2009/01/24
シネマトコラムvol.81「きつねと私の12ヶ月」レビュー
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ シネマトコラム vol.81 (2009.1.24) *新作レビュー「きつねと私の12ヶ月」 *ちょっと蛇足 *次号予告 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 新作レビュー 「きつねと私の12ヶ月」 リュック・ジャケ監督・仏 ベルティーユ・ノエル−ブリュノーほか出演 予告編にひかれて観に行った。「皇帝ペンギン」のリュック・ジャケ監督に よる、野生のきつねと少女の触れ合いをドキュメンタリーのような実写でま とめ、フランスで大ヒットとなった映画。内容は甘いが映像は美しい。 フランスの山岳地帯に住む動物好きの少女リラ(ベルティーユ・ノエル−ブ リュノー)は、ある日学校の帰りに間近できつねを見てとりこになる。来る 日も来る日もきつねを待ち、あれこれ手を尽くしてついに一匹のきつね「テ ィトゥー」をなつかせる。次第にペットのような錯覚に陥りどんどん距離を 縮めてゆくリラだったがハプニングが起き……。 野生のきつねをこれだけ”自然な演技”にみせるカメラワークがすごい。き わめてリアルに映像を繋いで編集した技量に感服する。そしてフランスのア ルプス地帯の映像の美しさ。これは掛け値なしに素晴らしい。 きつね以外にも、穴熊、狼、大山猫、ハリネズミなど、たくさんの動物のオ ンパレードで動物好きには楽しいはず。しかしあまりにも人間と彼らとの距 離が近すぎ、動物をよく知っている人は矛盾も感じるかもしれない。 リラとティトゥー(宣伝物ではテトゥーと表記されているが、本編の発音は ティトゥー)は、ティトゥーの出産直後に仲良くなる設定だが、出産後は最 も神経質になり人間に接近したりしないはずである。また子供たちを長時間 放ったらかしてリラと遊んだり、居眠りしたりというのも不自然。犬がいる リラの家に野生のきつねが近づくだろうか、という疑問も沸く。 そしてリラと過ごしている間、ティトゥーは一度も狩りをせず、子供たちの 餌探しをしていない。子供を抱える母ぎつねが人間との時間を優先すること はないのではないだろうか……。 等々、生態的にはだいぶ矛盾があり、映像そのものが自然に撮られているだ けに錯覚してしまいそうになる。個人的には、忠実に自然を映した映画は、 単に動物を見て癒されたい人向きに編集するのではなく、実際に則した内容 で通して欲しい気がする。 「事件」後のリラとティトゥーの関係も曖昧すぎる。むしろこれを機にティ トゥーが完全に離れ、それによりリラが自分の勘違いと野生動物とのボーダ ーラインを知る、という流れの方がメリハリがついたのではないだろうか。 リラの人間としての成長の表現も、今イチもの足りない。 しかし、そばかすがかわいい少女リラを演じるベルティーユ・ノエル−ブリ ュノーは好演で、いかにも自然の中で生きる天真爛漫な少女のイメージを見 事に体現していた。 展開はテンポよく作られているが、この映画に関しては自然美をもう少し長 く見ていたい気がした。結局のところ、人間が人間のために手を尽くした映 像は、大自然をただ映しただけのそれにかなわないのかもしれない。 ↓「きつねと私の12ヶ月」公式ホームページ http://kitsune12.jp/index.html ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ *ちょっと蛇足 リラと触れ合うシーンは、人に馴れたきつねを使って撮影したそうです。 そうでしょう、いくら何でも丸っきり野性のきつねにあれだけの”演技力” はないはず。それを知っていろいろな意味で安心しました。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ *次号予告 次号新作レビューは、「誰も守ってくれない」を取り上げる予定です。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ シネマトコラム 発行者 上間秀彦 連絡先 g-note.uema@nifty.com 『まぐまぐ』感想フォーム↓ http://form.mag2.com/trigawiowo 発行板 *『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら→ http://www.mag2.com/m/0000231303.html *『めろんぱん』http://www.melonpan.net/index.html 配信中止はこちら→ http://www.melonpan.net/mag.php?010476 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


