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公開中の新作を中心にわかりやすく、かつ踏み込んだレビューとコラムをお送りします。どちらかというと娯楽性より作品性重視の視点です。バックナンバーもご覧いただき、よろしければぜひ。

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2009/01/14

シネマトコラムvol.80「ワールド・オブ・ライズ」レビュー

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シネマトコラム vol.80 (2009.1.14)

 *新作レビュー「ワールド・オブ・ライズ」
 *ちょっと蛇足
 *次号予告
 *お知らせ

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新作レビュー
「ワールド・オブ・ライズ」 リドリー・スコット監督・米
レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロングほか出演

非常にテンポ良くスリリングな展開のアクション・サスペンスだ。テロ実行犯
グループとの諜報戦を繰り広げるCIA工作員の心の葛藤と、ハイテクを駆使し
た情報戦など、現在の中東情勢がわかりやすく描かれている。判断とその結果
がもたらす成り行きの妙も見どころ。
精悍な汚れ役ディカプリオと、太っちょ上司役のクロウの対比も良いが、最も
印象に残るのは、マーク・ストロング演じるハニ氏の言葉と態度である。

イラク。テロ首謀者を追うCIA特殊工作員のフェリス(レオナルド・ディカプリ
オ)。証言をした関係者の男の扱いを巡ってボスのホフマン(ラッセル・クロウ
)と意見が合わず、結局情報も男も失う。そしてまた爆弾テロが起きる。
同盟国ヨルダンの機密諜報部隊を指揮するハニ氏(マーク・ストロング)は、協
力を約束するものの、身勝手で偽りの多いアメリカのやり方に釘を刺す。しか
しCIAはフェリスさえ騙す露骨な手法でハニ氏の怒りを買い、事態は悪化する
ばかり。窮地に追い込まれたCIAは禁じ手のおびき出し作戦を決行する。そし
てついに見えなかった敵が姿を現すのだが、またしても指令部のミスによりフ
ェリスは捕まってしまう。絶体絶命の彼の運命は……。

このテの作品は近年けっこう多いが、本作はテンポがスピーディーで映像に隙
がない。政情と現場の関連性や登場人物の相関関係がわかりやすいのもいい。
そして要所要所で各々が口にする”信用”。これが展開を左右していく。
ハニ氏がフェリスに一つだけ要求したことは「私に嘘だけはつかないでくれ」。
それが一番重要であり、それが一番危ういことを知将は見抜いていたのだ。

高解像度の衛星画像、無人探査機、盗聴器、豊富なハイテク機材は、携帯もメ
ールも使わず監視されることを前提にした作戦で動く敵の前にあっては全く対
応できない。逆にハニ氏の作戦は現地人の人間性を考慮し、決して焦らず最終
的にテロリストを捕えることに照準を絞ったやり方。「うさぎとかめ」は現代
もまだあちこちに存在しているのかもしれない。

ディカプリオは「ブラッド・ダイヤモンド」以降すっかり汚れ役が板につき、
今回は風格さえ感じさせる堂々とした演技ぶりだ。現地の人たちへの気持ちや
理不尽なことに対する怒りなど、非情な仕事ながら生身の人間らしい部分を残
しているキャラ付けが効いている。
ラッセル・クロウは太り具合がいかにも安全な場所にいて、強気な指令を気楽
に出す上司役の風貌にぴったりである。
またフェリスと恋におちる現地の看護婦アイシャ役ゴルシフテ・ファラハニは
イランを代表する女優で本作が米国初出演らしいが、独特の味のある演技をみ
せている。ほかにCIAのおとり作戦にハメられるドバイの建設会社社長サディ
キ氏役のアリ・スリマンも好演。ともかくキャストは皆申し分ない。

娯楽要素として入れた後半の現地女性とのロマンスを、最後までかけ引き材料
にするあたり、CIA工作員としてはだいぶ行動が甘くなるが、彼女と彼女の姉
の家で食事をするシーンは印象的だった。

一つ嘘をつくと、それを通すためまた嘘を重ねなくてはいけなくなる。
そして裏の裏は最悪の表だったりする。
近年アメリカが中東で行なってきた軍事作戦は果たしてどれだけ必要性があり、
最新鋭の機器で何を見ていたのだろう?
なぜ確認したはずの破壊兵器は見当たらず、圧倒的な軍事力を駆使しても首謀
者をいまだに捕えられないのか、本作を観るとなんとなくその背景もみえるよ
うな……。
世界を動かそうとしている一部の人間たちのことを知るうえで、大変興味深く
タイムリーな作品である。

↓「ワールド・オブ・ライズ」公式ホームページ
http://wwws.warnerbros.co.jp/bodyoflies/

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*ちょっと蛇足
これも実は原題と違うタイトルです。原題は「Body of Lies」。内容としては
「World of Lies」の方がイメージは近いですが、原題の”嘘の本体”の方が
作品の真のテーマを表現しているように思います。基本的に英題をまた英題に
替えたものを邦題にするというのはどんなもんでしょう?それこそ嘘っぽくな
ってしまう気がするのですが……。

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*次号予告
次号新作レビューは、「きつねと私の12ヶ月」を取り上げる予定です。

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*お知らせ
『まぐまぐ』での登録読者数が500人を超えました。ありがとうございます。
新しい読者の皆様にも興味を持って読んでいただけるよう、これからもしっか
り観てしっかり書いていこうと思います。

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シネマトコラム

 発行者 上間秀彦
  連絡先 g-note.uema@nifty.com
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 発行板
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