鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】 RSSを登録する

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2008/03/17

映画批評0051「バンテージ・ポイント」(その2)

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■□映画批評と物語構成論0051□■


 前回に引きつづき……


    『バンテージ・ポイント』
              Vantage Point (2008)


◇ ◇

 スペインで遊説中のアメリカ大統領が何者かに狙撃される……。
 この映画はその事件現場に居合わせた8人のキャラクターを用いて、その
8人の視点で同じ時間をプレイバックしながら終盤に向かって1つの真実に
辿り着いていく──という、その意味では『羅生門』(50)スタイルを踏襲し
ているわけですが、『羅生門』の証言者が4人であるのに対して『バンテー
ジ・ポイント』はなんと8人!
 それでいて上映時間は『羅生門』の88分にプラス2分でほぼ同じ。

 ミステリー映画にしろアクション映画にしろ、

    ●キャラクターの心理を描いていない
    ●キャラクターのバックグラウンドを描いていない

 と指摘されてしまってはグウの音も出ないのが世の常で、だからこそ映画
製作者たちは心理描写に細心の注意を払い、キャラクターを丹念に描くこと
に執心するのですが、本作は単純に割っても1人11分。
 これでは「人間を描いていない」と指摘されてしまっても仕方がありませ
ん。

 しかしこの1クリップ10分という短さは、動画投稿サイトYouTubeのそ
れに良く似ています。
 1クリップ長くても10分強。
 それでも更につづく場合は(1/8),(2/8),という具合に次に繋いでいく。
 それがいまの動画の主流であり、視聴者の集中力の限界(なのかもしれま
せん)。

 もし仮にYouTubeが時代の主流なのだとすれば、人物描写を潔く切り捨て
てまででも「1クリップ10分」の原則に従ってみせた本作は、映像の次代
をうまく取り込んでみせた、ということになります。
 それでいて爆発シーンあり、ド派手なカーアクションありと、いまの観客
を飽きさせない要素もキチンと仕込んである。
 飽きずに90分間たのしめる。
 この映画はいまの観客の快楽原則にとことん忠実な作品なのです。

 しかしストーリーそのものはオーソドックスな劇映画の範疇を越えてはお
らず、「映像の次代を見た!」というほどには次世代ではない。
 そこがこの映画の特徴でもあり、限界でもあります。


◇ ◇ ◇


 ……ということで
    『クローバーフィールド』を参照しつつ
       次週につづきます。


Copyright(c)Tsuruhara Akihiro. All rights reserved.


■□                              □■

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