鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】  RSSを登録する

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2009/06/22

映画批評0117「レスラー」

┏ 映画批評と物語構成論0117 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏


    『レスラー』
      The Wrestler (08)


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 ダーレン・アロノフスキー監督は
 長編デビュー作の『パイ』(97)から
 ブラッド・ピット大絶賛の『レクイエム・フォー・ドリーム』(00)、
 そして『ファウンテン 永遠につづく愛』(06)と、
 頭デッカチで観念的な映画ばかり作りつづけてきたので
 そんなアロノフスキーがプロレス映画を撮るだなんて意外!
 ……と、そんな受け止められかたの本作ですが、
 脚本は別の人が担当しています。

 パロディ映画『鉄板ニュース伝説』(08・未)※の脚本家、
 ロバート・シーゲルがこの映画の脚本を担当している。
 そのほうがむしろ意外です。
  ※パンフレットもプレスシートも“The Onion Movie”と原題のまま
   表記されていますが、『鉄板ニュース伝説』というタイトルで
   日本でDVDでリリース済みです。

 とはいえ、ストーリーには意外性のカケラもありません。
 米国プロレス界の内幕暴露的エピソードは
 ドウェイン・ジョンソン出演の米国プロレスドキュメンタリー映画
 『ビヨンド・ザ・マット』(99)そのまんまですし、
 ミッキー・ローク演じる主人公ランディの娘ステファニーが
 レズビアンという設定も、おそらくは安易な設定で、
 もし彼氏がいたとして、彼氏とランディの絡みを考えるのが面倒だったから
 というだけに思えるし、別れた妻は登場すらせず、
 マリサ・トメイ演じる意中の女性パムには恋人がいない。

 すべてが主人公のランディに都合の良いように
 人間関係が単純化されているわけです。

 それでもこの映画が魅力的に思えるのは
 主演のミッキー・ロークの存在感。
 そして、ボクサー映画の金字塔『ロッキー』(76)を意識し、
 と同時にそれとは正反対のことをやろうとした。
 これの2つにほかなりません。

 ダーレン・アロノフスキー自身がインタビュー※で
 「『ロッキー』を意識した」と語っているので、
 これは間違いありません。
  ※http://movies.about.com/od/thewrestler/a/mickey-rourke.htm

 ひょっとしたらランディ(Randy)という名前自体が
 ロッキー(Rocky)に似せてあるのかもしれません。
 Rで始まりYで終わる、全5文字。
 良く似ています。
 再起を賭けて、リングに上がる。
 ストーリーも似ています。
 しかし『ロッキー』と『レスラー』は似て非なる作品です。

 アメリカン・ドリームを実現させる『ロッキー』に対して、
 『レスラー』は明るい映画ではないし、ハッピーエンドでもありません。

 『ロッキー』が夢物語であるのに対し、
 『レスラー』はリアル。
  「映画だからこそ夢物語を見てみたい」
 『ロッキー』がヒットしたのは当然ですし、映画史にも残る作品です。
 『レスラー』には『ロッキー』ほどの知名度すらありません。

 それでもきちんと評価され、
 このように日本でもきちんと日の目を見た。
 それで充分でしょう。

 
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    次週は『愛を読むひと』!!


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