2009/10/19
シネマトコラム vol.106「私の中のあなた」レビュー
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ シネマトコラム vol.106 (2009.10.19) *新作レビュー「私の中のあなた」 *次号予告 *You Tube紹介 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ *新作レビュー 「私の中のあなた」ニック・カサヴェテス監督 (米) アビゲイル・ブレスリン、キャメロン・ディアス、ソフィア・ヴァジリーヴァ ほか出演 好作品が続く今月、これもまた秀作である。家族もの、難病ものは星の数ほど あるが、本作は設定が凝っていてオリジナリティーが高い。脚本がしっかりして いるため、安っぽいお涙頂戴ムービーとは違う、本格派の人間ドラマとして成立 している。ケイト役ソフィア・ヴァジリーヴァの人懐こい笑みが何ともせつなく、 泣ける。 敏腕で知られるロサンゼルスのキャンベル弁護士(アレック・ボルドウィン)の もとに11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)が訪れ、「両親を訴えたい」と言う。 面食らうキャンベルだが、アナの持参した資料を見て顔つきが変わる。アナは、 白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)のドナーとなるために、遺伝子操 作によって”創り出された”子供だったのだ。これまで何度も姉のために手術を 受け、組織や体液を抽出されてきたが、少し前に倒れ再入院したケイトは、腎機 能が悪化、腎臓を取られることを察知したアナが、ついに両親を相手取り、訴訟 を起こす行動に出たのだ。 「姉は大好きだが、私にも自分の体を守る権利がある」。 訴えに共感したキャンベルは、弁護を引き受ける。しかし米国の法律では、14歳 未満の子供の法的決定権は親にあるため難易度の高い仕事だった。 何が何でもケイトを生かしたい母サラ(キャメロン・デイアス)は、激怒し、法 廷で争うことに。元弁護士のサラは難病の子を持つ母親として、過剰なほど強硬 なため、夫のブライアン(ジェイソン・パトリック)や、自閉症気味の長男ジェ シー(エヴァン・エリンクソン)も引き気味である。ケイトの容態は悪化し、末期 であることを告げられた家族に緊張が走る。最終弁論でアナは、訴訟に隠された ある事実を口にする。果たして判決の行方は? そしてケイトと一家は? 何より設定が凝っている。人間ドラマの好きな人にはとてもそそられる深いテ ーマだ。姉妹はとても仲が良く、ケイトはアナの一番の理解者だ。しかし、訴訟 という手段で正否を問う11歳は、まさにアメリカ的だ。献身と権利は時に合致し ない。異論の余地のない状況下で、この命題を付きつけたところが凄い。 サラとて決して意固地な恐妻ではないのだが、2歳で血液の癌と診断されたケ イトを生かすことに全霊を注いできた彼女は、積極的治療しか考えられない。冷 静な消防士のブライアンはコトの全容がみえているが、一生懸命なサラに合わせ ている。出生の秘密を知っているアナは、母親の愛情が、お腹を傷めたケイトと、 そうではない自分とでは違うと感じている。やはり幼い頃の両親の無関心から、 自閉症気味になったジェシーも、難病の家族を前に何も言わない。 つまり一家は、憎みあっていないどころか、それぞれ思い通りにならない不満 を抱えつつ、助けあっている。それを可能にしているのは、ごたごたの中心にい るケイトの心根のやさしさに他ならない。ただの重病人ではなく、表情と態度に 人間性が滲み出ているところが秀逸である。 興味深い前半からどんな展開をするのか見ものだったが、後半は家族愛路線に シフトし、ストーリー的にも無難な着地をしている。凄惨ではなく、といって嘘 臭い奇跡でもなく、自然な収まり方である。たぶん誰が観てもそこそこ、なるほ どな、と思う収束の形ではないだろうか。満足度が高いのは、そういうことの表 れだと思う。また、シビアな移植の適合性の問題や、治療のオフレコ事項、重病 に直面した患者と家族の選択肢など、現実的な問題提起も盛り込まれている。 大衆娯楽映画としては良く出来ていて、邦画の「おくりびと」に通じる普遍性 がある。反面、作品性の追求は、序盤のみで薄くなってしまった。この設定、持 って行き方次第で斬新な衝撃作になったかもしれない。が、そんなちょっと残念 な部分をも帳消しにしているのが、やはりケイトなのだ。個人的には無難な感動 作にまとまったこのテの展開は、醒めてしまうことが多いのだが、あの表情の前 には、少々の難点は霞んでしまう。ただナレーションは、アビゲイル・ブレスリ ン一人だけにした方が良かったと思う。言葉そのものがとても印象的なだけに、 全員の語りはかえって散漫に感じた。 キャストでは、アビゲイル・ブレスリンも、キャメロン・ディアスもそこそこ 好演だが、存在感はソフィア・ヴァジリーヴァが断トツである。他に女性ならで はの丹念な検証をする、サルヴォ判事役ジョーン・キューザック、無表情だが暖 かい主治医チャンス医師役デビッド・ソーントン( =シンディ・ローパーの旦那) も、脇役としていい味を出している。主題歌をはじめ、音楽のセンスも大変良い。 最後に、この邦題は絶妙である。原題「My Sister’s Keeper」ともちょっと 異なり、しかし内容とテーマを的確に表している。久々に上手い邦題だ。そして 久々に、本当に泣ける映画でもある。 ↓「私の中のあなた」公式サイト(予告編が観られます) http://watashino.gaga.ne.jp/ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ *次号予告 次号新作レビューは、「沈まぬ太陽」を取り上げる予定です。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ *You Tube紹介 今回は、上記主題歌Vega 4の「Life Is Beautiful」を紹介します。日本人好み のメロディアスな曲で、音楽単体で聴いても、なかなか良い楽曲です。劇中のク リップと共に聴けるこちらを。↓ http://www.youtube.com/watch?v=dCt6e6f9SwQ&feature=related ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ シネマトコラム 発行者 上間秀彦 連絡先 g-note.uema@nifty.com 『まぐまぐ』感想フォーム↓ http://form.mag2.com/trigawiowo 発行板 *『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら→ http://www.mag2.com/m/0000231303.html *『めろんぱん』http://www.melonpan.net/index.html 配信中止はこちら→ http://www.melonpan.net/mag.php?010476 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


