シネマトコラムvol.95「レスラー」レビュー
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シネマトコラム vol.95 (2009.6.25)
*新作レビュー「レスラー」
*ちょっと蛇足
*次号予告
*映画以外のコト
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*新作レビュー
「レスラー」 ダーレン・アロノフスキー監督 (米)
ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェルウッドほか出演
中年プロレスラーの悲哀と人生がリアルに描かれた、非常に輪郭のある人間
ドラマである。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ賞主演男
優賞ほか多くの映画賞を受賞した好作品。本作に俳優復活をかけたミッキー・
ロークの、渾身の演技が光る。
かつて最強のレスラーとして人気を誇ったランディ(ミッキー・ローク)。50
代になった彼には、肉体の限界がしのび寄り客も入らない。スーパーでアルバ
イトをしながら、依然としてプロレスを続けているが、若い頃の奔放さが災い
して妻は去り、娘のステファニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)にも嫌われ、
トレーラーハウスで近所の子供達を相手に細々と暮らしている。
ある日、試合後に心臓発作を起こして倒れた彼は、医師からプロレスをやめ
るよう告げられる。ショックを受けた彼は、家族をつくって余生を過ごすこと
に一縷の望みを託し、好意を寄せている年増のストリッパー、キャシディ(マリ
サ・トメイ)と、疎遠だった娘にそのことを話すが、不器用ゆえに結局空回り。
自らの生きる意味を考えた彼は再び試合に出ることを決心する……。
光と陰、明と暗のコントラストが際立っている。華やかなリング上と、落差
の大きい普段の生活。そのどちらをも絶妙に切り取っていて、映像とテンポが
見事にマッチしている。
主人公は、つつましい生活だが過去の名声にすがることはなく、自暴自棄に
もならずに、淡々とアルバイトをして週末の試合を待つ。彼はプロレスが大好
きなのだ。
同業者のレスラーたちの、試合前後のやり取りのシーンも新鮮だ。プロレス
は「ショー」。いかに観客を沸かせるか、どういう技をかけてどう締めるか、
彼らは試合前に入念に検討し、試合後はお互いを称え合う。血と傷を見せてな
んぼ、こわもての巨漢揃いだが、ロッカーでの彼らは折り目正しくやさしい。
肉体を売りものにし、年齢に居場所を奪われるという点で、ストリッパーも
プロレスと似ている。事情があって、こちらも生活のために体を張るベテラン
の踊り子、キャシディもプロフェッショナルを感じさせる。
助演の女性2人が共にとても良い味を出している。客とプライベートで接し
ないのがストリッパーのルールだが、一線を越えずに親身になろうとするキャ
シディの姿が印象的だ。ステファニーの、突然現れた父親に対する複雑な気持
ちも、これまた痛く伝わる。マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェルウッド共
に好演だ。
しかし、この映画の圧巻は何といってもミッキー・ロークだろう。
売れっ子俳優から堕落の道を歩んできた彼にとって、本作のランディ役はうっ
てつけといえる。頑強だが、顔のしわとゆったりした動きが、まさに限界が近
い中年レスラーそのもので、これ以上ないハマリ役だ。スーパーの惣菜売り場
での顛末も、ある意味彼らしさが出ていて可笑しい。
そしてプロレスラー役には、実在の選手たちが大勢出演している。道理で動
きに違和感がないわけだ。劇中でかかる80年代ロックの各曲も、テイストに花
を添えている。
映像もテーマも、クリント・イーストウッド作品を彷彿させる。男の引き際
という点では、「グラン・トリノ」に通ずるものがあるし、女性ボクサーの結
末が題材だった「ミリオンダラー・ベイビー」のようでもある。しかし、本作
は生きがいを全うしている分、主人公のマインドが貫かれ、かなしくも明快な
男のドラマとして完結している。
「レスラー」公式サイト(予告編も観られます)
http://www.wrestler.jp/
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*ちょっと蛇足
当初製作側の意向は、ニコラス・ケイジの主演だったそうです。しかしアロ
ノフスキー監督が、どうしてもこの映画はミッキー・ロークで撮りたいと主張、
落ち目の問題児の起用に難色を示され、制作費と宣伝費を大幅にカットされて
まで”主演・ミッキー・ローク”にこだわったことが、見事に効を奏しました。
また主題歌を歌うブルース・スプリングスティーンは、ロークから手紙で楽
曲を依頼され、ローク復活のはなむけとばかりに、無償でオリジナル曲を書き
下ろしたとか。製作の舞台裏も男気あふれるエピソードに満ちています。
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*次号予告
次号新作レビューは、「ディア・ドクター」を取り上げる予定です。
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*映画以外のコト
仕事場の近くに「ほっともっと」が出来たので時々利用しています。カフェ
のような店内といい、上品で気の効いた盛り付けといい、ほか弁屋らしからぬ
洒落た雰囲気で味もなかなか。レモンとスパイスで食べる「から揚げ弁当」と、
新メニューの「天丼」がおすすめです。
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シネマトコラム
発行者 上間秀彦
連絡先 g-note.uema@nifty.com
『まぐまぐ』感想フォーム↓
http://form.mag2.com/trigawiowo
発行板
*『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
配信中止はこちら→ http://www.mag2.com/m/0000231303.html
*『めろんぱん』http://www.melonpan.net/index.html
配信中止はこちら→ http://www.melonpan.net/mag.php?010476
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