映画批評0048「L change the WorLd」
■□映画批評と物語構成論0048□■
『L change the WorLd』(2007)
Point:──ゲストキャラの難しさ
◇ ◇
宿敵に勝利するために自らの寿命を死神に捧げた名探偵・L(エル)。
残りの23日で彼が解決した、もう1つの事件とは?
香港や台湾でも(ほぼ)同時期に公開され、大ヒットした映画版『デス
ノート』(06)。
そのスピンオフとして製作された本作ですが、本家シリーズの特徴であっ
た「死神が存在する」という特異な設定は序盤で早々に切り捨てられ(文字
どおり「燃やされ」)、あとは松山ケンイチ演じる主人公・Lの魅力──こ
の一点に絞ってストーリーが展開していきます。
そもそもタイトルが『L』ですし、ファン=観客が求めているのはLの活
躍なのですから、それはそれで問題はありません。
謎めいた暗号文を(観客への説明もなしに)シレッと解いてみせたり、本
家シリーズでバスの運転手だった田中要次が本作ではタクシーの運転手だっ
たりと、「ネットで盛り上がってください」と言わんばかりの小ネタが仕込
まれている──これも問題はないでしょう。
問題は、Lが今回対峙する「敵」──その設定です。
本家シリーズ『デスノート』の主人公・夜神月(やがみらいと)が好青年
な外見の、その内に秘めたる邪悪な性格──【陽な陰】であるのに対して、
Lは【陰な陽】──ひきこもりなのにオチャメdす。
この好対照な性格づけが完璧な【対峙】の構図をなし、独自の駆け引きド
ラマを生んでいました。
それは原作の功績でもあり、本家シリーズの金子修介監督の演出と松山ケ
ンイチ本人の演技プランの正確さでもあるでしょう(特に後編)。
だからこそヒットをし、松山ケンイチ演じるLに注目があつまって、今回
のスピンオフが製作されるに至ったわけですが、問題なのは、Lには原作
と、映画版の前後編という、観客との【共有体験】があるのに対して、今回
の敵(高嶋政伸と工藤夕貴)には何も無い。
今回の敵は、今回の2時間以内に「初登場」して「活躍」して「退場」し
なくてはならない。
この「差」です。
Lと今回の敵とでは、観客と共有してきた時間が圧倒的に異なるのです。
それがシリーズ物の宿命でもあり、最大の難関だともいえるでしょう。
●シリーズ物の主人公とゲストキャラとでは
観客と共有してきた時間が圧倒的に違う
観客とLとのあいだには【共有時間】=【共有体験】がすでにあり、それ
は映画の前後編の計4時間でも、1作目が公開されてから本作に至るまでの
リアルな経過時間(2年間)の、そのどちらでもいいのですが、とにかく、
今回あらたにたとえどんな敵が登場してきたとしても、登場してきた時点で
すでにLとは対等ではありえないのです。
●どんな敵を登場させても決して対等ではありえない
これは『デスノート』だけに限った話ではありません。シリーズ物が共通
して抱える問題は「マンネリ」だけではないのです。
米テレビドラマ「24」の第7シーズンでトニー・アルメイダが敵として
登場するのも、つまりはこれと同じ理由だと断言できます(※)。
※……主人公の職場の同僚
2009.1.アメリカ本国で放映開始予定
◇ ◇ ◇
次回も引きつづき『L change the WorLd』──
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