2009/05/30
シネマトコラムvol.92「消されたヘッドライン」レビュー
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ シネマトコラム vol.92 (2009.5.30) *新作レビュー「消されたヘッドライン」 *ちょっと蛇足 *次号予告 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ *新作レビュー 「消されたヘッドライン」 ケヴィン・マクドナルド監督 (米) ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、レイチェル・マクアダムスほか出演 殺人事件の背後にある、政治家と大企業の関係を追求する豪腕新聞記者が、自ら も危険にさらされながらも真相に迫る活躍を描く犯罪サスペンス。いかついクセ 者記者を演じるラッセル・クロウの濃い演技と、周囲の人間たちとのからみが効 いていてスリルもドラマ性も充分。ただし変化球のラストは微妙だ。 ひったくり犯の男が殺され、次いで国会議員側近の女性スタッフが謎の自殺を図 る。ワシントン・グローブ紙のベテラン記者カル(ラッセル・クロウ)は、豊富な 人脈を駆使して真相を追う。自殺したとされる女性は、カルの友人コリンズ議員 (ベン・アフレック)と愛人関係にあり、一方コリンズは大手軍事企業の利権を 糾弾していた。警察より先にスクープが欲しいカルは、WEB紙担当の若い勝気な 女性記者デラ(レイチェル・マクアダムス)とともに、刑事顔負けの独自捜査で 真実に向って突き進む。しかし、新聞社の事情もからんで記事にするためのハー ドルは高く、イチかバチかの賭けに出た彼らに危険が迫る……。 カット割り、効果音等演出が優れていて、後半まで息を呑んでスクリーンをみつ める展開だ。きなくさい策略に巻き込まれた生真面目なコリンズ議員、彼が疎ま しい軍事企業、陰で動く大物政治家……観ている誰もが社会性の強い壮絶な結末 を想像するだろう。しかし本作は最後にどんでん返しが待っていて、大方の予想 と期待からするりと身をかわす。小さなことから大きな事件へと発展していくの が映画の常道だが、これは珍しく逆のパターンなのだ。拍子抜けの真実でも真実 は真実、そこで、本作が事件を暴く刑事モノではなく、真実を求める新聞記者の 話なのだ、ということを再認識させられる。 登場人物の相関関係は、ストーリーとマッチしていて絡ませ方も上手い。旧友の カルとコリンズだが、一方はマスコミに追われる国会議員、一方はネタを追うブ ン屋、この設定がまず鮮やかだ。うまくいっていないコリンズと妻のアン(ロビ ン・ライト・ペン)、そのアンとカルがかつて恋人同士だったという過去、そし てコンピューターを使って手早く仕事をし、営業成績も良いデラと、対照的に足 で確かめ時間をかけて記事を仕上げる昔ながらのスタイルのカルの対比、どれも 魅せるものがある。 また冒頭から登場させた殺し屋の存在が、観る側にある固定観念を植え付け、意 外なラストへの仕掛けとして効果的に作用している。 ラッセル・クロウは、ヒッピー風のいでたちと太った体型が強調され、むさいこ と極まりない。しかしこのむさい風貌こそが、今回の役づくりに大きく貢献して いる。徹底的にネタに食らいつく名物記者がスマートなイケメンだったら、あま りサマにならないだろう。ベン・アフレックは可もなく不可もない普通の出来、 ショーン・ペンの奥さん、ロビン・ライト・ペンも同様だ。編集長役でヘレン・ ミレンも出ているが、今回はやや空回り気味。そんな中、デラ役の若手女優、レ イチェル・マクアダムスの存在が際立っていた。彼女をみるのは初めてだったが、 目に力がありキレのある演技で、確かな素質を感じた。 結末の内容はともかく、終盤まで絶妙のテンポで来ていたのが、最後の種明かし を短時間に詰め込み過ぎていて、これが真相の微妙さと相まって後味の印象を悪 くしてしまった。最後までテンポを乱さず着地させるのは、やはり難しいことな のだろう。 「消されたヘッドライン」公式サイト(予告編も観れます) http://www.kesareta.jp/ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ *ちょっと蛇足 またしても、邦題がいただけません。 このタイトルから、スクープを掴んだ記者が記事にしようとするが圧力がかかり、 主人公が葛藤と闘う、というようなテーマを想像したのですが、内容のポイント はそこではなく、しかも、別にヘッドラインは”消されて”はいないのです。 映画の事実と異なる印象を持たせるようなタイトルの付け方は憤りを感じます。 これまでも再三指摘していますが、邦題の付け方、もうちょっと何とかなりませ んかねえ。 ちなみに本作の原題は「STATE OF PLAY」。”ありのまま”とか”現状”という 意味だそうです。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ *次号予告 次号は、新作レビューはお休みし、コラムをお送りします。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ シネマトコラム 発行者 上間秀彦 連絡先 g-note.uema@nifty.com 『まぐまぐ』感想フォーム↓ http://form.mag2.com/trigawiowo 発行板 *『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら→ http://www.mag2.com/m/0000231303.html *『めろんぱん』http://www.melonpan.net/index.html 配信中止はこちら→ http://www.melonpan.net/mag.php?010476 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



