もろずみ総研メールマガジン 第158号
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もろずみ総研メールマガジン 第158号 ======================== 2008/08/01
【新車・試乗分析】 ゴルフTSIトレンドライン ▽単発企画
◆ゴルフTSI(シングルチャージ)+7速DSGの"実力"◆
毎年夏恒例の「鳥人間コンテスト」の競技審査員として、盛夏の琵琶湖ま
で行ってきました。今年も参加者がレベルの違いはあってもそれぞれに精い
っぱい、自分たちの手で物を造り、10mの高さから“飛ぶ”。そこに込めら
れた思いの強さは機体審査の中でもヒシヒシと伝わってきて、とくに若い人
たちの真剣さと吸収力は、ニッポンのモノづくりの将来も不安ばかりじゃな
いな、と楽しく、心強く過ごしてきました。彦根市・松原水泳場全体が興奮
の渦に包まれた 新記録が生まれたこともあり…。(ここから先は9月15日の
TV放送にてご覧ください。)
せっかくの機会なので、長駆(といっても往復900km余ですが)出かけて
みて真価を確かめたい、というクルマを引っ張り出して…というのも、ここ
何年か私の夏始まりの恒例になっています。今年、その相手に選んだのはゴ
ルフTSIトレンドライン。
エンジン本体の排気量を縮小して機械的な損失を減らし、過給(吸入空気
を加圧)することで「力」を確保する。このコンセプトも1.4Lの直列4気
筒ユニットも先行したTSIユニットと共通。でも低速・低負荷域では吸入す
る空気をエンジン出力軸から直接駆動するスーパーチャージャー(機械式過
給機)で供給し、負荷が上がって排気ガス流量が増えてきたところでターボ
チャージャー(排気タービン駆動過給機)に移行するという“2ステージ過
給”ではなく、非常に小さいターボチャージャー1基だけに簡略化。
これはまずフルパワーを2ステージ過給仕様の103/125kWに対して、「必
要十分」な90kWに設定することで過給、つまり吸入空気を圧縮する仕事も減
らし、タービンサイズが小さくでき、すると回転上昇=過給立ち上がりの応
答が速くなるので、スーパーチャージャーなしでも低速域から力が出てくる
…というロジックによるものです。
この90kW仕様TSIユニットに、デュアル・クラッチ方式に先鞭をつけたト
ランスミッション“DSG”の、これまた論理的進化型である乾式単板クラッ
チ2連+7速ギアボックスという、最新アイテムを組み合わせる。ちなみに
従来のDSGは6速MTメカニズム+湿式多板クラッチの組み合わせです。湿式
多板クラッチは「切れて」いる時にも多少の“引きずり”があり、それが伝
達効率をほんの何%か下げる。ここは乾式クラッチのほうが「切れ」が良い。
変速システム全体を作動させる油圧も、第1世代ではトランスミッション内
部にオイルポンプを組み込んで回していたのを、必要なときだけ油圧を作る
電動ポンプに変更。すべてにおいて「伝達効率」をさらに高めようという技
術進化を織り込んだトランスミッションなのです。
第1世代と比べると、もともと90%近くあった常用域の伝達効率を3〜4%
高めた、そうです。常用する速度・負荷領域の伝達効率が70%程度の摩擦伝
達式CVT、トルクコンバーターをロックアップしても80%を越えれば「まぁ
悪くないのでは…」、ロックアップしていない状態の伝達効率となると「悪
夢に近い」という遊星歯車式ATの現状などと比べれば、ずいぶん次元の高い
話ではあります。もっとも「ATで常用域の伝達効率90%超を実現します!」
と明言する技術者が日本にも現れたのは心強いかぎりですが。
とまぁ、スペックを読み解くかぎり「これはまたなかなかの…」というTS
Iシングルチャージ+7速DSGですが、やっぱりクルマづくりはそう簡単じゃ
ない(笑)。まず常用速度域でジワッ〜スッとアクセルを踏み込んだ時、ツ
インチャージ仕様のような力の厚みはさすがにありません。たしかに過給の
応答は速いのですが、その手前に力の薄い(反応が弱い)ゾーンがちょっと
残る。でも7速だけあって、その変速比の幅は6速仕様と比べて20%以上ワ
イド。その分、1〜3速の減速比を大きくとって、エンジントルクの薄さを
ギア比でカバーする設定にしてあります。逆に7速は変速比を小さく、メー
ター指示100km/hでエンジンは2100rpmあたり。これは高速巡航の燃費に効く
はず。
この7速化は良いのですが、乾式クラッチはやはり「曖昧に(良い意味
で)」つなぐのが難しい。二つあるクラッチが同時に食いつく(インターロ
ック)状態が一瞬でも発生すると、クラッチかギアがダメージを負う可能性
も湿式より格段に大きいのです。そこで若干ではありますが、そしてとくに
低中速域のことではありますが、ギアを切り替える瞬間にフッと駆動が抜け
る一瞬が出たり、クラッチがつながる瞬間にキュッと押す動きが見えたり…。
ここ2年ほどのVWの湿式デュアル・クラッチ方式のDSGが、じつにみごとな
「変速品質」に進化しているのに比べると、ちょっと見劣りします。ただし
新車の状態で味見した2台はその傾向がはっきり出ていたのですが、今回、
積算走行距離6000kmて引き取ったテストカーでは、引っかかる「角」がずい
ぶん丸くなっていました。
そして、今回の報告のテーマである「実用燃費」は…。
東京から富士五湖を経て琵琶湖の東岸へ、そこからは名神から東名を直行
して都内へ。その総走行距離が距離計誤差(かなり小さい)を修正して937
km。これを無給油で走りきることができました。同じ給油所で、私自身が同
じようにタンク内部からの吹き返し状態を確かめながら満タンにした給油量
は、52.8L。ということは、このツーリングの総平均燃費17.75km/L。
この時、クルマのオンボードコンピューターは、平均燃費18.2km/L、平均
燃費72km/hという数値を表示していました。
いうまでもなく走った距離の9割ほどは高速道路で、そこでは周囲の流れ
の状況が許すかぎりメーター指示100km/hをできるだけ維持して走り続ける、
という前回のメールで推奨した走り方そのもの。高速道路の登り勾配や一般
道の発進・中間加速では、一気に力を出させないようにジワーッと駆動を強
めて必要な速度増加・維持をする、というデリカシー重視のアクセルワーク
をキープしました。それにしても、十分な空間を持ち車両重量が1.3トンあ
るゴルフの実用燃費として、この数値はなかなかのものじゃありませんか?
「普通の右足」で操ったとしても15〜16km/Lでは走れたはずですし。
ちなみに、大きな川をまたぐ長い橋の上で、つまりほとんど平坦な状況で
100km/h一定を保ちつつオンボードコンピューターを「瞬間燃費」表示にし
ていると、定地燃費としてはほぼ20km/L。少し力を増してもこれが愕然と落
ちないのも良いのですが、じつは今回の走行はほとんど日中、しかも猛暑の
中で外気温30〜36℃。つまりエアコンのコンプレッサーをフルに駆動してい
る状態がずっと続いていました。そこでエアコンをオフにしてみると、定地
燃費は3〜4km/Lも良くなることも確認できました。1.4Lの排気量を上手に
使ってこのあたりまでの一定速度維持ならば過給もほとんどかけずに力を作
っているだけに、エアコンの負荷はその仕事量分だけそのまま現れる、とい
う印象であり、数値です。
ということは、エアコンのコンプレッサーがほとんど稼働しない季節・気
候であれば、同じルートを同じように走って、燃料消費は15%ぐらいは少な
くなる。つまり平均燃費は20km/Lに届くことになります。
さらに市街地燃費のほうは、停車の頻度とアイドリングの時間、そして何
より加速のしかたで大きく変動するわけですが、私の加速センサー+右足の
“精度”ならば平均速度20km/hで12km/Lあたり。これもエアコンがフル稼働
している状態で、ですが。ここだけはプリウスのほうが少しアドバンテージ
あり。ただし真夏は冷房のためにアイドル・ストップしなくなるので、同じ
条件では14〜15km/Lが上限でしょう。
いずれにしても、ごく普通のゴルフが、これだけの燃費=CO2排出量性能
を持つクルマに仕立てられている。それを可能にする技術は、理屈も実際も
確かなものです。製品と技術を開発した人々は「ガソリン・エンジンでもデ
ィーゼルと同じ実用燃費で走る」ことをターゲットにしている。それがはっ
きり伝わってきます。大きさも空間設計もちょうど良く、ここへ来て動質全
般が熟成されてきているだけに、ユーザーにとっては実用車として優れた存
在。個人的には現状の仕上がりではまだ、ツインチャージ・103kW仕様のほ
うをチョイスしますが(笑)。それ以上に、日本の自動車メーカーの現状か
ら見ればじつに「恐るべき」存在。ハイブリッド動力という、ごく限られた
使用条件で燃費改善効果があるシステムで多少のリードを築いたとはいえ、
今この時に追い求めなければならない技術進化の全般を見渡せば、とても安
閑としていられる状況ではない。それを実感させる存在であるはずです。
(両角岳彦)
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★☆ 次号予告 ☆★
いつもより随分と長い原稿となってしまいましたが、所長の「ぜひ1回で」
という熱意のもと単発企画としてお送りしました。ご容赦のほどを。さて、
予告していた「ニッポンのミニバン論」は、次号からお送りします。しばし
お待ちください。
つづきは次号(配信予定 8月4日〜9日 月〜土曜日)
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編集長:もろずみ総合研究所所長 両角岳彦
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