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2009/07/31

シネマトコラムvol.98 「アマルフィ 女神の報酬」レビュー

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シネマトコラム vol.98 (2009.7.31)

 *新作レビュー「アマルフィ 女神の報酬」
 *ちょっと蛇足
 *次号予告
 
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*新作レビュー
「アマルフィ 女神の報酬」 西谷弘監督 (日本)
織田裕二、天海祐希、佐藤浩市、戸田恵理香ほか出演

 スケールの大きなサスペンスを意識して作られた、フジテレビ開局50周年記
念作品。結局はいかにもテレビ的な作風の域にとどまっているが、主演の織田
裕二は全編を硬派に演じきり新境地をみせている。

 ローマで開かれるG8世界外相会議の準備で慌しい日本大使館に、テロ対策警
備要員として黒田書記官(織田裕二)が派遣される。川越外務大臣(平田満)の到
着が迫る中、美術館で邦人旅行者、矢上紗江子(天海祐希)の娘が誘拐される。
対処に当たった黒田が犯人からの電話に出たことから、彼は父親になりすまし、
事件に関わることに。イタリア警察と黒田が奮闘するが、犯人達は不可解な動
きをみせ事態は進展しない。監視カメラの映像を分析した黒田は奇妙な符合を
発見し、次第に犯人に迫ってゆく。そして単なる営利誘拐の先に、大きな標的
を狙ったテロ計画が浮かび上がる。街中の制御システムとセキュリティを遮断
した犯人グループの背景には、政治に関係した過去のある事実があった……。

 読めない犯人の意図、防犯カメラのトリック等、中盤まではけっこう緻密な
作りで引き込まれる。アマルフィほか観光地の光景や蜂のGPS発信機などの小
物も巧みに織り混ぜ、映像のキレも良い。
が、後半、あるシーンを境に本格派のテイストはガラガラと崩壊し、意外性狙
いの不自然な仕掛けと、無難にウケそうな優等生ドラマの組み合わせになり、
なんとも陳腐な結末に収束してしまう。製作の意向次第では秀作になったかも
しれないのに残念。テレビならこれで良いが、映画はこれではダメ。これなら
何も映画でなく、テレビのスペシャル枠で充分だったようにも思う。

 紗江子はシングルマザーの看護士にはみえず、セレブな奥様という感じで、
天海祐希のこの役は実感に欠ける。子供を誘拐された母親という役どころより
ファッション性が勝ってしまっているのだ。また犯人グループを早い段階から
登場させ、サスペンスの要所要所も実にご丁寧に見せてくれてわかりやすい半
面、後半の謎解きの妙は薄い。最後の犯人たちの事情に社会性も込めたのだろ
うが、海外である必然性はなく、そもそもこの目的のためにこんな大がかりな
計画を立てるだろうか、という気も。

 キャストも、佐藤浩市以外はテレビ系の俳優がずらり。テレビは何かをやり
ながら観られることも多く、視聴者を引き付けておかないとチャンネルを変え
られてしまう。従ってとにかくわかりやすい演技が求められる。そういうこと
もあってテレビで活躍する俳優さんは、どうしてもテレビ的な動きと台詞回し
になっていて、映画館のスクリーンで見ると演技の幅がもの足りなく感じる。
 織田裕二の動きと口調がクールで鋭いのが唯一の救いだ。彼もいい歳。役者
としてのキャリアもあり、今回のようにお茶らけに頼らない真っ向勝負も出来
ることがわかったことは邦画界にとっても収穫だったかもしれない。黒田の行
動は外交官というよりは、どうみても敏腕刑事の動きだが…。逆に女好きのフ
リーライターとして登場する福山雅治は、ゆるく味を出していて対比が良い。

 テーマ曲に加え、自らも出演している歌手のサラ・ブライトマンの音楽は、
狙い通りスケール感を盛り上げている。しかし、いかんせんクリスマス前後の
設定でみんな冬の装いというのが、この真夏の上映時期にはピンとこない。

 ま、でも前半はかなり出来も良く、少なくとも観る価値は充分ある。個人的
には前半80点、後半50点という感じだったが、さて皆さんの目にはいかに?

「アマルフィ 女神の報酬」公式サイト(予告編も観られます)
 http://www.amalfi50.jp/index.html

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*ちょっと蛇足
イタリアでは、誘拐事件の犯人と直接取引きすることが法律で禁じられている
こと、大使館は治外法権により、重大事件といえども当該国政府の許可が出る
まで警察の部隊が突入できないこと、”無駄遣いは外交官の特権であること”
等けっこう参考になりました。
 アマルフィはイタリア南部の海沿いにあり、切り立った岩山の崖を覆うよう
に家や店が密集し、独特の景観をみせる観光地です。ただここがメインのロケ
地というわけではなく、ほんの少し滞在するだけで、撮影の大半はローマです。

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*次号予告
次号新作レビューは未定です。なるべく新しいものの中から何か選びます。

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シネマトコラム

 発行者 上間秀彦
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