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公開中の新作を中心にわかりやすく、かつ踏み込んだレビューとコラムをお送りします。どちらかというと娯楽性より作品性重視の視点です。バックナンバーもご覧いただき、よろしければぜひ。

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  • 最新号 2009/11/18
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2009/09/29

シネマトコラムvol.104「正義のゆくえ」レビュー

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シネマトコラム vol.104 (2009.9.29)

 *新作レビュー「正義のゆくえ  I.C.E特別捜査官」
 *次号予告
  *You Tube紹介 伊勢正三&スマップ「22才の別れ」
  
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*新作レビュー
「正義のゆくえ  I.C.E特別捜査官」ウェイン・クラマー監督 (米)
ハリソン・フォード、クリフ・カーティスほか出演

 外国人の不法就労と米国永住権を巡る出来事を描いたアメリカらしい映画で、
当事者とその家族の物語が上手く散りばめられ、テンポ良く引き締まったタッ
チと、群像劇でありながら非常にわかりやすい点が秀でている。大仰な邦題は
ダサいが、エッジの利いた脚本で大人向きのヒューマン作品だ。

 ロサンゼルスの移民監督局ICEのベテラン捜査官、マックス(ハリソン・フォ
ード)は、不法滞在で拘束された女性の頼みを聞き、女性の子供をメキシコの
実家まで送り届けるなど、不法滞在者にやさしすぎる、としばしば冷笑される
仕事ぶりだ。永住権獲得目前の中東系移民の同僚、ハミード(クリフ・カーテ
ィス)の妹が何者かに殺害され、ふとしたことからその事件に疑問を抱いたマ
ックスは独自の捜査を始める。
 クリーニング店を営む韓国人のチン一家も、念願のグリーンカードを手に入
れる権利を得るが、長男のヨン(ジャスティン・チョン)は、米国に馴染めず、
不良仲間とつきあっている。
 またアフリカ出身でミュージシャン志望のギャビン(ジム・スタージェス)は、
教徒でもないのに、ユダヤ学校に講師としてもぐり込み、宗教家としてグリー
ンカードの取得を狙っており、オーストラリア出身の恋人、クレア(アリス・イ
ヴ)は、ハリウッド女優を夢見て、これまた永住権を欲しがっている。
 ある日アクシデントから、クレアは、コール(レイ・リオッタ)というICEの
判定官と知り合う。彼は偽造申請を黙認する代わりに、体の付き合いを要求し、
密会を繰り返すようになる。一方、コールと折りの合わない妻デニス(アシュ
レイ・ジャッド)は、皮肉にも移民弁護を得意とする弁護士だ。
 そしてバングラデシュからの移民の娘、タズリマ(サマー・ビジル)は、学校
でイスラム寄りの発表をしたとしてFBIに身柄を拘束されてしまう。
 殺害されたハミールの妹ザーラ(メロディ・カザエ)は、奔放な性格のため優
秀な家系の中で浮いた存在であり、デニスは面会を担当している身寄りのない
ナイジェリア出身の女の子のことが心配でならない。
 と、これが本作の登場人物の概要である。
 前半はたくさん出てくるこれらの人物設定の提示が続き、頭の中忙しいが、
この前半の丁寧な提示のおかげで、後半起きる二つの事件と、群像劇の背景が
非常にわかりやすく、誰のパートでも難なく入り込むことが出来る。

 主たるテーマは、不法滞在、不法就労が日常化している米国の現状と、人道
的に理不尽な法律の規定、それによって引き裂かれたり、新たな悲劇に陥る当
事者たちの心理であろう。本作では、人々の願いの象徴として「グリーンカー
ド」が何度も出てくる。彼らはこの取得に、ひいてはアメリカ国民になること
に多大なエネルギーを注ぐ。判定のポイントは、突き詰めていうと、
”どれくらいアメリカに染まっているか”。
異国出身の不法滞在者は、発覚すると国外退去処分になるが、アメリカで生ま
れた彼らの子供は、住み続けることが出来る。広く門戸を開ける一方、厳しい
選択も突きつけるという、法律と人道的対処の矛盾が描かれているが、近年、
日本でも同じような事例が起きているので考えさせられる。そのために彼らが
相当、背伸びをしているということも……。

 映像、ストーリーとも良く出来ているが、やや処分を受ける当事者たちに寄
り過ぎている。どんなに理不尽でかわいそうでも、元をただすと彼らは入国と
就労の法を犯しているわけで、そのことも忘れてはならない。そこに至るまで
の当事者たちの軌跡と、彼らを雇う側の事情なども盛り込んで描いたら、より
深みのある映画になったと思う。
 ストーリーは、希望を手に入れる者、悲劇が待っている者、それぞれの結末
を描いてゆくが、ひねりが全部一定の法則で揃えられていて、このあたりの緻
密さが、同じ群像劇の秀作「クラッシュ」や「バベル」に及ばない。

 キャストでは、主演のハリソン・フォードより、ハミード役クリフ・カーテ
ィスの熱演が印象的。特にヨンと対峙する終盤のシーンでのセリフが響く。
タズリマ役の中東系ハーフ女優サマー・ビジルも、迫真の感情表現で、この2
人の素晴らしい演技は大きな見所である。

 硬派な社会派ドラマとして観るも良し、人間模様を観るも良し、いずれにせ
よ、これは大人向きの映画である。ちなみに原題は、「Crossig Over」。やは
り原題は実に的確でカッコイイ。

↓「正義のゆくえ  I.C.E特別捜査官」公式サイト(予告編も見られます)
http://www.seiginoyukue.jp/

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*次号予告
次号新作レビューは、「空気人形」を取り上げる予定です。

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*You Tube紹介 
今回は、スマップと伊勢正三のコラボレーションによる「22才の別れ」。云わ
ずと知れたフォークソングの名曲です。2006年スマップの番組「スマスマ」の
中での共演で、輪唱による歌も、その前のトークも良い感じです。
 そもそもこの曲は、素朴さが最大の特徴で、歌のうまくない人が素人っぽく
歌うのが案外合うのではないでしょうか。スマップが歌うこの曲は、まさに
それ。特に上手くはないものの味があります。
 さてこの5人の座り位置とパート分け、スマップのメンバーの相関関係が微
妙に投影されていると思いませんか?また、曲を作った伊勢正三は、この後、
喉を手術し、その結果残念なことにあの繊細な声は出せなくなってしまいまし
た。そんなわけで貴重な映像でもあります。たった3年前のものなのに。
http://www.youtube.com/watch?v=L__3cTv716Y&feature=related

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シネマトコラム

 発行者 上間秀彦
連絡先 g-note.uema@nifty.com
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*『めろんぱん』http://www.melonpan.net/index.html
配信中止はこちら→ http://www.melonpan.net/mag.php?010476  

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