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2009/06/13

シネマトコラムvol.94「ハゲタカ」レビュー

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シネマトコラム vol.94 (2009.6.13)

 *新作レビュー「ハゲタカ」
 *次号予告

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*新作レビュー
「ハゲタカ」 大森啓史監督 (日本)
大森南朋、玉山鉄二、柴田恭平、遠藤憲一ほか出演

 4年前のヒットドラマの映画化作品。さほど期待してはいなかったのだが、
予想以上の出来映えだ。メリハリの効いた小気味良いテンポと緊張感で、最後
までスクリーンに釘付けだった。企業買収という難解そうな題材を、わかりや
すくみせていることと、人間模様がきちんと描かれていることがポイントで、
脚本のキレと映像の完成度は、大人の鑑賞に堪えうる高水準のクオリティーに
仕上がっている。

 マーケットと距離をおき、異国の地でくつろいでいた敏腕ファンドマネージ
ャー、鷲津(大森南朋)は、訪ねてきた銀行時代の先輩、芝野(柴田恭平)から、
芝野が役員を務める日本を代表する大企業「アカマ自動車」が、中国の新興マ
ネーファンドに買収を仕掛けられていることを聞かされる。アカマの社長、古
谷(遠藤憲一)と、MSG銀行頭取(中尾琳)からホワイトナイトを頼まれた鷲津は、
すぐに臨戦態勢に。しかし「ブルーウォールパートナーズ」という聞いたこと
もない相手は、あり得ない額をいとも簡単に提示し歯が立たない。
 窮地に追い込まれた鷲津は、秘策を練る一方、相手の身元調査を進める。そ
の結果ブルーウォール社が事実上、中国政府が糸を引く企業で、代表の劉一華
(リュウ・イーファ = 玉山鉄二)という日系残留孤児の男は、鷲津のアメリカ
時代の後輩であることがわかり、さらに驚くべき事実が判明する。
 劉は友好的買収を強調し、メディアも巧みに利用して経営陣を揺さぶり、社
長はついに鷲津を切って劉との提携を発表する。しかし、鷲津の作戦が思わぬ
激変をもたらし、完敗にみえた勝負は再び再燃する。鷲津の打った手とは?
そして攻防の行方はいかに……。
 
 ストーリーもおもしろいが、人間が実によく描かれている。特に謎めいたク
ールなイケメン、劉のエピソードは興味深い。後半、一転して本性をみせるシ
ーンがあるが、背負ってきた境遇と、それゆえの行動心理が非常に印象に残る。
大仰でゆとりがなく場当たり的な古谷と、企業の初心と理念を静かに説く芝
野の対比、そして金の亡者でありながら、良心もなくもない鷲津。要所でそれ
ぞれの個性がくっきり投影されている。

 また本作は、現実のあれこれが劇中にうまく取り込まれている。解雇―再雇
用のからくりなど労働者と雇用の問題や、リーマンショックなど、現実の出来
事が脚本に反映されているためリアリティーがあり、ニュースで聞いた事柄が、
ああ、こういうことなのか、と再認識できる。栗山千明演じるニュースキャス
ターが、スポンサーに不利益な取材はやめろ、と上司に止められるシーンがあ
るが、報道も背後関係に左右される現実も浮き彫りにしている。

 中国政府が日本企業を買収する、という大胆な設定も意味深だ。国名は実名。
中国政府から抗議が来そうな設定には、少々警告的な意味合いも感じとれる。
 「日本は生ぬるい地獄だよ」
という劉の言葉を始め、本質をついた鋭いセリフが多く散りばめられているの
も見所の一つだ。
 
 このドラマの顔はやはり大森南朋。表だか裏だかわからない無表情さが、鷲
津像とよくマッチしている。今回の物語の主役、玉山鉄二も熱演で、後半に行
くにつれ凄みを増していく。またアカマの工場で働く契約社員の若者役の高良
健吾が、これまた熱演で新鮮な魅力を感じた。(「ひゃくはち」に出ていた、
ダルビッシュ似の長身の若手男優) 鷲津ファンド社員役の嶋田久作と志賀廣
太郎の2人も、イイ味を醸し出している。

 鷲津が、中国の山村を訪ねる最後の一幕が秀逸で深い。
劉の純粋な憧れの痕跡、そしてふと目にしたある光景……それは鷲津だけでな
く、私たちに何かを問いかけているようでもある。


「ハゲタカ」公式サイト(予告編も観られます)
http://www.hagetaka-movie.jp/index.html

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*次号予告
次号新作レビューは未定です。

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シネマトコラム

 発行者 上間秀彦
  連絡先 g-note.uema@nifty.com
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