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2008/02/09

スクリーンに見つけた恋愛風景 〜セカンド・ラブ〜 【男と女】

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スクリーンにはさまざまな恋愛風景が描かれています。熱く燃え上がるような恋
もあれば、相手を包み込むような深い愛もあります。このメルマガでは、実際の
セリフを織りまぜながら、映画の中の恋愛風景を紹介していきます。


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           Scene 42 「セカンド・ラブ」           

               【 男と女 】               
             Un Homme et une Femme             

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いつも「スクリーンに見つけた恋愛風景」をご愛読いただき、
ありがとうございます。

第42号の今回は、1966年に製作・公開されたフランス映画【男と女】を採り上げ
ます。共に配偶者を亡くした30代半ばの男女が、新たな恋の予感に心をときめか
せる様子が、スピード感あふれる映像の中に生き生きと描かれた作品です。


−−◇◆ 目 次 ◆◇−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                       
 1. 基本情報
 2. 見どころ
 3. 「セカンド・ラブ」の分析
 4. 裏話

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1. 基本情報

■主な出演:                   (★=男優/☆=女優)
☆アヌーク・エーメ        ・・・ ☆アンヌ・ゴーチェ
★ジャン=ルイ・トランティニャン ・・・ ★ジャン=ルイ・デュロック
★ピエール・バルー        ・・・ ★ピエール・ゴーチェ

■監督:
クロード・ルルーシュ


■ストーリー:

フランス、ドービル。この地にある寄宿舎制の小学校に、アンヌは1人娘のフラン
ソワーズを、ジャン=ルイは1人息子のアントワーヌを預けています。2人とも週
末になると、パリから子どもに会いに来ていました。

アンヌはスクリプター(映画の撮影現場で、撮影シーンの記録や管理を担当する
人)。スタントマンの夫は、撮影中アンヌの目の前で事故死していました。一
方、ジャン=ルイはレーサーで数々のレースに参戦しています。彼の妻は数年
前、過酷なレースを見守るストレスから自殺していました。

冬のある日、ジャン=ルイはアンヌをドービルからパリまで車で送ることになり
ました。

美しいアンヌにハンサムなジャン=ルイ。はじめはお互いの容姿容貌に惹かれた
2人でしたが、道中他愛もない会話を交わしたり、ラジオから流れる音楽に笑った
りしているうちに、心まで打ち解けていきます。

次の週末、ジャン=ルイはアンヌと一緒に子どもたちを訪ね、2組の親子で食事を
し船に乗るなど、楽しい時間を過ごします。

つらい過去を乗り越えて現在(いま)を生きる2人は、次第に愛し合うようになり
ますが・・・


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2. 見どころ

【男と女】は、♪シャーバーダ、ダバダバダ、ダバダバダ♪というテーマ音楽が
有名な作品です。映画自体観たことのない人でも、CMなどでも数多く採り上げ
られたこの音楽は、耳にしたことがあるのではないでしょうか。

本作は、クロード・ルルーシュ監督が弱冠29歳のときに手がけた作品です。カン
ヌ国際映画祭のパルム・ドール、アカデミー賞の外国語映画賞および脚本賞とい
う輝かしい栄冠を手にしています。

ルルーシュは、映画監督として本作まで5年のキャリアがありましたが、ヒットに
恵まれず自身のプロダクションは破産寸前に追い込まれていました。起死回生と
ばかりに放った本作が大ヒットを記録し、ルルーシュは破産を免れただけでなく
自らの評価も高めることができたのです。


彼ははじめから、主演にジャン=ルイ・トランティニャンを思い浮かべながら脚
本を書いたといいます。今では繊細な演技が魅力の知性派俳優として知られるト
ランティニャンにとっても、本作は出世作となりました。

相手役はトランティニャンの希望で、アヌーク・エーメにオファーしました。
エーメはフェデリコ・フェリーニ監督の【甘い生活】や【8 1/2】などで、すで
にスター女優となっていました。近寄りがたいミステリアスな美女といった雰囲
気を醸し出しているエーメですが、本作では子どもの母親として、無邪気に笑っ
たり走ったり穏やかな視線を投げかけたりする姿も印象的です。新しい恋と過去
との間で苦悩する女性の細やかな心情を表現した演技も認められ、本作でアカデ
ミー主演女優賞にノミネートされました。


音楽を担当したフランシス・レイにとっても、【男と女】は出世作となりまし
た。甘美で叙情的ながら都会的ムードの漂う音楽が、本作を大いに盛り上げてい
るのは言うまでもありません。彼はこの後も【白い恋人たち】や【ある愛の詩】
のテーマなどすばらしい作品を世に送り出しています。


また、作品には「ル・マン24時間レース」や「モンテカルロラリー」など、世界
屈指のカーレース大会のシーンも盛り込まれ、男性にも大いに楽しめる内容と
なっています。

特に「モンテカルロラリー」は、ルルーシュ監督、トランティニャン、もう1名の
スタッフの3人で実際に参戦した様子を映像化したものです。ハンドルを握るトラ
ンティニャンを、助手席に座ったルルーシュ監督がカメラで撮影しました。ド
キュメンタリーフィルムのような臨場感あふれるシーンが展開されています。

ラリー終了後、本番で使用したフォード・マスタングを駆って、ジャン=ルイが
アンヌに会いにモンテカルロからパリまで夜通し飛ばしてくるというシーンが、
作品の大きな見どころとなっています。


【男と女】は濃厚なラブロマンス作品と思われるかもしれませんが、誰もが経験
する恋のはじまりをサラリと描いた作品なのです。恋をして少年少女のように胸
をときめかせる主人公たちのみずみずしい姿が印象的です。

ルルーシュ監督の言葉を借りれば、「恋愛は外が寒いほど燃え上がる」。厳寒の
この時期、【男と女】でハートを内側から温めてみてはいかがでしょうか。


なお、ルルーシュ監督は、20年後のアンヌとジャン=ルイを描いた【男と女II】
を1986年に製作しています。もちろん、主演はエーメとトランティニャンです。


★,。:’°☆,。:’°★,。:’°☆,。:’°★,。:’°☆,。:’°

3. 「セカンド・ラブ」の分析

フランスのリゾート地ドービル。この地にある寄宿舎制小学校に子どもを預ける
保護者同士として、アンヌとジャン=ルイは知り合います。毎週日曜日、アンヌ
は娘のフランソワーズに、ジャン=ルイは息子のアントワーヌに面会に訪れ、束
の間の親子水入らずの時間を楽しんでいたのです。

面会時間ギリギリまで娘と過ごすアンヌは、いつも汽車に乗り遅れドービルのホ
テルに泊まっていました。でも、その夜は学校の先生の計らいで、ちょうど帰宅
しようとしていたジャン=ルイの車に同乗させてもらうことになります。


車の中で2人は、お互いの子どもの話やラジオから流れる楽しい歌に声を出して
笑ったりしていました。相手の容姿容貌の良さだけでなく、人となりにも好感を
抱くようになり、2人は何度も微笑み合うのでした。

アンヌは、スタントマンの夫ピエールとスクリプターの自分が、これまで共に臨
んだ映画撮影のエピソードを語ります。また、ロケでブラジルへ行ったときの楽
しかった想い出も。

しかし、その後彼女は告白します。ピエールはすでに亡くなっていると。戦場の
シーンの撮影中、爆弾が当たったのでした。それも、アンヌの目の前で。

ジャン=ルイは驚きます。つい先程まで、アンヌはまるで夫が生きているかのよ
うに話をしていたからです。


次の日曜日、アンヌはジャン=ルイの車でドービルへと向かいました。2組の親子
は、レストランで一緒に食事をします。子どもたちは大はしゃぎ。大人たちは
ジャン=ルイの職業であるレーサーの仕事についてや、アンヌが身を置く映画界
のことについてなど、子どもの世話を焼きながらあれこれ語り合います。親とし
て、また仕事に誇りを持つ社会人として、2人は相手の中に自分との共通点を感じ
取っていました。

その後、4人は船に乗ります。漁船のような小船でしたが、海中を覗き込んだり、
景色を眺めたり、体を寄せ合ったりしながら、楽しいひとときを過ごします。ア
ンヌとジャン=ルイの心の距離も、一気に縮まっていくのでした。


パリへ帰る車中、ジャン=ルイはアンヌの手を握ります。微笑みを浮かべていた
アンヌの顔つきが急に真剣なものになり、握られた手とジャン=ルイの顔とを何
度も見比べます。そこでジャン=ルイは、妻のことを話し始めるのでした。

数年前の「ル・マン24時間レース」。妻はテレビ中継で見守っていてくれまし
た。ところが、レース中ジャン=ルイは事故を起こし、意識不明に陥ります。3時
間にわたる大手術が施されますが、意識が戻るかどうかわからない状態でした。

夫を案じ続ける生活で神経がすでに参っていた妻は、ストレスが限界を超えてし
まいます。そして精神に異常を来たし、自殺してしまったのでした。

話を聞き終えたアンヌは大きなショックを受け、絶句してしまいます。


数日後、ジャン=ルイは「モンテカルロラリー」に出場し、雪の山道を疾走する
真剣勝負に挑んでいました。同じ頃、アンヌはスクリプターの仕事に打ち込んで
いました。2人とも現在(いま)という時を精一杯生きていたのです。

仕事を終えテレビ中継を観ていたアンヌは、ジャン=ルイが優勝したことを知り
ます。そしてすぐに電報を打ちます。『ブラボー。愛してます』と。

祝賀パーティーで電報を受け取ったジャン=ルイは、すぐさま席を立ち数時間前
まで過酷なレースを共にしていた泥だらけのマスタングに乗り込みます。

パリへ向かうジャン=ルイは、満足感でいっぱいでした。『よくあんな電報が打
てたな。しかもあんな美人が。まったく最高だ。大した勇気だ』アンヌがここま
で自分を思ってくれていたとは、予想もしていなかったのです。


アンヌはフランソワーズとアントワーヌを連れて、ドービルの海に来ていまし
た。ジャン=ルイもパリから車を飛ばしてきます。彼は砂浜で遊ぶ3人に近づく
と、車のライトを点滅させます。次の瞬間、3人は彼の方へ駆け寄ります。

アンヌに子どもたちを気にする余裕などありませんでした。ただ、目の前に愛す
る男性がいる。それがすべてでした。そして、ジャン=ルイにもアンヌしか見え
ていませんでした。2人はしっかりと抱き合います。


子どもたちを送り届けた後、2人はドービルのホテルにいました。初めて会った時
から待ち望んでいた瞬間でした。抱き合い、幸せを感じるアンヌ。ところが、ふ
いにアンヌの脳裏に浮かんで来たのは亡き夫ピエール。なぜだかわかりません。
でも、ピエールの姿は大きくなるばかり。想い出が走馬灯のように甦ります。

アンヌは戸惑いと苦痛を感じていました。まだ夫を忘れていなかった自分に気づ
いてしまったのです。新しい愛にまっしぐらに駆けていったはずでしたが、身も
心もジャン=ルイの元へ行こうとした最後の瞬間、ピエールを思い出してしまっ
たのです。アンヌは手で顔を覆い、ジャン=ルイを拒絶します。

『なぜだ?』『夫のせいよ』『もう死んだ』アンヌは首を振ります。

ホテルを出た2人には、気まずい空気が漂っていました。アンヌはジャン=ルイと
目を合わせようとせず、一言も口をききません。自分の気持ちを持て余していた
のです。ジャン=ルイは、そんなアンヌの姿をずっと目で追っていました。

アンヌは、1人汽車でパリへ帰ることにしました。ジャン=ルイはホームで見送
り、こう切り出します。『アンヌ。なぜ夫の死を話した?』アンヌは一瞬微笑ん
だ後、『私の中ではまだ死んでないわ』と言い切ります。

汽車が出発しました。ジャン=ルイは車の方へ戻ります。1度は燃え上がった愛の
炎は、このまま消えてしまうのでしょうか・・・


人間の心は時として、自分でも理解できない方向へ向かうことがあります。夫を
失う原因となった仕事を続けられるほど立ち直りを見せていたアンヌでしたが、
心の奥底にはまだ夫への愛が残っていたのです。

でもジャン=ルイなら、アンヌを丸ごと理解して受け入れることができるような
気がします。同じ痛みを知り、幸せを求める気持ちは共通しているからです。

一生懸命生きている人は、2度目の恋で必ず幸せになれるはず。2人が将来同じ道
を歩んでいけることを願わずにはいられません。


*『 』は実際のセリフです。


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※ 【男と女】はフランス映画のため、「ヒロインのセリフから」はお休みしま
す。


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4. 裏話

【男と女】は、ときにカラー映像で、ときにモノクロ映像で展開されます。ル
ルーシュ監督は、経済的な理由から全編モノクロ映像で撮影する予定だったとい
います。ところが、「カラーで撮るならテレビ放映に4万ドル出す」と申し出てく
れるプロデューサーが現れ、急遽予定を変更したそうです。

とはいっても、全編カラーで撮影するほどの予算は取れず、屋外のシーンはカ
ラーで、室内のシーンはモノクロで撮影することになりました。

但し、例外もあります。屋外でもレースのシーンはすべてモノクロです。ジャン
=ルイがアンヌを自家用車に乗せて走るシーンは、カラーのときもあればモノク
ロのときもあります。

モノクロ映像は、ドキュメンタリー風なテイストを作り出しただけでなく、見つ
め合ったり抱き合ったりする2人のラブシーンを、生々しさを隠して美しく見せる
という効果も上げています。

一方カラー映像は、きびきびと仕事をこなすアンヌの表情や、4人が擬似家族のよ
うに無邪気にはしゃぐ様子を、生き生きと描き出しています。特に、アンヌと亡
き夫とが大自然の中で作った幸福な想い出がカラーでくっきりと映し出されるの
が、強く印象に残ります。

カラーとモノクロ。この切り替えを意識しながら鑑賞すると、作品の味わいが
より深まることでしょう。


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いかがでしたでしょうか? この週末、ぜひ【男と女】を観てくださいね。
次回はどんな映画の中に恋愛風景を見つけましょうか。

どうぞお楽しみに。



発行者: 
dreamy(翻訳家)
発行者サイト: 
http://ivory.ap.teacup.com/dreamer312/ 
ご意見・ご感想をお待ちしています: 
soup710@yahoo.co.jp


協力:

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