鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】  RSSを登録する

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2009/06/15

映画批評0116「ターミネーター4」

┏ 映画批評と物語構成論0116 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏


    『ターミネーター4』
      Terminator Salvation (09)


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 人を見た目で判断してはいけないわけですが、
 本作の監督であるマックGという男は
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)のビフに似た顔つきの
 長身のアメフト体型で、
 スピルバーグやジョージ・ルーカス、
 あるいはジェームズ・キャメロンとは明らかに異なるタイプ──
 映画監督の多くが高校時代を謳歌できなかった、その反動が
 創作活動に繋がっているのに、マックGは高校生活を謳歌したように見える
  (勉強ができるできない、頭がいい悪い、ということではなく)
  (高校時代をアグレッシブに過ごしたか、それとも奥手だったか)
 その意味では能天気な『チャーリーズ・エンジェル』2作(00, 03)を
 撮ったことには違和感がなく、そのあとにアメフト映画
 『マシュー・マコナヒー マーシャルの栄光』(06)を監督して、
 ああ、やっぱりこの人はスポーツマンタイプなのだな、と。

 しかもそれが“Revenge of the Nerds”(84)のリメイクの企画を蹴って※
 それで『マーシャルの栄光』のほうを撮ったので
 正反対じゃないかよ、と。

 オタクがアメフト部員を打ち負かす“Revenge of the Nerds”が
 まさにそうであるように
 アメリカのほぼすべての青春映画において
 「アメフト部員」と「オタク」は対極に位置する、陽と陰の関係で、
 多くの映画ファンがマックGが『T4』を監督すると聞いて抱いた危惧感
  「マックGはそういうタイプの監督じゃないだろう」
 というのは、つまりはそういうことであり、
  「マックGはオタクじゃない(はず)」
 そんな男が『ターミネーター』を上手く作れるはずがない、
 だいだい自分のことを“McG”と略して名乗るだなんてフザけている、
 だれもがそう思っていたわけです。
 しかし出来上がった『T4』は意外に硬派(でオタク)でした。
 やっぱり人を見た目で判断してはいけません。

 しかもマックGは『ターミネーター』ファンであることを公言しています※。
 ただの請け負い仕事ではない。
 『T4』を作りたくて作ったのだ、と。

 たしかに本編はオマージュ全開(フルスロットル)です。
 “I'll be back.”などの台詞だけではありません。
 アクションなどの細部にもファン魂が溢れています。
  (ex.溶鉱炉で胸に鉄材を突き刺されるのは『2』の終盤と同じ)

 でもストーリー自体は
 オカシナコトばっかりです。
 
 軍事目的に作られた「スカイネット」が人類に反旗を翻し、
 人類vs.機械の全面戦争に突入した未来──。
 スカイネットの予測機能は、近い将来「人類の救世主」となる
 ジョン・コナーを殺害リストの2位に指定し、
 その父親であるカイル・リースを1位に指定している。
 そこまでは矛盾はありません。
 きっと以前は(母親の)サラ・コナーが1位だったのでしょう。
 サラ・コナーは死んだ、ということになっているので
 父親のほうが繰り上げ1位です。
 なるほど。

 そしてスカイネットは見事カイル・リースの捕獲に成功します。

 ならなぜ真っ先に抹殺しないッ!!??
 カイル・リースを殺せば、自動的にジョン・コナーも消えるはずなのに?
 あれだけ執拗かったくせに。
 スカイネットはアホなのでしょうか?

 物語的には本来ならスカイネットはジョン・コナーの妻を捕獲して
 妻をエサにジョン・コナーをおびき出すべきなのです。
 そこに若きカイル・リースが志願して付いてくる。
 それなら矛盾はありません。

 本編に深く関わって来ないから
 ブライス・ダラス・ハワード演じる、主人公の妻に何の意味もない。
 もっと言えば主人公自体に何の意味もない。
 そこが『T4』のダメなところです。

 『ターミネーター』の『1』(84)も『2』(91)も
 ジョン・コナーは「未来の人類の救世主」という情報だけで
 何がどう救世主なのか、具体的に何をするのか、
 それは漠然としていました。
 漠然としたままだったので『4』でも依然として漠然としたままです。

 主人公の価値がよく分からない。
 遂に主人公に昇格したというのに、その価値が依然として漠然としたまま。

 人類vs.機械の全面戦争=未来篇に突入した以上は
 ジョン・コナーの具体的な活躍を描かなければいけないはずなのです。
  (具体的な活躍が思いつかないというのであれば)
 あるいはジョン・コナーが死んでしまう
  =未来が変わってしまう!
  =驚愕のラスト(のまま『5』に突入。請う御期待)
 それでも良かったはずなのです。
 新3部作を謳うのならむしろそうすればよかったのに。
 しかしそうはなりませんでした。
 現状維持。
 結果として今回もなにひとつ進展しませんでした。
 『2』が『1』のやり直しであったように
 『3』(03)が『2』のバリエーションであったように。

 『ターミネーター』という物語自体がガチガチなのです。
 スカイネットを破壊すべきなのだけど、
 スカイネットの破壊に成功したら『ターミネーター』の物語自体が
 終了してしまう。
 だから『2』も『3』も話が前に進まなかった。
 しかし今回の『4』にはチャンスがありました。
 ジョン・コナーが死ぬかも、という変調の兆しが……。
 実に勿体ない。


 ※参照─http://movies.about.com/od/moviesinproduction/a/nerdsrm092004.htm
     http://www.moviesonline.ca/movienews_16766.html


追補:『ターミネーター』の創造主であるジェームズ・キャメロンが
   本作をどう思っているのかの公式な発言は無いようです。
   ただ『ターミネーター』についての最新の発言は
   下記で聴くことができます。
   http://www.archive.org/details/JamesCameronAtAeroTheatre05-29-09
   (09/5/29、アメリカ、サン・ディエゴ、
    『T2』&『アビス』70mmフィルム上映後の特別ティーチイン)

 要約:『3』を作る話はあったけど、ほかにも作りたい物があったし、
    権利の問題がヤヤコシかったので関わらなかった。
    実際に『3』が作られる段階になって、
    シュワルツネッガーが「作ってもいいか?」と訊いてきたので
    「シュワルツネッガーが最高額のギャラを要求するなら」
    と答えた。
    会場爆笑。


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  ネコパ〜ンチ!!!
    次週はミッキー・ローク主演『レスラー』を検証します!!
       (劇中の)客席にRIKACOはいません!


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