[VT]うそまこと其之九〜音域〜
[VT]うそまこと其之九〜音域〜
購読者のみなさまこんにちは。ゐ崎です。
今号のテーマは「音域」についてです。
初回は人の音域がどの程度あるか紹介しますね。
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「声の音域」
音域を確かめることはその人の技量やコンディションを確かめる指標になります。
歌唱技術の内、恐らく唯一の、定量的に示せるバロメータです。
初心者から中級者の場合、音色の良し悪しというものが理解されていないことが多いので
他に比べられるものがないかも知れませんね。
ただし、あくまで音域は音色とトレードオフだということを頭に置いていてください。
従ってどういった音色を前提にするかで音域の評価は変わってきます。
人の音域は「生理的音域(声域)」と「歌唱音域」に大別することがよくなされます。
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「生理的音域」
というのは
人の体の構造からどれだけだせるか、
というもので、基本的には技術は関係ありません。
細かいこと気にせずとにかく音が出ればいい、ということなのですがこれは
普通の人が思っているよりずっと広いものです。
ハーモニクス(SHV)を含んだ場合、一説では10オクターブ出るといわれます。
(これはほぼ可聴域いっぱいで、耳で判別できる音はすべて出しうるという意味です。
自分は一オクターブも出ないといっている人も
突発的に1000Hzくらいの「超音波」が出せることも、ありうる、、というわけです。
もちろんあまり現実的ではありませんが。)
7〜8オクターブ位なら実際にだす人がいるようですね。
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「歌唱音域」
まともな「声」にこだわるなら、声域としてはせいぜい4オクターブが限界です。
およそ100〜1000hz、G2〜C6あたりの範囲になります。
1000Hzを超えると主要フォルマントの一つが構成できなくなるので言葉がのりません。
また、100hzを下回ると音波が連続しなくなっていきます。
(言葉もやはり不明瞭になります。)
それ以前の問題として、
こういった極端な音域では音の高低が解からなくなってきますから、
出す意味があまりないですよね
実際には低音の限界は喉頭の筋群の筋力によって決まります。
簡単に言うと閉鎖が強いほうが低い音をだせます。
高音は技術的な要因と説明されることが多いですが、
これはつまり扱える声種(声区)の問題です。
胸声しか扱えない人はA4あたりが限界です。
ファルセットや頭声を駆使してA5
SHV(極高声)のローモードだけならA6といったあたりで頭打ちです。
発声技術が未熟だと
特に高音で母音が崩れたり喉が詰まったりして声の品質が下がってしまうため、
「歌唱音域」は狭くなります。
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「人の声域の変遷」
ここで年齢による変化についても簡単に触れておきます。
(ここで述べる音域は、上で述べた「生理的音域」より現実的なものです。)
―まず、新生児の音域が2〜3度程度です。
まだピッチを調整するための機構が機能していないので音域は無きに等しいわけです。
この時期の泣き声がA4付近だというのはよく知られていますが、
興味深いのは、
この音高は主要な声区(胸声、頭声、SHV)がちょうど重複するところだということです。
新生時は声帯内筋はほとんど発達していないので声種的には頭声です。
ただしここから順次内筋の発達に伴って自然に胸声が入っていきます。
つまり、「声区的には胸声区で声種的には頭声」という状態で、
いわゆるフランジリンボイスとかシャウト、
最近のトレーナがミックスボイスと呼ぶような声です。。
時折SHVも発せられます。
発声技術としてはかなり高度なことが自然にできてるわけです。
〜幼児期から第二次性徴期へ向けて、
声域は主として低音に向けて広がります。
これは声帯内筋の発達によるところが大きいです。
内筋で声門を強く閉じてやれば低い声がでます。
(喉頭が大きくなるから音域が下がると考えるのはあまり正しくないです。
単純にサイズが増したからといって音域が低くなるとは限りません。)
第二次性徴直前の頃には大体の人が2オクターブ程度出せるようになります。
少し無理すれば3オクターブいくことも多いし、
ホイッスルやSHVもこの時期だとあまり苦労せずに身につきます。
音域は生理的には成人と遜色ありません。
〜二次性徴後〜
男性は声変わりで音域が急変します。
恐らくは声帯内筋が急激に発達して
喉頭懸垂系や声帯後部の筋群との均衡が崩れるのでしょう。
以降、胸声主体の発声となり殆どの場合 頭声は一度失われます。
変声後の発声はまったく新しい物でそれまでの経験はあまり通用しませんから、
3オクターブ近く歌えていた人が、変声後1オクターブ未満に落ち込む
といったこともあります。
技術的なことがリセットされてしまうわけです。
こうした影響で、若い男性は発声技術で女性より劣ってしまうことが多いんです。
変声直後は合唱などをやる人で2オクターブ程度。
(歌を全くやらない人だと1オクターブ出せないことも多い。)
ファルセットを利用する人はさらに1オクターブ程度上に広がります。
ここから頭声を再度身に着けるには2〜3年の訓練が必要といわれ、
女性と同水準の頭声を操れる人は本当に稀です。
全体の1パーセント程度ではないでしょうか。
頭声をある程度身につければ 実声で3〜3.5オクターブの音域になります。
バンドで十年位歌っていると そのくらい出す人が大勢いますね。
〜女性の場合〜
男性のように急変することはほとんどありませんが内筋が多少は発達するので
胸声が多少入ってきます。
ですが男性のように音域が減ることは基本的にはありません。
日本の女性の音域は3オクターブをなかなか超えません。
胸声がきちんと身に付かない人が多く低音に広がらないものですから。
女声で3オクターブを超えるケースというのは
SHVで高音に稼いでるひとのほうが多数派です。
胸声をキッチリ使える女性は逆に(男性と同じで)頭声が苦手という人が多いです。
(勿論職業歌手として世に出ている方などその限りではないのですが)
〜壮年期〜
(読者の方にはあまり関係ないとは思いますが、、、)
著名なソリストが引退するのは50〜60歳ころが多いですが
この時期の変化は女性のほうが目立ちます。
頭声が上手く出なくなって男声化します。男性の変声期の変化に似ています。
男性の場合は内筋の痩せが目立つことが多く、男女ともにややしゃがれた声になります。
音域も順次減っていきます。筋肉の活動が衰え、組織の柔軟性が低下するからです。
ですが個人差が強く、歌唱訓練を続けていると衰えにくいようです。
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次回は技量水準と音域の対比をとってお送りします。
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〜ボイトレ嘘八百のコーナー〜
第6回「音域を広げる―男声偏―」
男声(というのはつまり胸声主体で歌うことなのですが)が音域を広げる場合
最終目標は「胸声(声種的に胸についた声)でA4以上できればC5まで出す」。
ということになります。これはどんなジャンルでも同じです。
その前段階として
1.胸声区とファルセットそれぞれ2オクターブ
2.頭声を身に着けて実声で3オクターブ
3.頭声区、胸声区それぞれ3オクターブ
4.声区融合
という通過点が考えられます。
(下の方が難しい目標ですが達成順番は人によって前後します。
4.の後に 「5.胸声でC5」 と続きます。)
「1.胸声区とファルセットそれぞれ2オクターブ」を目指す時期は、
地声で2オクターブは歌に自信がある人はそこそこいくのではないでしょうか
2オクターブくらいでないとカラオケで何も歌えないか。大体G2〜G4になると思います。
問題はファルセットです。
男性は、とかく胸声すなわち内筋による声門閉鎖が強すぎます。
殆どのシンガーはファルセットの使用が少なすぎるんです。
普段喋る時、胸声しか使っていないのですから
歌唱訓練では半分以上ファルセットでもいいくらいです。
(ただし地声でちゃんと歌えない人はやはり地声を先に鍛えた方が無難です。)
人前では出来ないとは思いますが
一曲全部裏声で歌うような練習をどんどんやりましょう。
また
初心者のファルセットは支えが弱いのでアンザッツの訓練を組み合わせると効果的です。
「2.頭声を身に着けて実声で3オクターブ」を目指す人
恐らく一番時間掛かっててこずるのはこの目標です。
先ず「頭声」というのが男共にはわかりにくいんですよね〜。
A4より高い音をポンと出す時、成分的には頭声が入っています。
B'zの稲葉サンやラルクのhyde氏がハイCより上の音をポンポン出しますが
あの明るくて丸い感じの声が頭声の特徴となる音色です。
注意しなければならないのはアプローチに何種類かあるということです。
a、胸声区(地声)の延長で張って出す
b、ファルセットの延長で張って出す
c、弱頭声から移る
殆どの場合aは自然にやっています。
地声で張り上げると高いAやBがたまに出るという場合、
その「張り上げる」感じが頭声です。
張り上げた時に声が割れてしまう場合は声帯伸展が弱い可能性があります。
そういう人はもう少しファルセットで歌いこんだほうがいいかもしれない。
bのアプローチを体現できる人というのは結構器用な人ですね。
十年くらい訓練している人でも全然わからないことがほとんどですから。
最初はいきなり強くて高い声が軽く出るのでなんだこりゃなのです。
何より狙う音域を工夫することが大切です。中途半端な高さだと胸声が邪魔します。
ハイCより上で胸声では全然出せないがファルセットなら楽に出るという高さが理想です。
(余談ですが
筆者のある知人はXjapanのaliveやunfinishedを歌ってるときに出始めました。
あまり有名な曲でないので音域に対するイメージがあまりなかったことや
toshi自身が割りと張って歌っていることなども都合が良かった気がします。
また英語詞であることもポイントかと)
感覚的には裏声で、大音量で叫ぶ。
出始めの声は胸声は入ってないのですこし裏声っぽいですけど
とにかく息の効率が良く大音量がでるのでファルセットとの区別がつきます。
当初は小さい声では上手く出せません。
この発声はファルセットでも相当の音域と音量を出せなければ上手くいきません。
その準備前提が「1.」なわけです。
そして更にaのアプローチも経験していたほうが可能性があります。
c弱い頭声(kopf pianoといいます)というのは
簡単に言うと頭声を扱える人が出すファルセットです。
いわゆる抜くというやつです。
子供や女性の裏声は男性のファルセットとはだいぶ違いますよね。
弱い頭声はファルセットを使い込むと少しずつ発現しますが
本格化するのは頭声を身に着けた後です。
弱頭声が使えるようになると女性の歌を普通に歌えるようになります。
(頭声だけで女性の歌を歌うと
メタルとかクラシックのような声になってしまうのですが)
歌唱技術としての理想を述べるならば
先ずaを少し経験した後bで頭声を徹底的に鍛えた後a戻り胸声区を広げ、
そしてcで音色の改善を計ると同時に声区融合を進める。
という具合に進捗させたいところです。
音色にこだわらないのであれば「2.」まででもかなり充実した声が得られますし、
これだけでも相当な実力です。
この段階で訓練をやめてしまう人も多いですね(是非はともかく)。
指導者側も、ここから先は教えない教えられないという人が大半です。
(まー、トレーナーといったってピンキリで
数だけ見れば、音大出ただけの素人ばかりですから。)
「3.」「4.」「5.」については女声との兼ね合いがあるのでまた後ほど、、、
(了)
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