【父親術 046】境界線の引きどころ
子どもが育つ“父親術” 第046号(2008/03/14)
◇◆ 境界線の引きどころ ◆◇
ある家庭での一場面です。
子「ママー、このスカーフ借りていい?」
母「何に使うの?」
子「お人形さんのお布団にするの」
母「それならいいわよ。でも汚さないでね」
子「はーい」
子どもはお人形さんにスカーフ布団をかけ、やさしく
とんとんしてあげます。
やがてお人形さんが目を覚ますと、おやつの時間です。
ピンクの折り紙で作ったイチゴを食べさせてあげています。
それから、お散歩。スカーフはおんぶヒモに変身し、
お人形さんを背負って外へ。
・・・あとは察しがつきますよね。
スカーフには、洗っても落ちない汚れが残りました。
母親には、大切なスカーフが汚れてしまった悲しさと、
娘に貸したことへの後悔が残りました。
そして子どもには、ママとの約束を守れず、ママを
悲しませてしまったという辛い経験が残りました。
母親だって、悲しい結末を望んでいたわけではありません。
むしろ、子どもが楽しめるよう、ギリギリの所―汚しさえ
しなければ、使うのはOK―まで許容してあげただけ。
ただその「ギリギリの所」に引かれた線が、子どもに
とっては歩きにくかった・・・言い換えれば、母親が
「子どもにとって歩きにくい所に線を引いてしまった」
ために、悲しいできごとが起きてしまったのです。
子どもにとっては、こうした辛い経験も時には必要かも
しれません。
ただ、親の判断ミスによって、必要以上に何度もこんな
経験を子どもにさせてしまっているのなら、そこは
改めたいところ。
今号では、子どもに「やってよい/やっちゃだめ」を
どう伝えるかについての技術をお伝えします。
さっそくですが、ポイントは3つあります。
【ポイント1】『禁止』は最小限に
これまでにも何度か書きましたが、
「できるだけ『禁止』『コントロール』はせず、
『自分で経験して学ぶ』をさせてあげる」
ことは常に意識しておいてください。
危ないからと親が禁止してしまうと、子どもは何が
危なかったのかを学ぶ機会を奪われ、どんな場面で
用心すべきかの勘がいつまでたっても養われません。
子どもに禁止・制約を言いたくなったら、まずひと呼吸
置くくらいでちょうど良いと思います。
子どもにケガ・汚れ・トラブルは付き物と割り切って、
親は見守る姿勢に徹してあげましょう。
【ポイント2】具体的に示す
子どもに何かを「やってよい」「やっちゃだめ」を伝える
時は、その“何か”をハッキリ示すこと。
「あんまりヘンなことしないでね」
「普通に使うならいいよ」
などの言い方では、親の「やっても良い/やってはいけない
と考えていること」は伝わりません。
子どもは(小さい子は特に)、抽象的な概念は理解しづらく、
具体的に見えるモノについて語らないと分かりにくいものです。
上記のような形容詞(=抽象イメージ)を使った表現
「ヘン」「普通」で理解しろというのは無理な話。
「この紙だったら、何を書いても、破ったり切ったり
貼ったりしても、何をしてもいいよ!」
などのように、具体的に言ってあげると、子どもはずっと
理解しやすくなります。
【ポイント3】境界線の引きどころ
今号のメインテーマ
「『やってよい』と『やっちゃだめ』の境界線が、
子どもにとって受け止めやすいこと」
についてお伝えします。
「受け止めやすい」をさらに分解すると、
「わかりやすい」+「納得できる」+「実行しやすい」
となります。
受け止めやい境界線は守りやすい、受け止めにくい境界線は
守りにくい、というシンプルな理屈です。
例を挙げて説明しますね。
(1)「スカーフを使っても良いけど、汚さないでね」
→境界線は「使う」と「汚す」の間に引かれています。
・わかりやすい:○
・納得できる :○
・実行しやすい:×
子どもは、次から次へと豊かな発想が湧き出てくる生き物。
「お布団に使うのは良くて、おんぶヒモもOKだけど、
おんぶヒモの状態で外に出るのはNG」
という境界線の引き方は、子どもにとってはアクセルと
ブレーキを一緒に踏まされているに等しく、かわいそうです。
創造性・想像力が豊富な子であれば(本当はすべての子が
そうですが)、ほぼ確実に境界線を踏み越えてしまいます。
逆に踏み越えない子は、親の意向を気にしすぎて創造性・
想像力にフタをしてしまっているのではと心配です。
いずれにしても、この境界線の引き方が適切でないことは
わかると思います。
(2)「壊れやすい物は触らないでよ」
→境界線は「壊れにくいものを触る」と「壊れやすいものを
触る」の間に引かれています。
・わかりやすい:×
・納得できる :○
・実行しやすい:×(分からないから実行のしようがない)
どんな品物を、どのように扱うと壊れるのかを、日々習得中
なのが子どもたち。
これから学ぶこと=まだ知らないことを境界線にして、
守れと言うのは酷でしょう。
(3)「お姉ちゃんは使っても良いけど、なっちゃんは
だめよ」
→境界線は「お姉ちゃんが使う」と「なっちゃんが使う」
の間に引かれています。
・わかりやすい:○
・納得できる :×
・実行しやすい:×(納得できないから実行したくない)
子どもの年齢・成長度を見て判断したことでも、子どもと
しては納得しがたいものです。
また、子どもの反発にも一理あります。
子どもというのは「大きくなったから安全に使えるように
なる」わけではなく、「何度も失敗する経験ができたから、
大きくなるにつれて安全に使えるようになってきた」と
いうのが真実です。
何をしようとしているかにもよりますが、お姉ちゃんに
許可できる程度のことであれば、妹にもやらせて(失敗の
経験を積ませて)あげた方が適切なケースが多いはずです。
(4)「机の引き出しに入っているのは、パパの大事な
ものばかりだから、子どもたちは触らないでね。
みんなが使って良いものは、こっちの棚に置く
ようにしよう」
→境界線は「机」と「棚」の間に引かれています。
・わかりやすい:○
・納得できる :○
・実行しやすい:○
このような即物的でハッキリ分かれているものの間に
境界線を引くと、子どもにとっては非常にわかりやすく
なります。
なお、棚の「上の段」と「下の段」の間の境界線だと、
3歳以下くらいだと「実行」が難しいかも知れません。
(遊びに夢中になっているうちに踏み越えてしまいやすい)
できるだけ、「棚まるごと」くらいを単位に設定して
あげた方が良いでしょう。
同じ要領で、「この部屋にあるもの」と「向こうの部屋に
あるもの」との間の境界線もわかりやすい方法です。
ただし、ドアなどで仕切られておらず、開放してつながって
いる場合は「実行しやすさ:△」なのでご注意を。
今号の話をまとめると、
・極力「禁止」「制約」はしない。
・するなら、どこからが“ダメ”なのかを、
‐子どもが受け止めやすい所に境界線を定め、
‐境界線を、即物的・具体的に示す。
となります。
補足すると、なぜダメかの理由も添えられるとなお効果的です。
子どもの納得度も高まりますし、子ども自身が別な場面で
応用を利かせるための材料にできます。
余裕があれば「理由を添える」も併せて、心に留めておいて
ください。
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今週もお付き合いいただきありがとうございました。
ご意見・ご感想・ご質問・ご相談など、皆さんの声をお寄せ
いただけたら嬉しいです。お気軽にメールください!
発行者 くろさわ
kuro@snow.email.ne.jp
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メール送信時は半角に直してご使用ください)
いろいろな事例を通じて、皆さんと一緒に『父親』として
進歩していけたら嬉しいです。
それではまた、来週!


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