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みるみる「冠詞力」をつけるマガジンです。講師歴20年の「講師K」による「ネイティブ・スピーカーも知らない」体験的冠詞学習法をお見せします。

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2007/12/01

~わが冠詞洞察の日々~

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発信日:11月30日     
マガジン:第29号
          
          
       
          私はこうして『冠詞力』をつけた!
         
             〜わが冠詞洞察の日々〜

                 アップ(13)
              
 
                -------------------             
               冠詞と関係詞節(1)
                         -------------------
                         
              
          
    --------
0■はじめに■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■UP■13
  --------   
  
   形容詞節(名詞のあとに関係代名詞を使った節)で問題になるのは、先行
   
 詞が「人」だったら "who" "whose" "whom" のいずれかを置き、「物」だった
 
 ら "which" "that" のどちらかを置き、先行詞が最上級や強調の形容をうけた
 
 り、すると、人や物にかかわらず "that" を置く、と学校で教えられた記憶を
 
 お持ちの方々は多いと思います。そして関係代名詞の練習問題とくれば、決ま
 
 って文中に空欄があり、そこにしかるべき関係代名詞を入れる、という問題で
 
 頭を悩ませた方々も多かったのではないかと想像します。
 
 
   そして仮に「正解」を空欄に入れても、どこか物足りなさを感じたことは
   
 なかったでしょうか?筆者の経験では、それは関係代名詞のあとに、求められ
 
 る選択肢が二つあり、そのいずれを「瞬時」に選べばいいのか、迷うからでは
 
 ないかと考えています。たとえば、
 
 
   That was the best movie that....
   
   
 とまで英文が語られたとき、話者がそこで口をつぐんで考えたとします。さて
 
 このあとにどのような英文が接続されるのか、迷うのです。もしこの英文が、
 
  
   I have a good friend whom...
   
   
 とくれば、そのあとにくる英文は「主語+動詞」になるのが "whom" という目
 
 的格の関係代名詞を目印に瞬時に理解できます。また、
 
 
   I have a good friend who...
   
   
 だと、そのあとは "who" が「主格」なので動詞がくることがわかります。とこ
 
 ろが
 
 
   That was the best movie that...
   
   
 でくると、"that" が主格でもあり目的格でもあるので、いったい「動詞」がく
 
 るのか「主語+動詞」がくるのか、瞬時には理解できません。そこで学習者は
 
 大いに困るのです。
 
 
                 しかし!
                 
  
 これは困る問題ではないのです。なぜなら、ネイティブ・スピーカーであって
 
 もわかるわけがないからです。ここに日本における英文法学習の「根」があり
 
 そうです。問題になるのは、関係代名詞のあとにくるのが「動詞」なのか「主
 
 語+動詞」のいずれになるのかが瞬時にわからない、ことではなく、関係代名
 
 詞のあとには「動詞」か「主語+動詞」のいずれかになるから、瞬時に察知し
 
 なくてはならない、という考え方自体なのです。実際、"who" と "whom" 意外
 
 の関係代名詞のあとには「動詞」がくるのか「主語+動詞」になるのかは、聞
 
 かなくては(読まなくては)わからないのです。これはちょうど、
 
 
   I have a friend (      ) has lived in London for 10 years.
      
   
 のカッコ内には、そのあとが「動詞」になっているので、主格の "who" を入れ
 
 なくてはならない、と瞬時にわかるのが解答に求められる「紐解き方」なので
 
 す。この紐解き方を
 
 
   That was the best movie that....
   
   
 にもうっかり適用させようとしてしまい、知らぬうちに自分で自分を苦しめる
 
 ことになってしまうのです。品詞だけをみて、意味を咀嚼せず並べてみようと
 
 する弊害とでも言うのでしょうか、従来の英文法学習からすると、関係代名詞
 
 はまだまだ分厚い壁となって学習者の前に立ちはだかっているようです。
 
 
   ところが、筆者がもっと気にしていることがあります。それは前回のステ
   
 ップでもお伝えしたとおり、関係代名詞は要するに「形容詞節」を作るわけで
 
 すから、名詞にどのような冠詞が相応しいのかが、関係代名詞のあとにどのよ
 
 うな表現をするべきか、と同じくらい重要だと思うのです。そしてこの問題は
 
 ほとんどと言ってよいほど文法書では扱っていません。名詞の前に a(the) な
 
 どという、「どちらでもいいですよ!」と、一見学習者を励ましているような
 
 例の示しかたを見ますが、これでは「冠詞なんか a でも the でもどちらでも
 
 いいんだ」という安易な態度を植え付けてしまうものだと思います。
  
  
  今回はこの形容詞節における名詞の冠詞状態を緻密に見てゆきたいと思いま
  
 す。そして少しの差異を機敏に感じ取ることにより、自己英語アンテナの性能
 
 向上に努めてゆきたいと思います。
 
 
                               講師K
  

   
-----|今回の課題|--------------------------------------------------------


以下の英文節を「名詞+形容詞節」に that を挿入して作り、出来上がった「名
詞+形容詞節」を目的語とし、新たに「主語」「動詞」を並べて新英文節を作っ
て下さい。上の例を使ってプロセスを確認しましょう。

 英文節: The president of the U.S.A lives in the White House.

  形容詞節:the president of the U.S.A that lives in the White House

  これに、主語+動詞をつけます。その主語と動詞とは、

            
            The news showed...

  です。すると、


 新英文節:The news showed the president of the U.S.A that lives 
            in the White House.


が出来上がります。この際、検証すべき確認の点がいくつか浮上しますので、こ
れを考察してみます。その点とは、

 ● 文法的にうまく主語+動詞+「名詞+形容詞」がつながるかどうか

 ● 名詞の冠詞はそのままでよいのか、変更しなくてよいのか

 ● 冠詞がない名詞の場合、冠詞を加えるべきか否か

などです。英文法の総合力を試す問題にもなるので、文脈をしっかりおさえなが
ら例文の変格を見つめてゆきます。上の例の場合、動詞 showed が過去形なので
that の次の lives が過去形にならなくてよいのかどうかが問題になります。そ
して、the president は a president にはならないのかどうか。

 検証: 現在形のままでよい。もし過去形の lived にしたら、官邸に住んで
     いた大統領をニュースは映し出したのですから、現職の大統領ではな
     いことになります。但し、元大統領を映し出すのならこれでもよいこ
     とになります。

     a president にはなりません。もし a president that...という方法
     でゆくと、官邸に住まない大統領もいることになり、事実に反するか
     らです。


 ※ 冠詞以外の文法項目に踏み込むことになりますから、検証作業としては英
   文節を「名詞+形容詞節」に変化させて、それに新しく主語と動詞を加え
   ることにより「新英文節」が作れるこの簡単な英文作成の妙味を味わって
   いただけたら充分だと思います。


-----------------------------------------------------------------------

英文節:

1: A friend of mine went to a night school.


2: A small car comes in handy.


3: Beauty is only skin deep.


この三つで充分でしょう。主語の違いがポイントです。
   

 
1■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■UP■13


   1: A friend of mine went to a night school.


   この英文を瞬時に「名詞+形容詞節」にするには、that を主語のすぐあと
   
 に入れるという方法をお伝えしました。早速、その通りにしてみましょう。
 
 
 
   a friend of mine that went to a night school
 
   
   
 "that" の代わりに "who" でもいいのですが、ここは "that" に統一します。
 
 すると和訳レベルで「友人のひとりは夜間学校に通っていた」という英文節が
 
 「夜間学校に通っていた友人のひとり」に変格したことになります。そこで、
 
 課題の「主語+動詞」である "The news showed..." をつけ加え、変化をみて
 
 みると、
 
 
   The news showed a friend of mine that went to a night school.
   
   
 となります。一見何の変哲もない英文に見えますが、様々な問題提起をこの英
 
 文は放っているのです。まず、この冠詞からはじめましょう。
 
 
   a friend of mine は a friend of my friends をコンパクトにした形にな
   
 りますね。「友人のひとり」になります。しかし、ふつう a friend でほとん
 
 ど間に合うことを知っている学習者は意外に少なく、「友人のひとり」は決ま
 
 って a friend of mine を出してくるのです。
 
 
   この不定冠詞の friend に the をつけるとどうなるか?そうなると、the 
   
 friend of mine つまり the friend of my friends となり、意味合いが大変異
 
 なることになります。「私の友人のなかで唯一友人たるべき人物」と語ってい
 
 るようなので、「友人のひとり」を示す a friend of mine とはずいぶん意味

 が異なります。ここでは冠詞の考察をよりわかりやすくさせるため、a friend 

 と the friend を比較することにしましょう。
 
 
   それではもう一度英文をそれぞれ書き直してみましょう。
   
   
   
   The news showed a friend that went to a night school.

   The news showed the friend that went to a night school.
   
   
   
 になります。この二種類の「友人」は、
 
 
 a friend  → テレビを見たとき、はじめて「自分の友人だ」とわかる
 
 the friend → テレビを見たとき、事前に話した友人であることがわかる


 であることが文脈抜きで考えても判断が可能です。そして英文としてこの二種

 類の英文の差異を同時通訳風和訳で見てみると、それぞれ



  「ニュースになんと友人が映っていたが、夜間学校へ行ったところだった」

  「ニュースに例の友人が映っていたが、夜間学校へ行ったところだった」
  

 
 となり、違いのウエイトは a friend と the friend の違いに集約されそうで

 すね。ところが、この英文にはまだ別の表現の可能性が潜んでいます。これは

 英作文をするときの学習者の心理に反映される問題だと思いますが、「時制」

 はこのままでよいのか、という問いです。


   The news showed... ではじまる英文は、動詞 showed の過去時制の影響

 をそのまま受けますから、showed のあとにくる「that節」の中の時制も一致

 させなくてはならないのでは?と考えるのです。つまり、a friend を that節

 内の主語にしたとき、



    The news showed a friend that had gone to a night school.
                     ^^^^^^^^


 という英文になるのでは?という疑問です。受験体制で英語を懸命に勉強され

 てきた学習者なら当然考える可能性だと思われます。その理由は、「ニュース

 がテレビで流された時より、友人が夜間学校へ行った時の方がより古く、ここ

 に時制のズレがあるので went は showed より古い『大過去』had gone にす
 
 べきだ」とする考え方です。


   一見システマティックに見えるこの方法は、残念ながら絶対的解答とはな

 り得ません。なぜなら英文、
 
 

   The news showed a friend that went to a night school.
                                    ^^^^
      The news showed a friend that had gone to a night school.
                     ^^^^^^^^   


  はまったく意味が異なるからです。動詞部を went から had gone にすると、

 友人が単に夜間学校へ物理的に「(入って)行った」のではなく、「ある一定

 の期間ずっと夜間学校へ通っていた事実」という意味、または、「(昼の学校

 ではなく)夜の学校へとうとう行ってしまった」という意味になってしまうか

 らです。


   このあたりの動詞環境は、時制の問題として英文をよく読み文脈からどの

 ような意味になるかをすくい取る修練が必要になり、特に「完了形」の実感を

 皮膚感覚で感じていなければ、英作文をするときにどの表現を使えばよいのか

 ― went でよいのか had gone にした方が自分の意図にあっているのか ―

 がピンとこないのです。


   さてこれで一応二種類の英文が得られました。もう一度見ましょう。



   The news showed a friend that went to a night school.
                               
      The news showed a friend that had gone to a night school.



    動詞部の違いは、時制のはたらきをもう一度振り返り、どちらを選ぶかを

 各自決定してください。


 * 従来、完了形といえば「完了」「結果」「経験」「継続」の四用法を理解の
  羅針盤として長らく重宝してきたわけですが、筆者はこの四分割は必要ない
  と考え、完了形の本当の姿はすべて「持続/継続」に集約されると拙ブログ
  で説いてきました。詳しくは→「英語ブギウギ散策」http://i-am-koushi-k.
  cocolog-nifty.com/blog/cat12258322/index.html を参照してください。



2■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■UP■13


   2: A small car comes in handy.
   
   
   まず英文の意味を確認しましょう。「小さな自動車は役に立つ」というメ
   
 ッセージは辞書などで調べてすぐに理解できるものですが、この訳では冠詞の
 
 意味はうまく反映されていないようです。これを会話風に訳して見ますと、
 
 
   「小さい車ってのは、便利だねぇ」
   
   
 という例が考えられます。単数の car に small と形容されていますから、複
 
 数の Small cars とは少しニュアンスを異にしています。よく不定形であれば
 
 主語が単数であれ複数であれ、ほぼ同じ意味をもつとする向きが一般的にあり
 
 ますが、この場合、
 
 
 
    A small car...
    
    Smalls car...
    
    
    
 の二種類の主語を見たとき、英語学習をよりよく考えれば、「どこか違う」と
 
 感じ、その違いを努めて求めてゆくのです。その方が学習者の言語感覚をより
 
 緻密にさせてくれるのです。
 
 
   "Small cars..." を「小さい車ってのは・・・」と訳しても差し支えない
   
 のですが、なぜ複数?と真剣に考えれば、まだまだその複数性を反映させても
 
 よいのではないかと思うのです。


   複数である、ということは、小さな車は便利であるという事例が至るとこ
   
 ろにあるような、ごく一般的な日常風景のような気持にさせてくれます。する
 
 と、より常識的な(人によっては押し付けがましく聞えるようで、何を言おう
 
 筆者自身がそうなのです!)意味合いをもつようになるのです。一応拙例訳を
 
 書き出してみますと、
 
 
 
   「車は小さいから便利」
   
   
   
 と言いたくなるような押し付けがましさがあり、まるでテレビのコマーシャル
 
 を聞いているような気分にさえなります。見るもののハートをぐいっとつかま
 
 ねばならないのがコマーシャルですから、本来は特別な事情をもった事柄でも
 
 まるで一般受けをしているかのように仕向けるのが狙いなのです。
 
 
   さて、演習課題の問題にもどりましょう。まずこの
   
   
   
   A small car comes in handy.
   
   
                     
 を「名詞+形容詞節」の形に変えてみます。that を主語のすぐあとにおいて、
 
 
 
   a small car that comes in handy
         ^^^^
   
   
 となります。これで「小さい車ってのは便利だねぇ」から「使い勝手のいい小
 
 さな車」となりました。どうして「使い勝手のいい」にしたかと言えば、comes
 
 in handy の肌触りは、形容詞 convenient の「便利な」がもつ感触とは随分違
 
 うものだということを言いたかったのです。come in handy は、使いたいと思
 
 ったときに、まるで自分の制空権に勝手に入ってくるような、都合のよさを感
 
 じ取れるからです。なので「使い勝手のいい」にしました。
 
 
   この "a small car that comes in handy" に The news showed を接続す
   
   るのです。すると、
   
   
   
   The news showed a small car that comes in handy.
   
   
   
 となりますが、ここで時制の問題が発生します。that のあとの comes はこの
 
 ままでよいのか、それとも時制に合わせて came にしなくてならないないのか
 
 です。
 
                   . . . .
   英文法の時制の一致という法則をそのままあてはめるのであれば、
   
   
   The news showed a small car that came in handy.
                                    ^^^^
 
 となります。この場合、came でよいと思われます。なぜなら、a small car 
 
 that comes in handy という限り、a small car that doesn't come in handy
 
 という車があることを表現しているからで、状況により変化する特殊な車のこ
 
 ととなり、時制がその「変化する状況」であることが言えるからです。
  
 
    これで終わったように思えますが、本格的な仕事はここからはじまりま
    
 す。受験英語ではこの「変格された時制」をきっちりと理解しているかどうか
 
 が筆者の経験の中では非常に疑問に思えるのです。この文の意味は
 
 
   「ニュースで小型車を見たんだが、使い勝手がよさそうだったね」
   
   
 となるでしょう。なぜ「よさそうだったね」であって「よかったね」ではない
 
 のかが気になることでしょう。語られた内容は過去のニュース情報ですから、
 
 聞き手にはもう目にすることはできず、語り手の記憶だけがたよりになる状況
 
 が、いわば「過去の叙述」ということになります。当然、目には映らないし、
 
 語り手がどれだけ正確に見たものを再現するかがポイントですから、断定的な
 
 表現はリスクがつきます。「使い勝手がよかったね」と言ってしまうと、個人
 
 の意見を押し付けている結果になり、過去形の自然からいえば、少し急性すぎ
                            . .
 ると思われます。なので「よさそうだったね」とするのが無難なのです。
 
 
     
3■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■UP■13

 
   3: Beauty is only skin deep.
   
   
   いわゆる「諺」です。「美貌は皮一重」。つまり、美しいのは表面的なだ
   
 けで、その人間の内容まではわからない、という戒めをこめたトーンが感じと
 
 れそうです。もうこの文節を「名詞+形容詞節」にするのは、これまでの演習
 
 からすると簡単なことだと思われます。that を主語のあとに入れて、
 
 
   beauty that is only skin deep
   
   
 と変格させればよいのです。さて、この節の意味を明らかにしたいのですが、
       . . . . . . .
 これがまだうまくいかないのです。その理由は、もうお気づきだと思いますが
 
 これまでの例とひとつ異なるところがあり、それをはっきりさせないとうまく
 
 和訳できないのです。そう、beauty に何も冠詞がついていないのです。
 
 
   名詞に冠詞が絶対必要だというのではありません。この beauty という単
   
 語のもつ意味そのものを考えた場合、冠詞環境を明確にしなければ「意味」が
 
 伝わらないからです。
 
 
   まず、不定冠詞と定冠詞をそれぞれ「あてずっぽう」のようにつけて、そ
   
 れがどういうような意味をもつのか考えてみましょう。
 
 
   a beauty that is only skin deep
   
   the beauty that is only skin deep
   
   
 それこそ「表面上」はこれで仕上がったのですが、意味もわからずすまし顔を
 
 決め込むわけにはゆきません。拙訳例は、
 
 
   「外見だけが美しい人」
   
   「外見だけが美しい例の人」または「外見だけに限られた美」
   
   
 となりそうです。"a beauty" をさらに追求すれば「ある種の美」とすることが
 
 言えそうですが、解説が膨大な量になるのでここでは扱わないことにします。
 
 
   a beauty が指すもの、それは「美」に具体的な「形」が加えられたことに
   
 なりますから、もっとも端的に表しているのが「美しい女性」であるという、
 
 誠に理解しやすい例えだと思います。"a beauty" を料理人であれば、見事に切
 
 られ肉汁をしたたらせているローストビーフの切り口を指したり、数学者であ
 
 れば、見事に並んだ数字の果てなき「顔」を意味したり、画家であれば、自分
 
 の描いたキャンバス上の絵より、無造作に絞り出され、なでつけられたパレッ
 
 ト上の絵の具の狂乱を美しいと感じたりするのは、かなり「特別」な状況下か
 
 らくる「美」だと思われ、やはり一般性を問うなら「美しい女性」が連想しや
 
 すいのではないかと思います。
 
 
   しかし、なんとヒドイ表現なことでしょう。"a beauty that is only skin
   
 deep" とは人格を傷つけてしまうほど苛酷な表現だと思います。「外見だけが
 
 美しい人」ですから。余談ですが、もし諺の段階で
 
 
   A beauty is only skin deep.
   
   
 と、冠詞環境を知らずして、たまたま「美貌は皮一重」と言うつもりを、不定
 
 冠詞をつけてしまった結果「美人は皮一重」となってしまってはコトです。冠
 
 詞を乱暴にあつかうと、このような「心外」なことになるのです。
 
 
   その不定冠詞が定冠詞になれば、さらにヒドイ状況になるでしょう。
   
   
   The beauty is only skin deep.
   
             ・・
 は、ひとつの解釈として「あの美人は外見だけだ」と聞えてしまうからです。
 
 この英文だけで他に意味を探ろうとしてもむずかしく、文脈は「その美しきも
 
 の」としか語っていないので、やはりもっとも連想しやすいのは「美人」とい
 
 ことになるのです。


   話を「名詞+形容詞節」にもどしましょう。面白いことに、諺から派生さ
   
 せ、冠詞のついた「名詞+形容詞節」
   
   
    a beauty is only skin deep
   
   the beauty is only skin deep
   
   
 は、もともとの諺に冠詞をつけた
 
 
   A beauty is only skin deep.
   
   The beauty is only skin deep.
   
   
 より、ややヒドさが薄まっているようです。それはなぜかと言いますと、that
 
 が名詞に形容というクッションをつけているからです。衝撃を吸収する力をも
 
 っているのです。この衝撃絶縁体の 「that 形容詞節」のことを世間一般では
 
 
   「限定用法」
   
 
 と呼んでいます。関係代名詞の項目で必ず目にする文法用語ですね。「限定用
 
 法」「非限定用法」を、


   ●「カンマがある、なし」

   ● that は限定用法のみ
 
 
 の二点をを判断材料にして見分けることを学んだと思います。
 
 
   ところが、その判断材料だけでは何が「限定用法」で何が「非限定用法」
   
 なのか、わからないことでしょう。今回のマガジンの最後になりますが、極め
 
 て重要な「限定用法」「非限定用法」についてお話をしたいと思います。
 
 
   なぜ、
   
   
   a beauty that is only skin deep
   
   the beauty that is only skin deep 
   
   
 のいずれもが 


   A beauty is only skin deep.

      The beauty is only skin deep.

  
  より和やらぐのかと言えば、それは「美人」を「ただ外見だけの人」として

 「限定」し、「ただ見かけが美しいだけの人」以外の「美しいのは外見だけに

  とどまらない人」の存在を感じさせることに成功しているからです。


    なぜ that で結ばれた名詞 a beauty と the beauty が限定と呼ばれるの
                  . . . . . .
 かといえば、「外見だけが美しい人」だけに限って話をすすめようとしている

 からそう呼ばれるのです。要するに、
 
 
     「いいですか、見かけだけがキレイな人についてお話するんですよ」
     
     
 と断わりを入れているのです。that に「カンマ」を使えないのは、カンマを入
 
 れると、そこで一旦言語の流れが切れてしまい、限定の意味合いが薄れてくる
 
 からだと思われます。限定とは「必ず制限する」必要がありますから、途中で
 
 英文を切るわけには行かないのです。
 
 
   これを逆に言えば、カンマがあれば、そこで英文は切れ、あとに続く形容
   
 詞節は別段あってもなくても英文の「本義」が変化しないものだと言うことが
 
 できます。限定しなくても、英文はちゃんと生きている、ということですね。
 
 そしてこれを「非限定用法」と呼んでいるのです。
 
 
   非限定用法はカンマを使いますから、that 以外であればどの関係代名詞を
   
 使ってもよい。今扱っている「名詞+形容詞節」でゆけば、「美人」を形容し
 
 たいので、
 
 
    a beauty, who is only skin deep
    
    the beauty, who is only skin deep
    
    
 とすればよいでしょう。しかし、こうなると、ヒドイのです。本当にヒドイ。

 これを冠詞環境をガッチリとらえて拙例訳をだすと、
 
 
   「常日ごろ、見かけ倒しの美しき人」
   
   「常日ごろ、見かけ倒しのあの美人」
   
   
 となり、「見かけ倒し」が「無制限」に広がると考えてください。それがどん
                                . . .
 なにヒドイことだか、おわかりでしょう。だから「非限定」、または非制限と

 呼ぶのです。
 
 
   さて、最後の検証になりますが、新英文節を作るべき The news showed 

  をこの「名詞+形容詞節」に加えてみます。二種類あるので、
 
 
   The news showed a beauty that is only skin deep.
   
   The news showed the beauty that is only skin deep.
   
   
 となります。さてここでまたまた「時制」の問題です。that 節が修飾している
    . . . . . . . . . . . .
 のは、実際目にすることができる「美人」ですから、「ニュースで見た」とす

 ると、その事実内容自体も過去にしなくてはならず、
 
 
   The news showed a beauty that was only skin deep.
                                 ^^^
   The news showed the beauty that was only skin deep.
                                   ^^^
 
 となって、時制の一致が施されます。さて、それぞれの意味はどうなるのでし
 
 ょうか?


   「ニュースで美人が映ったんだが、上っ面だけって感じだったね」

   「ニュースで見たんだが、『例の上っ面だけ美人』が映ったね」


 こう書くと、ヒドイって感じがします。そして筆者がまるで「美人は上っ面だ
 
 け」だと論じているような人間に見えてくるので、あえてここで弁明します。


   私は決して、美人を皮一重だとは考えておりません。


 しかし、まだ「非限定用法」が待っています。


   The news showed a beauty, who was only skin deep.

      The news showed the beauty, who was only skin deep.


  やはり時制を一致させます。意味は・・・


   「ニュースで美人が映ったんだが、所詮上っ面だけだね」

   「ニュースで例の美人が映ったが、(彼女は)所詮上っ面だけだね」


 もうやめましょう。自分自身がちょっと不思議な感じがしてきましたので、こ

 の辺でやめないと、バチがあたりそうです。


   さて、まだ究極の課題が残されています。原文は、


   Beauty is only skin deep.


  でしたから、「美人」や「美しきもの」ではなく、純然たる「美」の概念を語

 らなくてはなりません。なぜなら「美貌は皮一重」の美貌とは、結局人間の顔

 や体のバランスを見たときの均整を語るものですから、やはり「美」そのもの

 を意識することになります。そして冠詞のない beauty は人ではなく、モノで

 もない、人間が見出したバランスの結晶であるような気がします。


   本節の冒頭で "beauty that is only skin deep" の意味をはっきりさせ

 ようとしましたが、うまくいかないと書いた理由はここにありました。そのよ

 うな人間の感覚からくる美のあり方が何種類もあるのかどうか、ということな

 のです。「美の表現」は文化により様々な様式があると直感的にわかりますが

 その様式そのものに好みはあっても、「美」というものに優劣をつけることが

 果たして可能かどうかという疑問が出てくるのです。


   優劣をつけることが可能かどうか、より、優劣をつけることが許されるか

 どうかという議論にも発展してゆきそうなので、ここではこれ以上展開しない

 でおきたいと思います。ただひとつ自分自身がわかっていることで書いてみま

 すと、「美」の感覚というのはどこか「味覚」に似てはいないかと思うことが

 あります。日本語で「美味」と書きますが、今食べておいしいものは、とくに

 他のものと比べて比較したり優劣をつけたりしなくても、感動する味覚として

 完結しているからそれでよいと思うからです。

 
   なのでさしあたり「美」に関しては「この美」だとか「あの美」という方

 法をとらないのが「美」ではないかなと思います。だから、冠詞は一切とらず

 そのまま beauty that is only skin deep のままでよいと思われます。


   しかし、もうひとつの関門があります。「美」をニュース報道するのが可

 能かどうかということです。つまり、


   「ニュースで『美』を見たんだが、メッキの吹きつけみたいだった」


 などと語れるかどうかなのです。一応新英文節を書くと、


   The news showed beauty that was only skin deep.
               ^^^^
      The news showed beauty, which was only skin deep.
                              ^^^^^

  と二種類書くことができます。結論から言えば、この二本の英文節を読んでも

 ピンとすぐに来ないので、これが語られた文章であるとすれば、やはり聞き手

 の連想は「美人」になってしまうことかも知れません。それ故、この二本の英

 文は「有効」であるとはいいにくくなります。


   ところが、Beauty is only skin deep. は「諺」であり、この諺は真実で

 あると、これを証明しようとする人がいたとしたら ―テレビカメラの前で―

 The news showed はまだ使えるかもしれません。形容詞節とは関係がなくなり

 ますが、that の位置を変えてみるのです。


   The news showed that beauty is only skin deep.
                      ^^^^        ^^
      The news showed that beauty was only skin deep.
                      ^^^^        ^^^

 これは Beauty is only skin deep. の主語 Beauty のあとに that を置くの

 ではなく、前に置くのです。文頭に that を置いて「名詞節」を作り、それ

 を目的語として利用するのです。すると、「諺」自体をテレビニュースが映

 すことになるので、気をつけるべきところは時制の部分のみとなります。


   上の例文を拙例訳にだしますと、


   「ニュースで見たんだが、やっぱり『美貌は皮一重』は本当だってね」

   「ニュースで見たんだが、やっぱり『美貌は皮一重』はウソだってね」


 これはちょっと飛躍した訳かもしれませんが、時制の一致をうけない方の英文

 は、「不変の真理」は時制に影響されないという法則をそのまま守り、それ以

 外はすべて時制の法則に従う、という英文を和文に反映させてみたまでです。


   showed と動詞が過去なのに that節の中が現在形になっている例は、常に

 本当のことを語っているので、時制に影響されず、時制の一致を受けるものは

 もはや不変の真理とは関係のないものになっていると考えるのです。


   今回はこの辺で終わりにしましょう。


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