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2008/07/12

もろずみ総研メールマガジン 第154号

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 もろずみ総研メールマガジン 第154号 ======================== 2008/07/12
 
 【新車・試乗分析】 レガシィ STI - S402 ▽2回シリーズ 最終回
 
 ◆「両角さん、1台いかがですか?(笑)」◆
 
  2.5Lターボ過給ユニットの専用版を作り、足回り、そしてブレーキなども
 スペシャルパーツを組み込んでSTi(スバルテクニカインターナショナル)
 が仕立てた限定モデルの“S402”。前回に続いてそのセダン(B4)と対話
 してみたお話です。
 
  現行レガシィ“F型”で何より気になった、ステアリングからタイヤまで
 のクニャッとした頼りない曖昧さも、S402ではステアリング操作力が全体に
 重目になっていて、それに合わせて手を動かし、止めれば、自分がイメージ
 したところへフロントタイヤを導くのはやりやすい。このあたり、ステアリ
 ング機構、例えば油圧アシストの特性に手をつける以前に、ダンパーの味付
 けや前輪と操舵系のジオメトリー(幾何学)でかなり変わるはずです。
 
  そのダンパーの躾け、つまり何気ない揺れのリズム、舵を動かした瞬間の
 ロールの動きなども、かつての初代レガシィRSを彷彿とさせる落ち着きがあ
 ります。レガシィ“F型”各車の、凹凸を踏んだショックを柔らかくしよう
 として、でも押さえが効いていない感じの細かな揺れが残ったり、ロールの
 初期が突っ張り気味なのとはずいぶん違って、自然な感じで伸縮し、でもグ
 ッと踏ん張る瞬間の筋肉の強さも持っている脚、という感覚です。
 
  とはいえ路面の細かい凹凸を踏む感触、そして舵をねじる手応えにクニャ
 ッとする動きが入りこむのが気になり、「?」とタイヤの指定内圧を確認し
 たら前2.2kg/cm2、後2.0kg/cm2。ブリヂストンの超偏平タイヤの癖と車重を
 考えるとちょっと低めじゃないかな、と前後0.2kg/cm2高めたら、舵の手応
 えはしっかり感が増し、凹凸の突き上げはちょっと強くなったけれど、揺れ
 のリズムはさらにすっきりしました。
 
  しかしこれは自動車雑誌の取材に数千km付き合わされたタイヤがけっこう
 磨耗していて、相対的にサイドウォール側の剛性が低くなっていた、という
 ことが影響しているかもしれません。もともとBSのタイヤは骨格の中で柔ら
 かく変形するゾーンが狭く、内圧に対し、また磨耗に対してかなり敏感、か
 つそのスウィートスポット(0.05kg/cm2違うともう合わない…ということも
 よくあります)を外すとけっこう癖が強い、という傾向があります。
 
  そこで新品状態を想定すると、タイヤそのものが路面の凹凸を柔らかく踏
 み、舵を動かす/止める動きに対してもケースの“張り”がちょうどよくな
 るかと。あるいは私個人のクルマだったら、ミシュランPS2に履き替えてみ
 るでしょう。
 
  つまりS402は、ただエンジンや足回りやブレーキに「高性能」を標榜する
 パーツを組み込み、強引なドライビングに対して強い刺激を現すだけの、い
 わゆる「チューンドカー」ではない。むしろ様々な要素によって得られる高
 いパフォーマンスを、ごく弱い力、小さな動きから上限までずっと、人間が
 実感をもって操れるものにしよう。そしてこうしたクルマのより多くの資金
 を投入するオーナーにとって、日常の中でも「大人の楽しみ」を実感させる
 ものに。そういう造り手のイメージがダイレクトに伝わってきます。
 
  強いて言えば、エンジンの力の“質”はたしかに日本車としては出色の仕
 上がりですが、最新レベルの「世界最良」と比較するとまだもう少し。そし
 て現状のスバル“シンメトリカルAWD”が持ついくつかの基本的な弱点は、
 対話の中でどうしても顔を出します。その最たるものがステアリングからタ
 イヤまでの中にある腰の弱いたわみ感+機械精度の低さ。それも含めて微妙
 なところですが、手に、足に、腰に伝わる様々な動きの中にもう少し「骨太」
 な感触があれば、さらに上質さは増したでしょう。
 
  でも最近、欧州上級ブランド・メーカーかちが次々に送り出してくる「ハ
 イパフォーマンス・モデル」たちが、とても扱えないほどの出力と、強烈な
 運動能力を持ちながら、走りの資質をどう仕上げるか、造り手側のイメージ
 が“迷走”し、“混乱”し、操る者との一体感や「ドライビングというスポ
 ーツ」の上質さを失っていることを考えると、このS402はなかなかのもので
 す。そのあたり、富士重工の人々、とくに製品&商品の企画と開発に携わる
 人々が実感してくれるといいのですが。
 
  スバルの技術者の方々に「まだ限定数に残りがあるので、(全天候スポー
 ツカーこそがリアル・スポーツと主張している)両角さん、1台いかがです
 か?(笑)」と言われたけれど、ステアリング機構やエンジンマウントなど
 基本骨格のリニューアル、そしていまや古典的な手動マニュアル・トランス
 ミッションではなく、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)が
 どうしても欲しい…。「残念ながら…(苦笑)」とお断りして帰って来まし
 た。
 
  それにしても、同じ素材から出発して、細かい素材に投じたコストと手間
 は少し違うにせよ、同じように“質の良さ”や“満足感・充実感”などを狙
 って料理を作っても、料理人によってスペックには現れないレシピのデティ
 ールが違い、そして味つけはもちろん、歯ごたえから舌ざわりまで別の一品
 になるのです。だから、クルマづくりは難しい。おもしろい。
 (両角岳彦)
 
 
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