[VT]うそまこと其之八〜声帯振動部削減2回目〜
[VT]うそまこと其之八〜声帯振動部削減2回目〜
購読者のみなさまこんにちは。ゐ崎です。
今回のテーマは「振動部削減」シリーズ二回目です。
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<< このマガジンの読み方 >>
補足的な説明をするために括弧書き(この括弧)を多用しています。
その部分は、手早くお読みになりたい方は読み飛ばしてもらってよい部分です。
また、用語についての詳細はウィキペディア等を参照していただきたいと思います。
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「声帯振動部削減」第二回
前回は削減したとき出る声「スーパーヘッドボイス:SHV」について簡単に(?)
説明しました。
でもまだ どんな声かわからないという人が多いかもしれませんね。
誤解を恐れずに一言で言うと、
「喚く(わめく)時の声がSHV」です。
声区を説明する時に、、
* 胸声=唸り声
* 頭声=叫び声
といってやると 大体の人が解かってくれると思います。
頭声やファルセットでは「唸る(うなる)」ことはできないし
胸声では「叫び声」にはならないからです。
(スポーツの応援なんかしているとわかるんですが
胸声で高く強い声を出そうとすると声が詰まって破綻します。
声楽家が注意深く聞いていると、男女問わず
「大声を上手く出せる=叫ぶことができる人の声は頭声が入ってる」
ことに気がつくはずです。
胸声で大声を出すことは「怒鳴る」ともいいます。
これは「叫ぶ」「喚く」とは印象の異なるものです。)
このパターンにSHVを当てはめると
* SHV=喚き声
という図式が成り立ちます。
ただ、ここで
“胸声を押しあげて怒鳴るような発声”
を発想されると困ります。
丁度いいのは幼児が泣き喚くときの声です。
子供の泣き声というのは兎に角デカく、割れるような音がしますがあれがSHVです。
誰でも子供の頃は頭声やSHVを使えたんですね。
SHVを取り戻すと実感しますが、
大きい声でアピールするのにこれ程都合のいい声は他にありません。
ですがあんなうるさい声 日常生活では全く使いませんから忘れてしまうんです。
女性の場合、声門を強く閉じる習慣がなくなってしまうためSHVが失われてしまいます。
(それでも男性に比べれば簡単に取り戻せます。)
男性の殆どと一部の女性は
胸声(すなわち声帯内筋による閉鎖)だけに頼る習慣ができるために
頭声、SHVともに出し方を忘れてしまうわけです。
(これを取り戻すのには大体二年程度の訓練がいるという、
ベルカント一派による記述を見たことがあります。)
SHVを“完全に”取り戻すには、、、
内筋による十分な閉鎖(胸声由来)
声帯後部の閉鎖(頭声由来)
声帯の適度な伸展(弱頭声、芯のないファルセットに由来)
この三つの要素が必要です。
ですが全て揃うまでSHVを練習するべきでないかというとそれは違います。
SHVも(その人その時の技量にあわせて)少しずつ練習するべきで、
それによっても上記の三要素が補強されていく と考える方が無難です。
これはVTの基本的な考えかたでもあります。
* トレーニングにおいて扱う声種は多い方がいい。
ということですね。
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振動部削減とshortening
「高い声で歌う本」の著者 高田三郎氏は、
チェストボイスからミドルボイス、ヘッドボイスと
声種が変わるにつれて削減していくと考えている(いた?)ようですが
これははっきりいって間違いです。
氏は著書で仮説仮説といってるとこからも伺えるように
あまり理学的な話に詳しくないようなので無理もありませんが/。
特にヘッド(頭声)は声帯振動の画像が数多く存在しますので
誰でも視覚的に確認できますが、振動部削減は見られません。
また、ミドルはチェストとヘッドの中庸の振動状態をさす場合が多いですから
やはり削減しません。
逆に、削減した声をヘッドと定義付けて呼ぶ流儀もありますが
高田氏の声や指導法を見るとそういうタイプではないでしょうね。
高田氏が翻訳している「ハリウッドスタイル」においては、
原著者ロジャーラブがいう「ジッパーを閉じる」と言う比喩的説明が
高田氏のいう「削減」と同じだと解説していますが、これも正確には
「ジッパー = 削減」
ではなくて、
「ジッパー = 高田氏の削減に対する解釈」
というだけです。
ロジャーラブがジッパー(を閉じるイメージで、高音に移るときに声門閉鎖を強調する)
といっているのは所謂shorteningとかdampingといわれるもので
ブレイクを隠す手法の一つです。
ちなみに米国のトレーナにはこの説明をする人が多いです。
簡単に言うと、、
声帯後部をきっちり閉じることで内筋の寄与を相対的に減らし、
頭声区と胸声区の繋がりを良くするというものです。
彼らの言うミドルボイスは音域的には、古典でいうパッサージオと大体同じで、
(他流派ではミドルというとパッサージオより下を指すことも多いです)
フランジリンボイスとも呼ばれ、声帯伸展が強く、金属的ともいわれる音色です。
「ハリウッド…」の説明図でもわかりますが shoteningでイメージする声門閉鎖は
(本来の)振動部削減とは逆方向です。
振動部削減は声帯後部を閉じて前半部分だけ振動させるわけですが、
shoteningは声帯を前方から閉じていって後半部分のみを振動させるという
説明が多いです。
* 振動部削減とshorteningは全く別なものです。
(ちなみにですが、これらの指導法で実際に声帯の一部が閉じることは殆ど無く、
あくまでイメージで、ある種の方便です。
その方便であることに気づいていない指導者が多いのはちょっと問題ですが。
実際に削減する指導法はshorteningとは似て非なるものです。
また、shorteningとdampingという言葉自体も
音声生理学用語の誤用であることが知られています。
本来のshorteningは、”低い声を出すときに声帯の全長が短縮する”ことですし、
dampingは振動体(つまり声帯)の減衰のことです。
ただ、もし「shortening」ではなく「shorting」だったなら
振動部削減を指すのに都合いいかもしれません。)
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超頭声獲得法
SHVを取り戻すために意識することは
「喉が詰まったところでさらに息を流す」
ことです。
喉が詰まるときというのは大概、喉頭が上がって閉鎖が強くなり
息の通り道が減って声を出せなくなるんですが
そこで腹圧を駆けて少々無理やりに音を出します。
腹圧を駆けすぎると脳圧も高まります、
あまりやりすぎると偏頭痛が出たりするので注意してください。
最初のうちは一日に数回試すくらいで十分です。
喉を詰める(厳密には声門を強く閉じる)には
高い音に移る方法の他に胸郭固定を利用する方法があります。
胸郭固定(この言い方はあまり一般的ではないだろうなー、汗)というのは
重いものを持ち上げる時に息を止めるあれです。
ただ、胸郭固定のための閉鎖は仮声帯の閉鎖も加わるのでそこから声を出すのは
少し難しいかもしれません。
(
声門が閉じて息が自由には流れない状態を保って、お腹の力で息を押し出します。
呼吸法が未熟ですと息を押そうとしたときに
胸郭や喉に更に力が加わってしまうため上手くいきません。
お腹以外の場所は力の入り具合が変わらないように息を吐けなければなりません。
(こういうところが、呼吸の重要性に気づくきっかけだと思います。)
)
新しい声(というより音ですね最初は)を試す時も音量は最小限のもので十分です。
吐き出す息の量もほんの僅かでいい。
叫ぶように出した方が上手くいく人もいますが、
練習方としてはやはり小さい声でいいです。
鼻歌交じりくらいで。
とりあえず音が出るようになったら後はトライアンドエラーです。
無駄な力を抜いて出せるように、
言葉が乗るように、
不要な雑音が減るように、
更に小さい声で出せるように
音域が広がるように、
etc...
この辺りは裏声や頭声の開発と同じです。勿論他の声区との融合も図っていくべきです。
ただSHV特有の問題として最初のうちはどうしても腹圧をかけなければならないため
量をこなすのは禁物です。
(裏声の練習でもそうですが最初のうちはどうしても無理が多いため
音声障害のリスクが高いですね。
その辺りのさじ加減ができない人は残念ですが自己訓練は向かないですね。)
最初は口を大きく開いた方が出しやすいかもしれませんが
慣れてきたらハミングでもやってみましょう。
上達すると普通の裏声と同じ感覚で歌い続けられるようになります。
どこかに力をこめたりする必要も最終的にはなくなります。
また、SHVにはさらに高次モードがあります。
一番下のモードが大体裏声の最高音付近で出やすいですが更に一オクターブ上
(ハイポジションと呼んでる人がいたなー)、更にその上にもあります。
これら上位モードの音域では、音は笛や悲鳴のようになって母音はのりません
(これは聴覚上の問題で、上手い下手は関係ありません。)。
ホイッスルとかフラジオレットというと
これらの高次モードのことを指すことが多いです。
ソプラノの最高音をきっちり出せる人は下のSHVは恐らく出せています。
そういう人はホイッスルも多少扱える場合が多いです。
・shorteningでは息を引き、息漏れを減らすよう教えますがSHVは逆です。
高田氏やロジャーラブのミドルボイス(=フランジリンボイスですが、)よりも
ミックスボイス(voix mixte)の延長と捉えたほうが無難です。
(息を引くとどうしても声帯の伸展と後部の閉鎖が強めになるため
SHVには移りにくくなります)
ただし高田氏推奨のエッジボイスはSHV獲得に有効です。
エッジボイスは声帯感覚(声門の閉じ具合を少しずつ調整する感覚)を磨くのに最適で、
声帯感覚を磨くことは声区開発を安全に進めることに繋がります。
このエッジボイスも最小限界の音量で行ってください。
最後にもう一つ、、、
これはSHVと他声区を繋げるのにも有効ですが
呼気を、兎に角鼻から出す、ということです。
鼻腔への入り口を塞ぐ(口蓋帆を上げる)と反射的に声帯後部が閉じやすくなります。
これはフランジリンボイス(ロジャーのミドル)
には都合がいいですがSHVでは邪魔になります。
他の声区もですが、息を鼻に抜く発声は欠かせません。(了)
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次回は「人声の音域」についてお話します。
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ボイトレ嘘八百はお休みです。
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