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公開中の新作を中心にわかりやすく、かつ踏み込んだレビューとコラムをお送りします。どちらかというと娯楽性より作品性重視の視点です。バックナンバーもご覧いただき、よろしければぜひ。

  • 発行周期 月3~4回
  • 最新号 2009/11/18
  • 部数 560部
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2009/09/15

シネマトコラムvol.102「ノーボーイズ、ノークライ」レビュー

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シネマトコラム vol.102 (2009.9.15)

 *新作レビュー「ノーボーイズ、ノークライ」
 *次号予告
  *You Tube紹介 フラワーカンパニーズ「深夜高速」
  
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*新作レビュー
「ノーボーイズ、ノークライ」 キム・ヨンナム監督 (韓国、日本)
ハ・ジョンウ、妻夫木聡、チャ・スヨン、イ・デヨンほか出演

 ただ日韓の新進人気男優を共演させた、出来合いの友情物語と思ったら足元をす
くわれる。さすが渡辺あや脚本。社会の底辺を生きる若者の日常と、どうしようも
ない境遇に対するいらだち、その中での家族や意思や友情が、鮮烈さを持って表現
されており、地方都市(山口県が舞台)の光景と共に醸し出す独特の「たまらなさ」
加減に、けっこう引き込まれる。

 行き当たりばったりのお気楽なヤンキー青年ヒョング(ハ・ジョンウ)は、時々
小型ボートで日本に密航し、日本でヤクザを束ねるボギョンおじさん(イ・デヨン)
に、コピー商品と大好物のキムチを届ける闇の仕事を請け負っている。
 日本側で受け取りの手引きをするのは、シビアな家庭環境を持つトオル(妻夫木
聡)。やがてヒョングは、キムチと共に麻薬を運ばされていたことを知る。そして
次に与えられた仕事は、なんと誘拐され昏睡状態の女を船で日本に運ぶこと。
 さすがにおじけづくヒョングだが、命令には逆らえず遂行する。”荷物”の女は
大手生保会社重役の娘チス(チャ・スヨン)で、父親の横領疑惑にからんでボギョン
らが誘拐したことがわかる。それぞれに事情を抱え、金と家族のために行動を迫ら
れる3人に奇妙な連帯感が生まれ、ヒョングとトオルは金のために、チスは肉親の
安全のために、行方不明のチスの父親を捜す。しかし、それはボギョンを敵に回す
危険な賭けだった……。

 港のボートで叩き起こされるヒョング、暗闇の中の上陸…ものの5分で、これは
やわな映画ではないとわかる。切迫した緊張感に包まれた独特のテイストはさすが
韓国の監督作品だ。裏家業の下っ端でもがく2人は、境遇は違えど”生きる”こと
に対する本能がほとばしっていて、共にその背景に家族の存在が強く影響している。
トオルの家には、売春で生計を立てるあばずれの妹、奈美(徳永えり)と難病の乳飲
み子を含む3人の子供達、そしてボケた祖母が暮らし、生活は困窮を極めている。
しかも妹の旦那はなんとボギョンの息子、隆司(柄本祐)だ。
「時々思うんだよ、みんな死んでいなくならないかなって」破滅すれすれの家庭の
中にいるトオルの言葉には、この境遇の者にしか吐けない凄みがある。
 気が強いメタル系で令嬢らしからぬチスと、極端にやさしく甘ったるいトオルの
元恋人(貫地谷しほり)も画面に良いスパイスを与えている。
 
 後半、2人は激しく対立する。ボギョンを信じようとするヒョングと、恐ろしい
ボギョンをも利用してしまおうとするトオル。ようやく通じあえたかにみえた時、
皮肉にも彼らは重大な決断を迫られる。そこから先はまさに韓国テイスト。絵に描
いたようなハッピーエンドでないことだけは明かしておこう。

 渡辺あやの脚本が注目を浴びた「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」
は韓国でも大ヒットし、本作では韓国サイドの強い希望で抜擢されたそうだ。
大筋はキム監督が決めているのだろうが、ちょっとした設定にも隠し味を含ませ、
丁寧に観客の興味をつないでゆく手法は今回も健在で、意外に先が読めない工夫と
ともに良く出来た脚本に仕上がっている。決して甘ったるくなく、ドライで鮮明な
リアリティーの中に、ふっとエンターテイメントを挟んで笑わせるバランス感覚が
絶妙である。
 今回も「メゾン~」同様、カラオケが良いアクセントになっていて、ハと妻夫木
がデュエットする「アジアの純真」は、見所の一つだし、”人魚”も、あり得ない
のに違和感がない。

 さてキャスト。ハ・ジョンウは確かに役者としての「味」を持っている。垢抜け
ない純朴なヤンキーの若造ヒョングをとても上手に演じていて、「チェイサー」の
殺人鬼役より本作の方が等身大の資質を感じた。妻夫木クンも、今回は頑張った方
だろう。だがセリフは学芸会的、1シーンにつき一つの表情しか作れず演技力はま
だまだ。寡黙に登場する冒頭の雰囲気は良かったので、人気があるうちにしっかり
力量を付けてほしいところだ。
 脇役では、無表情さが不気味な隆司役の柄本祐(柄本明の息子)と、のそっとした
中国茶店主役のあがた森男が印象に残った。
 
 監督は韓国、撮影地と製作陣は日本、キャストは半々、と両国がうまく作用し、
合作が成功した例といえるだろう。終わり方は日本では受け入れられないパターン
かもしれないが、個人的には媚びない作品性を感じる。タイトルも韓国版の原題、
「The Boat」の方がはまるように思う。

*↓「ノーボーイズ、ノークライ」公式サイト(予告編も見られます)
http://www.noboysnocry.com/index.html

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*次号予告
次号新作レビューは、「キラー・ヴァージンロード」を取り上げる予定です。

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*You Tube紹介 フラワーカンパニーズ「深夜高速」
 今回のおすすめYou Tubeは、それほど有名ではないものの、地道な活動が定評あ
るフラワーカンパニーズのライブ映像です。2004年川崎クラブチッタでのステージ
で、ボーカルの鈴木圭介が演奏中に転倒し顔面を切りながらも何事もなかったよう
に歌いきります。激しい歌と切ないギターが印象的なロックナンバーで、全部日本
語なのもポイント。なかなか名曲なので、ぜひこちらでご視聴下さい。↓
http://www.youtube.com/watch?v=lmqdtXNDBxs&NR=1&feature=fvwp

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シネマトコラム

 発行者 上間秀彦
連絡先 g-note.uema@nifty.com
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