2009/06/08
シネマトコラムvol.93 コラム「伏せられる発生源」
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ シネマトコラム vol.93 (2009.6.8) *コラム「伏せられる発生源」 *次号予告 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ *コラム 「伏せられる発生源」 メキシコを舞台にした昨年の映画「ボーダータウン/報道されない殺人者」は、 当局がひた隠す被害者5.000人にも上るといわれている連続殺人事件を、記者 たちが危険にさらされながら暴いていくという内容で、サスペンスもさること ながら、メキシコの現状を鋭く描いていた。(レビューはこちら↓) http://archive.mag2.com/0000231303/20081023210000000.html?start=20 この映画を観ていたから、今回のインフルエンザ騒動の発端にもピンとくるも のがあった。ああ、メキシコかあ……、と。 ここはある意味、合法的搾取の場となっている。 政府が欧米や日本など先進国の企業に国土をどんどん利用させ、利益を稼がせ ており、高額の税金によって国民の土地を収用し、海外資本のための広大な事 業地と安い労働力が大量に確保される。国民の多くは貧困に苦しんでいるが、 当局が情報を監視、コントロールしている。 今度のインフルエンザの件でも、現地の報告者の実名のないものが多いのはそ のためであろう。WHOとて政治の中に組み込まれているから、現地の詳しい調 査も進まない。好き放題稼がせる代わりに、内政に口出しせず、見て見ぬふり をするというのが、どうやら先進国とメキシコ政府の暗黙の協定らしい。だか ら、発生源である現地に調査団や援助を送る動きは少なく、逆にメキシコの姿 勢を非難する声もごくわずかだ。 敵対する国には目を光らせるが、”同盟国”の悪政には関与しないで来たこと が、今回の感染拡大を大きくさせてしまった、そんな構図が見てとれる。 先進国が人件費を絞りつくした結果、品物や食品の偽装を招いたのが中国だが、 メキシコの場合は、「病気」という脅威だったわけで、限度を超えた搾取は必 ずしっぺ返しを食らう。異常な環境下でウイルスが変異を起こして増殖するの は、人間の行き過ぎた経済行為への警告と取れはしないだろうか。 インフルエンザをきっかけに、ぜひメキシコの現状改善にも着手すべきだと思 うのだが、その機運もないままに「発生源」の実状は、結局ほとんど伝えられ ずに忘れ去られようとしている。発端がどういうことだったのか、を知ること は、これからまた同様の脅威が発生した時のヒントになるはずだが、それさえ 伏せられてしまう現状は、あまりにも理不尽だ。といって出来ることは何もな い。せめて、少ない情報をかき集めて得た「発生源」の経過を以下に記してお こう。 発生源はメキシコ東南部ベラクルス州ラグノリア村にあるアメリカ、メキシコ 合弁の大規模養豚場といわれている。糞尿や死体の管理がずさんで周囲の水の 汚染や虫の大発生など、以前から住民とトラブルが絶えなかった施設で、親会 社の米大手食品会社は、本国でも環境汚染の常連でたびたび訴訟を起こされて きた企業だ。そういう体質の会社だから何をしてもおとがめなしのメキシコで は、さらにひどい状況だったようで、人口3.000人の村民の6割に何らかの疾患 があるという。 昨年12月に発生源とされる村ですでに感染爆発が起こり、交通を遮断して隔離 治療が行なわれた。その際、当局が力を入れたのは村中を飛び交うおびただし い数のハエの駆除だったといわれている。例によってそれらの事実は、当初は 伏せられ、騒がれだした今年4月になってようやく伝えられた。 もちろん当の会社側は因果関係はないと反発、メキシコ政府も養豚場は関係な しと擁護しており、騒ぎになってからこの会社のCEOが会見で「豚インフルエ ンザという言葉はけしからん」と抗議し、いつのまにか呼び名まで「新型イン フルエンザ」という呼称に置き変えられた……というのが現地の概要らしい。 情報の少ない国を舞台にした映画は、恰好のプチ紀行である。文化や習慣はも ちろん、表面的にはタブーとされていることや、裏話的実態を提示してくれる ということも大きな魅力で、それはしばしば映画の意義にもなる。 インフルエンザ発生以降、”報道されない”発生地の不可解さを感じるにつけ、 「ボーダータウン」の作中のあれこれが、リアリティーを持って脳裏によみが える今日この頃である。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ *次号予告 次号新作レビューは、「ハゲタカ」を取り上げる予定です。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ シネマトコラム 発行者 上間秀彦 連絡先 g-note.uema@nifty.com 『まぐまぐ』感想フォーム↓ http://form.mag2.com/trigawiowo 発行板 *『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら→ http://www.mag2.com/m/0000231303.html *『めろんぱん』http://www.melonpan.net/index.html 配信中止はこちら→ http://www.melonpan.net/mag.php?010476 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


