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2008/09/29

もろずみ総研メールマガジン 第167号

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 もろずみ総研メールマガジン 第167号 ======================== 2008/09/29
 
 【新車・試乗分析】 ニッポンのミニバンをもっと良質な移動空間に
  ▽9回シリーズ 最終回
 
 ◆実地検証 スバル・エクシーガ◆
 
  延々と続いている「ニッポンのミニバン/多座席乗用車」論ですが、最後
 にもう1車、このジャンルに今年現れたニューフェイスに触れておきましょ
 う。スバル・エクシーガ。
 
  消費意欲の停滞(減退?)が続く日本市場において、富士重工/スバルと
 しても「売れる(売れそうな)タマ」が欲しい。しかし「背高箱」のミニバ
 ンとスバルのイメージはまだまだ離れている(とは限らないのですが)し、
 現用プラットホームで空間利用最大型の箱空間パッケージを組むのはやはり
 ちょっと難しい。
 
  背高箱空間のクルマは、重くなるのはもちろん、重心位置も、ロールやピ
 ッチングを生む偶力(モーメント)も格段に大きくなる。その重量や力を受
 け止め、しかもタイヤと車体の位置関係が大きく動く中で、タイヤと路面の
 接地状態を最適に保つ範囲を広く取った足まわりが、まず必要になります。
 
  同時に、四角くて開口部の大きな“箱”は、剛性が取りにくい。それをよ
 く考え、さらに路面とタイヤがぶつかるショックが伝わる床から柱に至る骨
 格を、かなりしっかり組んでおかないと、ブルブル、ガタガタする振動や音
 が増えるのはもちろん、日常的なライン・コントロールの中でもふらつきが
 増えるなど、色々な弱点が現れます。現実に、上級ミニバンとして企画され
 ながら、そうした動質の弱点を抱えたクルマは少なくないわけで。
 
  スバルとしては、乗用車ベースのワゴン系車体をもう少し拡張する形で多
 座席化するのが定石。この判断は理解できます。北米市場には大型(現地で
 はレギュラーサイズ)SUVとして3列目のジャンプシートを組み込める(オ
 プション)トライベッカを2005年から投入しています。しかし日本市場では
 いささか大きすぎて、量販は望めない。そこで現用インプレッサ/フォレス
 ターと共通の“プラットホーム”を使って、2+1列シートのワゴンを開発
 した。これがエクシーガ。
 
  インプレッサ/フォレスターのリニューアルに向けて、いわゆる技術企画
 が動き出した時から、こうした多列シートワゴンを派生させることは想定し
 ていたそうです。レガシィ系よりも少し素性が良いリア・サスペンションの
 設計などに、その考え方が現れているということでしょう。
 
  商品としては、ストリームが先鞭をつけ(それが良かったかどうか、今と
 なっては議論の余地がありますが)、ウィッシュが追従したジャンル。3列
 目はあくまでも「どうしても」という状況で短時間だけ人が座れればいい、
 という“+2”シートです。
 
  それはそれでいい、と考えるか、それとも重量(それも車両後端に近いと
 ころの)とコストを増やし、荷室スペースを削って組み込む居住エリア+シ
 ートなのだから、できるだけ実用性のあるものを、と考えるか。後者の好例
 としてはオペル・ザフィーラ(初代)を思い出します。GM傘下にあった一
 時期、スバルの販売網で「トラビック」として扱ったこともある欧州流の背
 高空間乗用車。
 
  あのクルマの優れた面を、スバルの商品企画部門は、技術部門は理解しな
 かったのかな…と残念に思いつつ。ストリーム起源の日本的“2+1列シー
 ト”ワゴンのバリエーションとしてチェックすれば、その3列目は身長170cm
 ぐらいまでなら何とか収まる。頭も天井に当たらず、膝を抱える形にすれば
 脚も何とか。これなら現行ストリームとウィッシュには確実に勝る。
 
  それよりも2列目のヒップポイント/シート座面がかなり高めにレイアウ
 トされているのが良い。も普通のセダン/ワゴン型の床面に対して、膝〜足
 が深く折れて自然な姿勢に収まるシーティング・レイアウトです。その尻/
 座面の下に3列目の足先が入る、という条件付けがあったからこうなった、
 というのも見てとれますが、でも結果が良ければ。
 
  もちろん3列目に座れてもシートベルトのフィッティングは十分とはいえ
 ず、さらに前の2列も肩側上のスルーアンカーの位置がちょっとズレている
 様子。このあたりはスタイリングとキャビン・レイアウトの検討の中でもう
 少し詰めておきたかったところです。この2列目シートなら前後スライドも
 ないので、スルーアンカーの上下調節はなくてもまぁ大丈夫でしょう。ただ
 日本ではドライバーズシートといえども、スルーアンカー調節の意味と使い
 方はほとんど理解されていない。我々の仕事仲間にしてもどうやらそういう
 人士が多数のようで、新型車のメディア向け試乗会で私の前に乗った人が、
 ここもヘッドレストもまったく調節していないことがしばしば…。
 
  付け加えるなら、こうした「人と荷物が同居する空間」では、荷室との分
 離ネットやパーティション、荷物を固定する伸縮性ネットやその取付点など
 が、本来は不可欠です。しかしスバルは2代目レガシィ・ワゴンで導入した
 ものの、「ユーザーから『必要だ』という声がほとんどなく」それならばコ
 ストを少しでも削ったほうが…と、いつのまにか姿を消し、エクシーガにも
 特段の配慮はありません。当然のように、他の日本のメーカーもまったくそ
 の必要性を感じていないようです。欧州勢は最近さらに進化しているという
 のに。
 
  そんなエクシーガですが、現行モデル(国産車)同士の“横比較”であれ
 ば、走っても不快感はいちばん少ない。とくに自然吸気エンジン仕様のフッ
 トワークが素直。
 
  路面の凹凸を軽く踏むようなところから脚がスッと動き、向きを変え踏ん
 張って旋回へ、という一連の動きのリズム感も良い。電動パワーステアリン
 グながら、まずまず違和感を消すところまで仕上げてあります。
 
  それに対してエンジンは、ちょっと重い図体に対して、普通にスッと押し
 てほしいところの力感が薄いけれども、それは日本車に共通する弱点。
 
  それならターボチャージャーを付けると力感が増すか。ボルボが巧みな、
 軽く過給して常用域から力の厚みを作る、といういわゆる“ライトプレッシ
 ャー・ターボ”を期待したいところですが、やっぱり踏み込んでエンジンが
 反応した先でないと力が増してこない。そこに踏み込むと燃料消費も急に増
 える、という日本的特質。最近のスバルは、ATのトルクコンバーター・ロ
 ックアップ領域を広げているのは、当然の改良ですが…。
 
  パワーパッケージの設計面と制御面、マン=マシン系としての制御性など
 の飛躍的改善は、ここでもやっぱり急務でしょう。駆動力伝達からステアリ
 ングの手応えまで幅広いところに悪影響を生んでいる、エンジン・マウント
 の全面刷新とともに。
 
  でも、我々が長年体験し、いつもスバルに期待するフットワークのリズム
 感と安心感、動質の最後の“味のまとめ”が「うん、これなら」というとこ
 ろまで仕上がっていたのに、ちょっと安心しました。走行実験の担当者は若
 手なのですが、やっぱりスバルの「人的資源」は継承されているのだなぁ、
 と。
 
  逆に、商品企画や販売、技術畑など色々なところから、料理人の味のまと
 めにあれこれ異音をはさむほど、スバルならではの資質が現出しにくくなる。
 レガシィやインプレッサなどの“主力商品”の状態から見ると、どうやらそ
 のようです。
 
  そういえばエクシーガの全面グラスルーフも、ショールームでのアピール
 ポイントにはなるかもしれませんが、車体の骨格剛性が落ち、もともと難し
 いワゴン・ボディの車室内空気の共振やこもり音がさらに増え、ガラスの重
 さで重心が上がり…と、じつは難しいことだらけ。せめてBピラーから連続
 して車体中央部を1周する“骨”を入れておけば…。
 (両角岳彦)
 
 
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 ★☆ 次号予告 ☆★
 
 というわけで9回にわたってお届けしてきた「ニッポンのミニバン/多座席
 乗用車」論ですが、とりあえず今回で一端区切りとします。さて次なるテー
 マは……。(千)
 
 つづきは次号(配信予定 9月30日〜10月11日 火〜土曜日)
 
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