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静岡(中部)で上映される映画レビューと静岡ローカルの映画館や試写会の情報など。

  • 周期 週刊
  • 最新号 2008/09/05
  • 発行部数 48
  • マガジンID 0000227749
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2008/05/16

静岡銀幕週報 54

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>■□□                   
>■■□  静岡銀幕週報    
>□■■      第54号   2008/05/15    
                                      
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┃N┃■┃作品レビュー
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┃■┃1位/2008年28作品中 光州5・18
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「黒歴史をエンターテイメントに出来る強さ」

静岡ミラノ2で5月10日19:35の回。客入りは6人。少ないっちゃ少ないけど、雨も降ってたし、
下手すりゃ貸切かと思ってた。
この6人のうちの何人が涙したかは分からないけど、場内が泣いてる雰囲気は客入り6人の映画とは思えなかった。
6人ともが明るくなるまで残ってたし、4人は明るくなっても立ち上がる気配もない。
それくらい叩きのめされる映画だ。

なにに叩きのめされるかといえば、まず、巻き込まれる理不尽さに。
次に戦いでの無力さに。
さらに愛するものの重さに。
そして命を輝かせる誇りの美しさに。

決死の決戦を前に故郷に向かって土下座。こっちじゃなかった、向うだ、いや俺の故郷は
こっちだけどお前のは向うだ。で、背中合わせで土下座する姿は滑稽、で、振り返ると号泣してるとか、
このあたりの笑いで弛緩させて泣かせに持っていくことろは本当に韓国映画に共通する上手いところだし、
そんな泣かせ芸には事欠かない。

描写としては残虐さが目に付く。ただ必要な水準での残虐さではある。丸腰の市民への無差別発砲。
直前には兵士の人間味が描かれる。これは多くの武力弾圧で記録されている普遍の出来事といってもいい。
命令ひとつで人間ではなくなる兵士、それを育てたのが市民軍を率いたアン・ソンギである矛盾。
その最期は当初から予言されていた。「暴徒と区別が付かないから送ろう」と。
アン・ソンギの教えは軍の中で通されたのか、途絶えたのか。支配者に都合のいい部分だけ残ったのだろう。

事実を基にしているとはいえ、コミカルなやりとりも交えて恋愛・兄弟愛・親子愛を描いたフィクションであることを
忘れてはならない。時々フィクションであることを忘れさせる出来ではあるが、市民武闘派ともいうべき存在に
肩入れしすぎたがゆえに、違和感を感じさせる部分も少なくなく、その違和感が「あ、フィクションだっけ」と
目覚めさせる役割を果たした。
その違和感の最たるものが、「私たちを忘れないでください」という街宣車。市民の大多数と「私たち」が乖離している
事実をクライマックスに突然突きつけられる。主要登場人物の周りしか描かれていないために、
全体がどうなってるのかがまったく分からなかったし、そういった描写はこのストーリーに都合が悪かったのだろうとも邪推する。
当然のごとく関わったであろうし、特殊部隊を送ったとも言われる北朝鮮についてもまったく触れられていない。

こうした事件の本質は自己を通して散っていった者にではなく、運動に関わり傷つきつつ闘い通さずに
生き延びた大多数の者にあるのではないかと思うし、最後に印象的に映された、生き残った者だけが
悲しみの瞳で写る写真がそのことを表しているのだろう。
それも黒歴史を直視してエンターテイメントに出来るまで消化しているからこそ描ける境地。

一方で日本人は黒歴史を直視できず逃げ回ってるだけ。
謝罪して逃げる奴、開き直って逃げる奴、無知で逃げる奴、屁理屈で逃げる奴。
その上に「韓国はなにするか分からない、丸腰の自国民を銃撃しちゃうから怖い」なんて書いてるのを
見ると恥ずかしいとすら思う。
こういう奴はたとえば大正の米騒動で同じように日本軍が丸腰のおっちゃんおばちゃんに発砲して
30人ほど死んでるなんてことも知らないんだろう。


公開中
静岡ミラノ2


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┃M┃■┃もうひとつ作品レビュー
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┃■┃2位/2008年28作品中 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
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「誰のせいでもないのかもしれない」

シネギャラリー右側で5月13日18:15の回。客入りは18人。
3時間、全然長くなかった。
社会的なうんちゃらよりも、密室での心理劇がすごい出来。
密室で孤立すると先鋭化する、これは古今東西を問わず繰り返してきた歴史だけど、その過程を
ここまで精緻に描いたことに価値がある。
一つ一つの「総括」をたっぷりの時間をかけて描いているからこそ見えてくるものがある。
たとえば、はじめは「相手のために」自らの拳を痛めて顔を殴打する。しかしそのうち殴っても拳が
痛まない腹を殴り、痛みにくい足で蹴り、最後には刃物。だんだん肉体的にも心理的にも楽に
殺せるように自然に移行しているところとか。
心理的な追い込み方も洗脳のテキストを見てるようだった。大声で自己批判を求めて徹底的に
「なぜ」を突きつける手法は原始的だけどよく効きそうだ。

ただ森がこういう手法を取ったのは決して洗脳の知識があったからではなく、自らの逃亡歴を
覆い隠すための虚勢の余禄であることは明らか。
永田の理屈も全然筋が通ってないけど、強者の庇護の下で大声で通せば支配力を生む。
そして場の空気と言うものが出来、その空気の中で「囚人のジレンマ」、つまり個々の最適な選択が全体として
最適な選択とはならない状況(wikipediaより)が生まれる。
そのことが森や永田をさらにエスカレートさせる。

この映画の最後は「結局みんな弱かったんだよ、ヽ(`Д´)ノ ウワワーン」で終わるわけだけど、それは違うと思う。
その場その場で行ったのは命がけの選択、それ以上のなにを求められるというのか。
ただ、全体としての最適な選択にならなかった、必死で生きるということの極北に迷い込むとこういう末路もありうる、
ということだろう。
これは森や永田にしても例外ではない。彼らにしても場の空気に流された存在だ。
必死に生きることを求めて、流れ着いた場の空気に触れたがゆえの罪ならば、必死に生きることすら罪になりかねない。
触れてないから好き勝手振舞ってる森や永田が身の回りにたくさんいることに気付くと、いま俺が生きている
世界の危うさをイヤでも自覚させられる。


5月25日まで続映
静岡シネギャラリー

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┃R┃■┃来週なに見ようかな
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┃■┃「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」

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今週は「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」のみ。
ただこれ、ずいぶん前からしつこく予告編を上映していて、なおかつコメディなんだか
社会派なんだか、よく分からない感じ。期待させるには十分。
あと時間があればシネギャラリーの「4ヶ月、3週と2日」も。

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┃Z┃■┃雑記
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┃■┃韓国映画について
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韓流ブームとか言うけど、結局韓国映画ブームって来なかったと思う。
韓国テレビドラマブームの影響で「誰にでも秘密がある」みたいなクソ映画が拡大公開されたりしたけど。
去ったブームの置き土産として、本来ならもっと評価されるべき韓国映画に対して食傷感が生じて
敬遠されてしまったことがなんとも惜しい。
タイトルを挙げれば「グエムル」と「カンナさん大成功です」。特に「カンナさん大成功です」の興収はありえない。
最近DVDのレンタルが始まって再評価されてるみたいだけど、遅いよ。
それを踏まえての「光州5・18」。
ミラノ2封切り作品にハズレなし、というのが俺の持論なんだけど、ものの見事に証明する形になった。
でもその証明を誰も知らないってのがなー。



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