もろずみ総研メールマガジン 第165号
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もろずみ総研メールマガジン 第165号 ======================== 2008/09/24
【新車・試乗分析】 ニッポンのミニバンをもっと良質な移動空間に
▽9回シリーズに変更 7/9
◆実地検証 マツダ・ビアンテ編 その2◆
アメリカの金融不安が、いよいよ5大証券会社の存続にまで拡大。リーマ
ン・ブラザーズの経営破綻が引き金を引いた形で世界の経済界が揺れていま
す。この件、サブプライム問題、つまり返済能力が限定された消費者向けロ
ーンの証券化、その破綻に端を発する…というのはごく表面的な話でしかな
く、その奥にあるのは、アメリカ合衆国とその経済システムが推し進めてき
た「原理資本主義」が限界に直面している…という状況だと受け取るべきで
しょう。
これについては、このメールマガジンでも何度か書いてきましたし、話を
始めてしまうとそれこそ長くなるので、ここまで進めてきた(遅々としてい
ますが…(笑))もろずみ的「ニッポンのミニバン」論に、一応のケリをつ
けてから改めて、ということにしましょう。
ついでに、ちょうどこの9月は『GM(ゼネラルモータース)発足百周年』
とのことで、アメリカ・デトロイトを中心に大々的なイベントが行なわれて
います。しかし、その歴史もまた一気に危機に瀕している。フォードが、そ
してGMが、つまりは自動車という巨大産業を量と資金の両面で牽引してきた
デトロイト勢が、自動車の明日を、極論すれば今日をも創れなくなってしま
おうとしている。日本勢が歩いてきた/いる道も、その危機に向かうレミン
グの行進…か?
と、この議論もまた次にしましょう。
いずれにしても、今回のお話は前回、マツダ・ビアンテを走らせると…と
書いたところから続けないといけないわけで。
そのビアンテ、さぁ動かそう、対話しようとしたその瞬間から「?」と感
じることがひとつ。ステアリングホイールが小さい!
とかく、ステアリングホイールの径を小さくすると「スポーティ」という
イメージがあるのかもしれません。しかしそれぞれのクルマが持つ空間とし
ての大きさ、塊としての質量に対して、それを適切なリズムで操るために
「ちょうどよい」手具のサイズというものがあるのです。もちろんそこに伝
わる「手応え」も、そして両者のバランスも大事なのですが。
ステアリングホイールが大径ならば、軸を回す腕が長くなる。イコール、
タイヤからの反力が大きいなら、半径を大きくすれば操作に必要な力を軽く
できる。同じ動きに対して回す量、つまり回転角と周長=手が動く量は増え
るけれども。逆にステアリング操作力を軽くすれば、径は小さくてもいい。
…と考えがちですが、じつはそう簡単ではありません。
ビアンテのように大きめ箱空間で、しかも高い床の上に数人が座っている
。そういうクルマの場合、まずはその人々にとって自然な動きでリラックス
して移動ができるように、柔らかくゆったりとしたリズムで走りらせたい。
道を走る中で間断なく繰り返される小さなラインの修正などで、キュッと横
移動が出てフラッとロールし、頭と上体が揺れる、という動きが繰り返され
るのは、乗せられている人々にとっては不快。それが続くとクルマ酔いも起
こしやすい。
となるとドライバーは、ステアリングを握る手を動かしすぎないこと。必
要なだけ、柔らかく動かして止め、クルマの反応を引き出す。これが基本。
もちろん足も、アクセルをガバッと踏んでパッと戻す…、ブレーキは適当に
踏んでおいて途中から踏み増す/戻す…といった雑な動きは、前後方向の加
速度/減速度の変動を引き起し、さらに背高空間の場合はピッチングも生じ
やすいので、同乗者にとっての「乱れ」を増やします。
手足を柔らかく丁寧に動かし、できるだけ小さい操作で必要な動きを作っ
てゆく。そうイメージして運転しようとした時、ビアンテのステアリングホ
イールは小さすぎる。私でも、手が動きすぎないように意識して、とくに切
り込む/戻す動きをどこでどう収めるかのデリカシーのレベルを上げないと、
フラッとした挙動が出てしまいそうになる。ということは、一般のドライバ
ーにとっては柔らかいリズムで走らせるのが難しい、はずです。
自分を包む空間が、後方に大きく高く広がっていて、重さもある。それを
視覚で、三半規管で、そして手の動きに対する反応で、と様々に感じ取って
自然に手足を動かせば、自然に「良い」動きが組み立てられる。それが良い
クルマであり、またマツダが今アピールしている、彼ら自身の“DNA”に育
てようとしている“ZOOM-ZOOM”(ワクワクする感覚)が、ドライバーだけ
のものではなく、クルマという一つの空間の中で移動体験を“共有”する人
々全員にとっての「良い走り」「楽しい移動」として実感されるクルマであ
るはず。
“ZOOM-ZOOM”は「ハンドルを動かせばパッと機敏に反応する」「アクセル
を踏めばビュッと出る」といった表層的な“俊敏さ”、ひとつ間違えば「過
敏な手具」のこと、と思ってはいけない。むしろ手足の柔らかく、小さな動
きまで正確に表現するクルマ、そして移動の愉しさを皆が共有できるクルマ
が、身体と脳に深く染み込む“ZOOM-ZOOM”を形づくるはず。「自分自身が
走っている」ことを実感できるからこそ、クルマは楽しい。マツダの人々も、
今はそこまで思いを深めてほしいと思うのです。
そう考えると、ステアリングの大きさはもちろん、そこに伝わる手応えも、
もっと吟味しておきたいし(こういうクルマだからこそ)、路面の凹凸を踏
んだ時に車室に直接的に伝わるショック、ガタガタッ、ドタッとくる振動も
もう少し角を取っておきたい。揺れのリズムもちょっとピッチが速いし。
さらに、せっかくの直噴、燃焼サイクル1回ごとにシリンダーに入る燃料
を正確に調量できる、ということはトルク(力)の出方を造ることができる
システムを持っているにも関わらず、全開領域に近づかないと力の実感が湧
いてこないエンジン。アクセルを戻して踏み直す度にトルクコンバーターを
ルーズに滑らせ、シフトダウンし…と雑な反応を繰り返すオートマチック・
トランスミッション。どちらも作り手側のイメージが、そして技術開発の基
本スタンスがいかにも「古い」!
素材としてはそれなりの資質を持ち、それがスペックだけではなく実感の
中にもチラホラと現れるだけに、ちょっともったいないな…と思います。前
回お話しした、キャビンとシートのレイアウト、そしてこの空間の中に乗っ
て移動する人々全員に対する緻密で実感を伴う配慮、それらも含めて、しっ
かり作り込めば、もっと良い移動空間になるのに。
ま、今日の日本のマーケットで買える「背高・箱空間乗用車」としては、
ノア/ヴォクシーよりはずっと、あるいはセレナよりもマトモな製品ではあ
ります。あくまで横比較ですが。しかし現状のベンチマーク、つまり同種の
移動空間として「このくらいの資質と仕上がりは必要でしょう」と私が考え
るクルマ、たとえばVWトゥーランと比べると、住み心地、衝突安全の基本、
そして走りまで、かなり見劣りすることは否定できません。
トゥーランは、ビッグ・マイナーチェンジ&TSI+DSG搭載の時に、がぜん
良くなりました。とくに動質は。力の実感とそのコントロール、さらに心地
よく走る状況はもちろん、タイヤの限界まで踏み込んで思い切り能力を引き
出す状況での懐の深さ、対話の愉しさまで含めたフットワークも。それもピ
ーク出力だけが増える(常用域は変わらない)125kW(170ps)のハイライン
よりも、103kW(140ps)のトレンドラインのほうが一段とバランスが良いの
です。
(つづく)
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★☆ 次号予告 ☆★
【新車・試乗分析】 ニッポンのミニバンをもっと良質な移動空間に
▽9回シリーズ 8/9
◆実地検証 ホンダ・フリード◆
『「ニッポンのミニバン」、すなわち「多列・多座席空間を持つ乗用車」の
話の、とりあえずの締めくくりに、もう少し小さな空間のクルマたちの新し
いところにも触れておきましょう。』
つづきは次号(配信予定 9月26日 金曜日)
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