ここは地の果てアルジェリア【第65号】
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│ 第65号 2008.06.19│
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│ ここは地の果てアルジェリア 技術移転奮闘記 │ 永尾 良一 │
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│ ☆私こと普通の日本人が、スイスの企業に雇われ外人部隊となって
│ アルジェリアの工場建設現場に行き、現地の生徒を一から教育する
│ ノンフィクション物語です。
│
│ ☆上司も同僚も外国人、生徒はもちろんアルジェリア人、
│ 日本人は私たった一人でした。
│
│ ☆飛行機に乗ること自体が、早起きと大きな覚悟とさまざまな戦いで
│ あった。余裕をみて出国審査に臨んだにもかかわらず、時間がかかり
│ すぎて置いてけぼりを喰ったこともあった。
│
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│ 日本人通訳 │
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アルズーの日本人宿舎を訪れたとき、昔の同僚がいたことは前に話した。
ちょうど良いことに、彼はその宿舎の管理部門にいて、彼を含め4人の日本人
がいた。門のそばの管理事務所にいたおかげで、そこに入るのはフリーパスと
なった。通勤途中でもあり、帰りによく寄った。
ファム・ド・メナージュと呼ばれる家政婦の管理もそこでやっていたので、遊
びに行くと彼女達への指示の通訳をやった。そういったことでその部署の人達
とも知り合いになり、しばしばご馳走にもなった。
ある時お返しとして彼らをオランの家に呼ぶことになり、前日オランの市場に
買い出しに行った。市場はやはり朝早くか、夕方でないといいネタがない。
特に魚類はそうだ。
その通りには魚屋が何軒か有り、いずれも夕方、港から活きの良い魚介類が揚
がってくる。そんなときの市場は活気があって良い。店の前には人だかりで、
なかなか買い物は進まない。
フランス人が後ろの方から、この魚はいくらかと訊いているが、店の主人に
聞こえない。そのすぐ前にいたアルジェリア人が、主人に代わって言う。
「そんなに高くないよ」
「何いってる、俺は値段を訊いてるんだ、高いか高くないかなんて何の意味も
ないじゃないか」
と1人で怒っているが、彼らにそんなことをいっても仕方ない。
さて私は目当ての伊勢エビを買い求めた。地中海の甘海老も美味しいが、今日
はその店でとびきり大きい伊勢エビで、一抱えもあるのを買った。量ったらな
んと6キログラムもある。
もちろん生きていて、暴れるとこわいので、荷造り用の紐で縛ってもらった。
持って帰ったが冷蔵庫にも入らないので、生きているし腐ることもないだろう
と思い、台所の流しに置いていた。
すると夜中、ギー、ギー、ギーとうるさく鳴く。きっとこんなところに連れて
こられ、地中海が恋しいのだろうが、明日までの命である。おかげでその夜は
余り眠れなかった。
翌日、伊勢エビを茹でようとしたが、持っていた大鍋にも入りきれず、隣から
盥(たらい)のような鍋を借りた。
湯が沸騰したところでエビを放り込むが、鍋のふたを開け湯気を感じたところ
で、エビも己の運命を知ってか、バタバタと激しく最後の抵抗をする。
余りに騒ぐので私の手に負えなくなり、招待した友人の同僚に頼んだ。彼は有
無をいわさずエビを湯に放り込むと、鍋のフタを上からぐっと押さえ、全体重
をかけて鍋ごと押さえていたが、それほど6キロの伊勢エビの抵抗は激しかっ
た。一時鍋はがたがたと騒がしかったが、やがておとなしくなっていった。
その伊勢エビを5人で食べたが、頭と脚それに味噌の部分だけで満腹し、尻尾
の部分がまるまる残った。その尻尾は翌週招待したフランス人達に、輪切りに
してマヨネーズと共に出し、5人分の前菜となった。
彼ら会社から派遣された日本人にすれば、フランス人達と契約で仕事をしてい
る私が不思議でならないらしい。いつも通訳と間違われたが、そうじゃないと
説明するのに苦労した。
その中で面白い人がいて、こんな事を話してくれた。
「フランス語は難しいけど、ちょっと習って『夜を一緒に過ごしたいね』
という文章を一生懸命憶え、ファム・ド・メナージュ(家政婦)に
言ってみたんだ。
そしたらその女性はね、『ウ?』と答えやがった。『ウ?』のひとことだけだ。
こちらもウッ?となったね。ところでありゃどういうことだい?」
私は言ってやった。
「そうですか、それは惜しい事しましたね。『ウ?』というのは『どこで?』
ということなんですよ。つまり夜を過ごすのはいいけど、どこでと訊いた
のは半分オーケーのようなものですよ」
「そうか、しまったな。まさかそんな簡単にオーケーとは思わなかったから、
そこで諦めたんだけどね、もう一押しすりゃあよかったな」
彼らとはその後もドライブに誘ったり、夕食に呼ばれたりして長く続いた。
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─《★編集後記★》──────────────────────────
日本人宿舎の管理部門の方々にはお世話になりました。
たぶん向こうは向こうで同じようなことを感じていてくれてると思うのだが、
私にとってありがたかったのは、物質的な支援ではなく同じ日本人たちが
がんばっているんだという安心感みたいなものだったと思う。
今でもそうだが、私は元来、日本食や食材にはあまり不自由しておらず
米がひと月間なくても生きていける方である。
でもちょっと遊びに行ってそこでちょっと出されるちょっとした日本食は、
はっきりいってうれしく、懐かしかった。
こんなこともまことしやかに言われるのだが、日本ではロックか洋楽しか
興味がなかったある日本人がここアルジェリアに来てある日演歌を聴か
せたらじーんときて涙ぐんだといった類の話である。
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最後までお読みくださりありがとうございます。
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編集・発行 永尾良一
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