映画批評0051「バンテージ・ポイント」(その2)
■□映画批評と物語構成論0051□■
前回に引きつづき……
『バンテージ・ポイント』
Vantage Point (2008)
◇ ◇
スペインで遊説中のアメリカ大統領が何者かに狙撃される……。
この映画はその事件現場に居合わせた8人のキャラクターを用いて、その
8人の視点で同じ時間をプレイバックしながら終盤に向かって1つの真実に
辿り着いていく──という、その意味では『羅生門』(50)スタイルを踏襲し
ているわけですが、『羅生門』の証言者が4人であるのに対して『バンテー
ジ・ポイント』はなんと8人!
それでいて上映時間は『羅生門』の88分にプラス2分でほぼ同じ。
ミステリー映画にしろアクション映画にしろ、
●キャラクターの心理を描いていない
●キャラクターのバックグラウンドを描いていない
と指摘されてしまってはグウの音も出ないのが世の常で、だからこそ映画
製作者たちは心理描写に細心の注意を払い、キャラクターを丹念に描くこと
に執心するのですが、本作は単純に割っても1人11分。
これでは「人間を描いていない」と指摘されてしまっても仕方がありませ
ん。
しかしこの1クリップ10分という短さは、動画投稿サイトYouTubeのそ
れに良く似ています。
1クリップ長くても10分強。
それでも更につづく場合は(1/8),(2/8),という具合に次に繋いでいく。
それがいまの動画の主流であり、視聴者の集中力の限界(なのかもしれま
せん)。
もし仮にYouTubeが時代の主流なのだとすれば、人物描写を潔く切り捨て
てまででも「1クリップ10分」の原則に従ってみせた本作は、映像の次代
をうまく取り込んでみせた、ということになります。
それでいて爆発シーンあり、ド派手なカーアクションありと、いまの観客
を飽きさせない要素もキチンと仕込んである。
飽きずに90分間たのしめる。
この映画はいまの観客の快楽原則にとことん忠実な作品なのです。
しかしストーリーそのものはオーソドックスな劇映画の範疇を越えてはお
らず、「映像の次代を見た!」というほどには次世代ではない。
そこがこの映画の特徴でもあり、限界でもあります。
◇ ◇ ◇
……ということで
『クローバーフィールド』を参照しつつ
次週につづきます。
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