2009/03/02
映画批評0101「7つの贈り物」(ネタバレあり)
┏ 映画批評と物語構成論0101 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ 『7つの贈り物』 Seven pounds (08) ┏┏┏┏┏ この映画は、ストーリーの詳細が内密のまま製作され、 「アカデミー賞狙いのヒューマンドラマらしい」とだけは分かるものの、 粗筋を読んでも、予告編を見ても、 主人公がどういう男で、なにをしようとしているのか? その全貌は最後まで明かされませんでした。 原題の“Seven pounds”は、シェークスピアの「ヴェニスの商人」の 「借金のかたにオマエの肉を1ポンドいただく」 からの引用ということで、 あえて両作品を結びつけるならば、 ウィル・スミスがウディ・ハレルソンを電話越しに罵倒する序盤のシーンや (唐突に発せられる「ユダヤ人」という台詞) ウィル・スミス演じる主人公とバリー・ペッパー演じる弁護士が 説明不足のまま唯一無二の親友同士として登場するあたりが (「ヴェニス」のアントニオとバサーニオの関係) ひょっとしたら「ヴェニスの商人」を引用していることへの目配せ ……なのかもしれません。 しかし「ヴェニスの商人」のことを知らなくても 「ポンド」が肉の重さを量る単位だとさえ知っていれば、 主人公が何をしようとしているのか、の、おおよその察しはつきます。 1ポンドが7つで、7パウンズ。 ゆえに邦題が『7つの贈り物』。 主人公は、7つ、誰かに何かを贈るらしい。 そしてそれは自ら命を絶っての臓器提供であった、と。 その展開は、ひと昔まえの大学受験の小論文の問題のような 「脳死についてどう思うか?」 「死刑制度についてどう思うか?」 に似た、単純には答えが出ない、 「それを答えさせて何が知りたいんだ?」 という、答えに窮する内容です。 主演のウィル・スミスは本作のプロデューサーを兼ねており、 しかも劇中の主人公の細かい設定※はウィル本人を想起させます。 ※MIT卒の理系 (ウィル・スミスはMIT卒ではないけれども、 理科系分野が得意なことで知られている) ということは、これはウィル・スミスを想定して書かれた役柄であり、 ウィル・スミスが演じてみたかった役柄、ということになります。 賛否両論あるであろう、単純に答えが出ない役柄を演じる。 あるいは「演じてみたい」。 それは良いことです。 たまには観客に考えさせるハリウッド映画があってもいいでしょう。 しかし本作は、主人公の行動の、その是非を問うてはいません。 邦題の『贈り物』という言葉は、これは非常に肯定的な言葉であり、 この邦題をアメリカ側が許可したということは 主人公が託した「ポンド」の中身は「贈り物」という解釈で宜しい ということになります。 ということはつまり、 (台詞には無いけれども) どうやらこの映画は主人公の行動を肯定しているらしい…… ということになります。 言われてみればたしかに エンディングは(悲しみに満ちてはいるけども)主人公の行動を否定しない 肯定的な描かれかたでした。 贖罪の物語だ! といってしまえば単純ですが、 自ら命を絶っている。 その是非は問われてしかるべきなのに どうやらこの映画はそれを肯定してしまっているらしい……。 そこにこの映画の「後味の悪さ」をおぼえるか、 あるいは「いや、ちがうのだ」と、それでもなお この映画は主人公の行動の「その是非を問うているのだ」と解釈するのか。 (脳死問題や死刑制度に満場一致の答えが出ないのと同じで) これは観客を悩ませ、そして観客を選ぶ映画です。 ※参考文献:「ヴェニスの商人」光文社古典新訳文庫 ┏┏┏┏┏ ┏┏┏┏┏ ┏┏┏┏┏ ┏┏┏┏┏ これは傑作なのか!? 話を盛り込みすぎた駄作なのか!? 次回はバズ・ラーマン監督『オーストラリア』を検証します!! Copyright(c)Tsuruhara Akihiro. All rights reserved. ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏



