻き込まれ型の冴えない男がハイリスクノーリターンで頑張る! そこにこそこの映画の真のテーマがあり、そこに気づいて そこを洗練させたこの香港映画のスタッフの腕はたしかに超一流です。 映画の完成度が限りなくMAXに近い!!! あと惜しむらくは、北京語にしろ、広東語にしろ、英語にしろ、 決め台詞が弱いことで シチュエーションの完ペキ度に比べると、決め台詞が弱いです。 この映画を日本で、あるいはアメリカでいまいちどリメイクするならば、 台詞を磨いて、職種を見直す。 さすれば(より)完ペキな 『ダイ・ハード』の『1』に匹敵するような、 そんな普遍的なアクション映画になることでしょう。 ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ジョーという名前の兵士はいません! ──次週は『G.I.ジョー』を分析します!! Copyright(c)Tsuruhara Akihiro. All rights reserved. ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏


