映画批評0052「バンテージ・ポイント」(その3)(ネタバレあり)
■□映画批評と物語構成論0052□■
前回に引きつづき……
『バンテージ・ポイント』
Vantage Point (2008)
◇ ◇
米大統領狙撃事件の裏に隠された、テロ、裏切り、どんでん返し……。
そのストーリー展開は、まるでTVドラマ『24』のようであり、もった
いつけたところで場面が切り替わるところまで全くいっしょ。それがTVで
あるか映画であるか、あるいは誰が出演しているかの違いだけで、「『24』
のような映画だ」と看破されても仕方がないような内容です。
実際、
●『24』のような話をやりたかった、のか
●たまたま『24』のような話になってしまった、のか
は分かりませんが、結果的に『24』に酷似しているのは紛れもない事実
であり、それはおそらく脚本の初期段階ですでにそうだったのでしょう。
ではどうやって差別化をはかろうかと考えた場合に、
●『羅生門』スタイル
を取り入れることで差別化をはかろうとした。
しかも……
●『羅生門』の4人の倍の視点で描く
つまりは8人視点。
これなら亜流ではなくて野心作です。
ゆえにタイトルが“Vantage Point”=「観点」。
8人視点をウリにした野心作(にして実験作)ということになります。
◇ ◇ ◇
(本作のポスタービジュアル)
http://www.imdb.com/media/rm4260665600/tt0443274
ポスターをひとめ見ただけで(そのシルエットで)誰が犯人かが分かって
しまうのがこの映画の難点ですが、分かりにくい映画よりは百倍いさぎよく、
実際問題それ自体は大したオチではありません。
問題はこの8人視点をうまく活かしきれたのかどうか、あるいは「観点」
という主題をうまく活かせたのかどうか、ということに尽きるはずです。
◇ ◇ 本題 ◇ ◇
8人視点というわりには、その視点のバランスは平等ではなく、事件の謎
を解き明かしていくのはデニス・クエイド演じる中年SPであり、彼がこの
映画の主人公だといっても差し支えはない展開です。
大統領を狙撃した犯人側(=感情移入すべきではないキャラクター)と平
等の視点が設けられているよりは、正義の味方に肩入れしているほうがはる
かに健全であり、大手スタジオ制作の映画としてもそれは間違ってはいませ
ん。
つまりこの映画は「異なる8人の視点」をウリにしつつもその内実は……
●事件の謎を解き明かしていく主人公側、と
●事件を動かしていく犯人側、の
2つの視点が存在している、ということになります。
では、なぜ「2つの視点」が必要だったのでしょうか?
言い換えるならばなぜ実際には2つしか存在し得なかったのでしょうか?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ということで引きつづき本作を検証しつつ、
『クローバーフィールド/HAKAISHA』につづけていきます。
Copyright(c)Tsuruhara Akihiro. All rights reserved.
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