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2007/07/12

舞台への扉・メジャーリーグ通信

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2007.7.12
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今日も音声メッセージをお届けできなくてゴメンナサイ!
お稽古始まるまで、お待ち下さいませ。
今回もどうか最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたしますm(_)m


さて、今回のメルマガは、「グリークス」について、です(^^*
前々回の6月28日号で、今秋上演の「野鴨」にご出演の高汐巴さん宛の
笹部からのお手紙を紹介させていただきました。

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以前、9つのギリシャ悲劇を一つの物語として構成した、
9時間に及ぶ「グリークス(ギリシャ人)」という舞台を
上演したことがあります。
その壮大なドラマは、次のような問いかけから始まります。
「誰が一体悪いのか?」
その言葉は、そのドラマのテーマを集約しています。
誰のせいで、戦争は起きたのか?
略奪は、強姦は、殺戮は、誰のせいで起こったのか?
なぜ、人間は道を踏み誤るのか?
なぜ、人間は間違いを起こすのか?
なぜ、人間は罪を犯すのか?
オレステスは、自分が殺した母親の血で真っ赤に染まった手を眺めながら、
こう問いかけます。
「始まりは、美を夢見、真実を愛し、正義を為そうと、心に誓った、
一体なぜ、自分はこんなところにいるのか?」
悲劇というのは、神々が人間に施した巧妙な罠で、
神は人間に二つの道を示します。
人間はどちらの道を選ぶことも可能だが、どちらを選んでも、
後悔と腐敗が待ち受けている。
人間は真っ白なシーツを一枚与えられて、この世に登場する。
真っ白なシーツは、そのうちにドロドロに汚れ、
ズタズタに破け、見る影もない。
しかし、そのシーツを取り替えることは許されない。
退場まで、自分というシーツに包まって眠るしかないのだ。

さて、今回の「野鴨」です。
イプセンが「野鴨」という作品で、試みようとしていることが
あまりにもギリシャ悲劇と似ているのに驚かされます。
人間は生き続ける。
ここに登場する人間たちの心はすでに傷つき、
殆ど修理不可能なほど壊れてしまっています。
しかしギリシャ悲劇の登場人物たちが、廃墟と崩壊の中で光り輝くように、
誰もがその心の中に強烈な光を抱えています。
そしてギリシャ悲劇の中で、女性たちが燦然と光り輝いているように、
このドラマに登場する二人の女性は、素晴らしい光を放っています。
この二人の女性には、クリュタイムネストラやアンドロマケ、
ヘカベやエレクトラといった悲劇のヒロインたちの影があります。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

二人の女性とは、一人が、石田えりさん演じるギーナ。
そして、もう一人が、高汐巴さん演じるセルビー夫人、でしたね。

実は、次の7月5日号で、「グリークス」の企画書をご紹介しようと
思っていたのですが、E-BooKのコーナーがスタートして、みなさまから
たくさんのご感想をいただいたので、嬉しさのあまり、
すっかり忘れてしまったのです(笑い

ゴメンナサイ!!

今日、改めて、「グリークス」いきます(笑い


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「グリークス」上演企画書

演劇とは何か。
何故、人類は演劇を必要としたのか。
この9時間のドラマにはその答がある。
この舞台には退屈は一切ない。
どんな映画よりもスリルとサスペンスに満ちている。
そして観終った時、演劇とは何と偉大で素晴しい芸術かと、
強烈な衝撃と感動の体験と共に実感することだろう。
今回の「グリークス」の上演意図は、演劇への挑戦である。
演劇を通してどれだけのことが出来るのかという可能性への挑戦である。
劇場という場所で、9時間という時間を共に体験する。
民族の崩壊であり、家族の崩壊であり、個人の崩壊という三重のカタストロフィ。
ギリシャ悲劇とはカタストロフィとカタルシスのドラマである。
かつてギリシャ人たちは、演劇を通して、人間とは何か、
生きているということとは何かを考えた。
例えば、このドラマの終盤で、父親を殺した母親を姉と共に殺害した
オレステスはこのようにつぶやく。
「僕らが生まれたのは幸せになるためだ。その幸せはどこへ消えた? 
何が邪魔したんだ? どうして人間は悪に傾くのだろう?
 憎しみはどこから出て来るんだ? 小さい頃は、気高い物語に感動し、
大人になったら、気高いことをすると誓ったものだ。
自分自身が気高ければ、することなすこと気高くなると思っていた。
それが間違いだったのだ。僕らは行き先を知っているつもりだが、
必ず道に迷い、正しい道は二度と見つからない」
人間とは罪深いものであり、生きているということは罪を犯すこと、
生き続けるということはその罪の泥沼で足掻き続けること、
それが当時のギリシャ人の考えである。
そして罪を犯した人間は罰を受ける場所、それが演劇だった。
罪を犯し、罰を下されて人間は、その時始めて、裸の自分と向き合う。
ボロボロに傷つき、自分を繕ったり、飾りたてることすら出来ない、
世界に見捨てられた自分。
誰も顧みない、誰も愛さない。
その瞬間こそ最も激しく自分を抱きしめ、愛する瞬間でもあり、
もっとも美しい言葉がつむぎだされる瞬間でもある。
カタストロフィを通して、カタルシスにたどり着く。
つまり「グリークス」という9時間のドラマの体験を通して、私たちは道に迷い、
罪を犯し、世界中に見捨てられた孤独な自分に出会うのだ。
その自分をありったけの同情と憐びんで抱きしめること。
憎しみ、嫉妬し、間違いを犯す生き物、それが人間なのだ。
その人間をほんの一瞬慰め、癒す場所、それが演劇なのだ。
今の日本で考えうる最高のキャストとスタッフで、
世界最高の演劇を舞台化する。
あっという間の興奮と感動の9時間。
1999年という世紀末、「グリークス」を観たということが、
おそらくその時代を生きたという証になる、そんな舞台になるはずである。

「ストーリーと登場人物について」

グリークス」は10本のギリシャ劇によって構成されていて、
その10のエピソー ドはそれぞれが独立してはいるが、
お互いが強い関係性と連続性を持ち、
全体が一つ の大きな戦争を挟む17年間の物語となっている。

第一部 戦争
トロイアへ連れ去られたヘレネ(安寿ミラ)を奪回するためにギリシャ軍は
アウリスの港に集結、総大将アガメムノン(平幹二郎)は神の神託に基づいて、
自分の娘イピゲネイア(宮本裕子)を生贄にする。
妻クリュタイムネストラ(白石加代子)はそのために激しく夫を憎むようになる。
(『アウリスのイピゲネイア』)

トロイアにギリシャ軍が攻め込んで10年、戦線は膠着状態である。
ギリシャ軍の英雄で女神ティティス(南果歩)の息子アキレウス(田辺誠一)は
、トロイアで死ぬと予言されている。
一時、トロイアの女奴隷ブリセウス(久世星佳)を巡ってアガメムノンと争って、
戦線を離脱するが、再び戻って敵将ヘクトルを倒す。
(『アキレウス』)

トロイアは敗れ、男たちはことごとく殺され、略奪され、破壊されている。
そして女たちは全て奴隷とされ絡印を押される。
王妃ヘカベ(渡辺美佐子)はオディッセウスが、
ヘクトルの妻アンドロマケ(麻実れい)はネオプトレモスが、
そして王女カッサンドラ(中島朋子)はアガメムノンが
自分の情婦とするために引き取る。
(『トロイアの女たち』)


第二部 殺人

ヘカベは娘ポリクセネを生贄として殺され、友人である王ポリュメストルに
預けていた王子ポリュドロスも殺されてしまう。
ヘカベは自分の娘カッサンドラを情婦としているアガメムノンに頼み込み、
自分の最後の希望であった息子を殺したポリュメストルに復讐を果たす。
(『ヘカベ』)

アガメムノンは、戦利品であるカッサンドラを連れて帰国する。
クリュタイムネストラは自分の情夫アイギストスと図って、夫を殺害する。
(『アガメムノン』)

母親クリュタイムネストラに冷遇されているエレクトラ(寺島しのぶ)は、
父親の復讐を固く誓っている。彼女の頼みの綱は、
異国にいる弟のオレステス(尾上菊之助)である。
そして帰ってきたオレステスと母親を殺害する。
(『エレクトラ』)


第三部神々

トロイ戦争の原因とも言えるヘレネは、実はエジプトにいた。
トロイアに行ったのは幻影に過ぎなかった。
つまり戦争は神々の企みだったのだ。
そこへ夫であるメネラオスがやってくる。二人は何とかそこを脱出する。
(『ヘレネ』)

クリュタイムネストラ殺害の6日後。
復讐の女神につきまとわれ熱に犯されているオレステスをエレクトラが看病している。
そこへメネラオスとヘレネは帰国する。
民衆は母殺しの兄弟に死の宣告を下す。
オレステスとエレクトラはトロイ戦争の原因であるヘレネの殺害を決意する。
そこへアポロンが現われる。
(『オレステス』)

トロイ戦争が終って既に7年。
アンドロマケは自分の夫を殺したアキレウスの息子ネオプトレモスの奴隷にされ、
彼との間に子供を作っている。
その子供をネオプトレモスの妻であるヘルミオネは、
父親メネラオスの助けを借りて殺そうする。
そこにアキレウスの父親であるペレウスが現われ、助ける。
そしてアンドロマケとその息子に未来が託される。
(『アンドロマケ』)

トロイ戦争の生け贄にされたはずのイピゲネイアは地の果てタウリケで生きていた。
そして彼女はそこに漂流して流れ着いたギリシャ人を祭壇の生け贄する
巫女の仕事をしている。そこにオレステスとピュラデスがやってくる。
イピゲネイアは二人のうちの一人を助ける変わりに自分の弟オレステスに手紙を
渡してほしいと頼む。かくして姉と弟は17ぶりに再開する。神々の企みと人間に
下された罪と罰の壮大な物語が静かに大団円を迎える
(『タウリケのイピゲネイア』)


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

「グリークス」の話を聞いてから、
出版したい、そして、いつか、上演したい、そう願って十数年。。。

心にイメージの火がともって、
それを、思い続けて、
形にして。。。

思えば、この繰り返し、ですね。

「野鴨」のギーナとセルビー夫人。
クリュタイムネストラやアンドロマケ、
ヘカベやエレクトラといったギリシャ悲劇のヒロインたちに
届く事ができるでしょうか。


さぁ準備はよろしいですか。
ご一緒に舞台への扉をひらきましょう。
劇場でお待ちしています。


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