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2009/01/03

映画情報・批評 黒獅子の眼 vol.16

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  黒獅子の眼  ☆vol.16★新年
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謹んで、新年のご挨拶を申し上げます。k.onoderaでございます。
新たに読者も増えてきているのに、ご無沙汰して申し訳ないです。

新年…といえば正月映画ですが、単館・ミニシアターはともかくとして、今年の
ロードショー作品は、ずいぶん地味だと思いませんか?
一番の目玉が、キアヌ・リーヴス主演の『地球が静止する日』…。
これ、観ましたが、リメイクということもあって、非常にクラシカルなSF作品といっ
た趣で、お正月に家族みんなで観るには、ちょっとやばいくらいにエンターテイ
メント度の薄い作品でした。というか、ひとりで観たとしても微妙だと思います。
他には、リドリー・スコットの渋い戦争サスペンス『ワールド・オブ・ライズ』、
邦画では、『ALWAYS 三丁目の夕日』のスタッフによる『K−20 怪人二十面相
・伝』、携帯小説原作の純愛もの『赤い糸』、災害レスキューもの『252 生存者
あり』、そして『特命係長 只野仁 最後の劇場版』と、私としてはまったく食指が
動きません。
傑作新ボンドシリーズの、『007 慰めの報酬』をこの時期にぶつけたら観客が
相当に見込めたんじゃないかと思うと、もったいないなぁと思います。
もし、今の時期、観る映画にお困りであれば、迷わず『WALL・E ウォーリー』
をオススメします。もしクリスマスシーズンに見逃したのであれば、ですが。

『WALL・E ウォーリー』はなんとアニメーション作品でありながら、アカデミー作
品賞(アニメ部門でない)に、『ダークナイト』やガス・ヴァン・サントの『ミルク』ら
と並んで、堂々ノミネートしているという、剛のものです。
まあでも、受賞はミッキー・ロークの『レスラー』あたりに落ち着くかと思います。

□公開中映画 『WALL・E ウォーリー』
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『レミーのおいしいレストラン』の制作も務め、アニメーション監督としても、
『バグズ・ライフ』、『ファインデイング・ニモ』に続き、着実にレベルアップしている
アンドリュー・スタントン。
そして『WALL・E ウォーリー』を、『モンスターズ・インク』監督のピート・ドクターと
ともに原案からビルド・アップし、脚本も担当したというのだから、すごい才能だ
と思う。
ブラッド・バードが常に「人間」を主人公としているのに対し、虫や魚やロボットを
キャストに据えているところが面白い。
もちろん、その点において、両者に本質的な違いがあるというわけではない。

とはいえ、一部でいわれているように、「ピクサー作品最高傑作」…かというと、
もちろん、もはや神仙の域に入ったブラッド・バードの『レミーのおいしいレストラ
ン』の足元にも及んではいないことは言っておきたい。
リラダン以後におなじみの、「ロボットに愛が生まれるか」という哲学的問いを、
押井守やアレックス・プロヤスのように充分に突き詰めているわけではないし、
安易でステレオタイプな部分も散見される。
だが、興味深いところは少なくない作品だ。

非常にミステリアスかつ静かでシンプルな冒頭から、一気に、巨大なスペース
コロニーを舞台にした、比較的複雑な展開に飛躍する展開の脚本は、うまく単
調さを回避していて飽きさせず、お得感もあって素晴らしい。

主人公、"WALL-E"が、非常に抑制の効いた名優である。
とぼけた失敗を繰り返し、目の周辺の表情で寂しげで魅力的な印象を与え、
ウッディ・アレンの壮年期を思い起こさせる。
また、自分のボディに映画のタイトルが記述されている主人公というのも、
極めて珍しい!
アカデミー作品賞というよりは、"WALL-E"に主演男優賞を授与してもいいので
はないかとさえ思ってしまう。
俳優協会から抗議がありそうなので、もちろん実現はしないだろうが、ロボット
に労働を奪われている昨今、俳優業も例外ではいられないだろう。

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⇒http://k.onodera.blog.ag/index.php/k.onodera/00000000000000012801


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映画トリビア(無駄知識)
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黒澤明監督の『赤ひげ』で、文学座の名女優杉村春子が、頭を大根で殴られ
るというシーンがある。
だが、なかなかうまく大根が折れず、用意した大根が無くなってしまい、急遽大根を
買い求めた。
このせいで、近隣地域の店から大根がすべて消え去ったという。
主演の三船が周囲の者にこう言っている。
「見ろ、あの大女優でさえ、大根で殴られることもある。
それも、少し干した大根だ。」

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□最近の批評 『デスレース』
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ロジャー・コーマンのオリジナル版『デス・レース2000年』を現代風に翻案した、
プリズン・カー・アクション。
近未来の、無秩序化したアメリカで、囚人同士をカー・バトルで殺し合わせると
いう、荒唐無稽な設定だ。
偶然かどうか知らないが、オリジナルのアイディアだけを見ると、同年(1975)
に発表された大作、『ローラーボール』にかなり似ている。

見た目も内容も、明らかにブルーカラー及び学生に的を絞ったプログラム・ピク
チャーなので、ここでは、どれだけ気持ちよいアクションが表現できるか、どれ
だけ笑えてストレス解消できるかに焦点が絞られる。
そういった快楽原則に沿った演出で満足させ、余力があれば他の要素を添加
すべきなのだが、この映画にはそういうものは全くなかったし、それはそれで
良いだろう。
そういう意味では、タランティーノの『デス・プルーフ』は、意外に、相当インテリ
向けの作品だったのだなぁ、と思う。

この映画の最大の特徴はやはり、徹底した「ブルーカラーの男ための作品」と
いうことだと思う。
まず、主人公のキャラクターの設定が、イレズミをいれた強面であり、不況にあ
えぐ自動車工場に勤務している、低賃金労働者であること(以前、有名なレー
サーだったらしいが、何故か工場で働いている)。
TVドラマ「プリズン・ブレイク」や、『アルカトラズからの脱出』に出てくるような、
知性的なキャラクターは存在せず、いたとしてもそれは「敵側」であること。
刑務所長が、冷徹なキャリア女性であること(女性の上司は認めない)。
肉体派美女によるサポート(女性はセックスアピールで評価する)。
ロシア系、アジア系などの、アメリカにおける比較的少数の系統の民族に対し、
アングロ・サクソン、アフリカ系の扱いが良いこと(多数による差別意識の利用)。

こういった極端な、「被支配者が、支配者をやっつけウサを晴らす」といった内
容は、アメリカ社会の閉塞感が透けて見え、面白いといえるが、ここまであから
さまな内容で、観客が製作者側から「バカにされてる」とは思わないのだろうか。
確かに、「権力の打倒」は気持ちがいいし、ダイナミズムを発揮できる題材とし
て、そういうジャンルを私は支持したいが、これはさすがに安易すぎる。
真面目な社会批判になっていないところが、脚本家及び製作者側が本気でテ
ーマに取り組んでなく、観客が欲しいものを「与えてやっている」という、いくらか
の特権意識を感じ、気持ちが悪い。

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⇒http://k.onodera.blog.ag/index.php/k.onodera/00000000000000012736

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info@k-onodera.net

では、また次回!

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