もろずみ総研メールマガジン 第150号
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もろずみ総研メールマガジン 第150号 ======================== 2008/06/19
◆キャリーオーバーが前提の改良手法にもいろいろあるハズなのだが◆
また新しい出版企画が動き出していて、金属素材やカーボンファイバーな
どの素材までさかのぼって取材に回っています。さて、何ができるかお楽し
みに。
そしてこの前の週末はル・マン24時間…には残念ながら足を運べなかった
のでネット観戦しつつ――-主催者のACO(フランス西部自動車クラブ)のウ
ェブサイトには刻々の順位、状況やニュースなどがほぼリアルタイムでアッ
プロードされていました――富士スピードウェイでスーパー耐久の場内実況
のお手伝い。
と、あれやこれやでまたこのメルマガが“不定期配信”になってしまって
いますが…。
ちょっと遅ればせながら、話題に取り上げるのはクラウン。すでに街中で
姿を見かけることも少なくはありません。でも、意外なほど目立たない。と
いうよりもフロントマスクやリアコンビネーションランプなどのディテール
に目をやらないと先代と区別がつきにくい。それは全体のプロポーションや
面の造形表現などが大きく変わっていないから、なのですが。
もちろん、前のモデルの評判が良く、その印象がユーザーに、あるいはマ
ーケットに浸透している場合は「(明らかに)変わった」とは見えないデザ
インに仕上げる。これは基本です。しかしそれは「移動空間としての進化」
をしっかり組み立てた上で。これもまた、自動車という工業製品の基本中の
基本。私はそう考えていますし、そうだったクルマ、そうでなかったクルマ
たちが何を残したか、残せなかったかもずっと見てきました。
今、トヨタはいわゆる「プラットホーム」、クルマの“下半身”ともいえ
る骨格部分や足回りの基本設計と、そこに使う構成要素を共用化しつつ、あ
るプラットホームを作ったら製品としては2世代続けて使う、というローテ
ーションを採っています。今回のクラウンのフルモデルチェンジは、この面
では「プラットホームはキャリーオーバー(前作継承)」の段取りとなりま
す。
ちなみにその現行トヨタFR系の下半身としては、小さめ/大きめの2種類
に分けているはずですが、それは骨格設計についてであって、エンジンやト
ランスミッション、サスペンションやステアリングについては設計だけでな
く部品としてもかなり共用化してきています。レクサスLSだけは、骨格、足
回りともにそこから一歩踏み出しているので、私の見方では、トヨタFR乗用
車系全体としてプラットホームは2.5種類ある、ということになるでしょう
か。
その「キャリーオーバー」でのモデルチェンジが前提だったとしても、そ
れは逆に機構面以外を考える良い機会にできたはずです。まず人が座って移
動する。そのための人間の姿勢とそれを包む空間をもう一度考える。そして
各部の構成要素、たとえばパワーパッケージやステアリングやダンパーや…
そういう機構部品の基本設計は変えない中でも、特性や機能などを「もっと
良いものにするには」と様々に考え、改良を加える。
こうした空間の進化や動質の改良・熟成を比較的大きなステップで実現す
るのに、モデルチェンジ(日本的スケジューリングでの)は、良い機会なの
です。もちろんコスト管理も大切ですが「同じ物でさらに削る」のではなく
「同じコストで新しく」という方向も、モデルチェンジならば採りやすい。
しかし今回のクラウン、まずキャビンに収まって変化を感じたのは、リア
シートのシートバックが少し起きて、やっと腰から上の姿勢保持ができる、
その許容ぎりぎりには入ってきたかな…というところぐらい。前席では頭〜
肩を包む空間の組み立て方、寸法設定は今のトヨタ車の定型そのもので、良
い姿勢で収まろうとすると圧迫感が残ります。
走ると…。先代はこのプラットホームの初回作で、それゆえに試行錯誤と
練り込みを重ねてきたことが伝わってはきました。とくに電動パワーステア
リングと高圧ガス封入モノチューブ・ダンパーという、重量があって上質な
走りを求められるクルマには不向きな技術要素をなぜか採用した。それを何
とか違和感のない感触に、と腐心したのだろうな、と。
それがこの「新型」は、その後に出たトヨタFR乗用車(もちろんレクサス
を含む)の平均値にあっさりまとめた、という感触と印象だけが残る走りで
す。このプラットホームに「手慣れて」きたのも、その中で「今のトヨタ車
に共通の走りのまとめ」をしたのも伝わってきます。そうであっても細かい
特性、でもじつは乗る人、操る者にとって大事な動質のディテールにはこだ
わってほしかった。走っていれば外観は見えず、内装にも目を配らないまま、
身体に伝わる感触だけでマークXとの違いを語れるか…。難しい…。
たしかにアスリートの、とくに3.5は脚を多少なりとも締めてあるけれど、
突っ張り感が出て、タイヤも食いつきとたわみのバランスも良くない。ロイ
ヤル系は揺れ、舵の感触、そしてブレーキ、どれも「頼りない」。
エンジンは例によってアクセルペダルを踏み込んだ瞬間のピックアップだ
けが強調されているけれど力感を薄く、トランスミッションはトルクコンバ
ーターがズルーッと滑り、少し踏み込むだけでシフトダウンしてエンジンだ
けがまず「加速」する。まったく今までどおりのトヨタ流。
私としては、これまでのやり方の弱点・欠点を見直した形跡なく、今の、
そしてこれからのヒトとクルマの関係を考えた技術進化はさらになく、「古
色蒼然」という思いにとらわれたのでした。
かつてクラウンは、日本の“乗用車”の代名詞でした。だからこそ、トヨ
タの設計者が考え、ユーザーがそれを認めた「和風」の移動空間としてのス
タイルが、ある時期には変えられなくなっていました。生意気盛りの私が
「自動車としてもっと良い特性があるはず」と主張した時、当時のI主査が
「クラウンは、そうではないのです」と返されたのを、今でもよく覚えてい
ます。たとえばシートひとつとっても、若造としては「ホールドの良い立体
的なものを」と主張するのに対して、I主査は「クラウンは“良家の座敷に
あるお客様用の座布団”でないと」。
全てに同意はしませんが、でもそういう「和」の上質な移動空間、だから
所有し続けたいというクルマはあっていい。今の私はそう思います。
あれからずいぶんの年月がすぎて、クラウンから上級・大きめのモデルが
マジェスタとして分離独立し、さらにレクサスという「上級ブランド」が併
置されて高額側に展開し、結局のところクラウンは、トヨタの製品総覧の中
で「マークXとマジェスタの間を埋める商品」になっている。それを、巨大
企業の組織の中に調和した仕事ぶりでまとめ上げれば、必然的にこういうク
ルマが生まれる、のかもしれません。でも私は、ちょっと寂しい…。
(つづく)
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★☆ 次号予告 ☆★
【新車・試乗分析】 レガシィ ▽5回シリーズ 最終回
さて日欧、比較してのマイナーチェンジ論も次回のレガシィ編で最終回とな
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ありません。スタッフ共々、がんばっていきます!(千)
つづきは次号(配信予定 6月20〜27日 1週間のうちのどこかで……)
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