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2007/06/21

舞台への扉・メジャーリーグ通信

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2007.6.21

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なかなか音声メッセージをお届けできなくてゴメンナサイ!
お稽古が始まれば。。。。などと言い訳しちゃいます。
今日も、どうかお付き合いのほど、よろしくお願いいたしますm(_)m

さて、前回まで、笹部の演劇製作を始めた頃の企画書3本と
その総集編として、講演録をおとどけしてきました。

お楽しみいただけましたか?

今回は、より具体的に、演劇制作の現場を
お伝えしたいと思います。

笹部は、まず、上演台本をつくります。
次に、企画書。
そして、キャステイングが決まると、
その俳優さん宛に、お手紙を書きます。
で、この3つをお送りします。

興味を持っていただけたら、
マネージャーさんと会って話して、
さらに、俳優さんと会って話して。

今秋上演の「野鴨」
ギーナ役の石田えりさんへのお手紙を
ご紹介させて下さいね。


―――――――――――――――――――――――――


石田えり様


ご無沙汰しています。
今、イプセンの「野鴨」という芝居を企画しています。
この本はたまたま読んだのですが、読み終わって、
異様な興奮がありました。
一体、どんな物語なのかはよくわからない。
しかしその沼にはとてつもない怪物が棲んでいる、
そんな気がしたのです。
興奮の理由を探し求めて、今度は少し丁寧に読んでみました。
すると少しずつ、そこに生きている人間たちの陰影が見えて来ました。
とにかくイプセンというのはただものではないですね。
扉を開いても、開いても、実態はより曖昧になっていくのです。
特に、ぼくが興味を惹かれたのは、
ここに登場するギーナという女性です。
宮部みゆきに「火車」という小説がありましたが、
まさに彼女の日常こそこそ火の車です。
強大な矛盾を抱えながら、しかし彼女は決してジタバタしない。
考えても仕様のないことを考え、どんどんと自分を駄目にしていく
男たちの中で、彼女の存在こそ大いなる皮肉であり、批評なんでしょう。
翼を撃たれ飛べなくなってしまった野鴨、
それでも生き続けることを余儀なくされた野鴨、その野鴨に、
二重三重にも負債を背負い、火の車に乗って走り続ける、
この芝居の登場人物たちが重ねられています。
誰もが自分のイメージ通りの人生を生きている訳ではない。
むしろ強い心情や美意識を持った人間ほど、自分の思いと現実から
果てしなく遠く切り離された人生を背負わされ、
生きているのではないでしょうか。
二度と飛び立つことの出来ない人生。
しかし、ギブアップすることは出来ない。
まさにギーナはそんな野鴨です。
そしてもう一匹の野鴨が、彼女の娘です。
その娘が彼女の戦う、そして生きる理由です。
このドラマはギーナの叫び声で、ラストシーンを迎えます。
彼女は、クライマックスで、一体、どんな叫び声を上げるのか、
それがいわばこのドラマの目的地です。
そしてぼくにとって誰にその叫び声を上げさせたいのかと考えたとき、
石田えりに行き着きました。

今回の舞台のテーマは、絶望的な、果てしなき闘い
といえばいいでしょうか。
それはつまり、俳優自身にとってということでもあります。
ここでの登場人物は、追い詰められれば追い詰められるほど、
しつこく、しぶとくその本性を出していく。
人間というのは何と巨大なる嘘と欺瞞を抱えた
生き物なのだろうか。
嘘と欺瞞によって、愛と尊厳が守られ、
嘘と欺瞞が剥ぎ取られていくと、愛と尊厳はギシギシと
悲鳴を上げながら、より輝きを増していく。
そこには否応なく人間の本性がある。
そしてその姿は、滑稽でもあり、厳かでもある。
その状況が俳優自身の内面でも起きないと、
この舞台は意味がない。
俳優がゴールを目指して走り続ける。
そしてそのプロセスの中で、自分自身の感情も感覚も全開にして、
心の中のイメージをすべて燃やし尽くす。
それがこの舞台の作り出すカタルシスなのです。
そして、その火の車に、石田えりさんに乗って欲しいのです。

公演は、100人くらいの小さなスペースでの
一ヶ月公演を考えています。
大きな賭けですが、この公演が大きな話題となって、
広がっていく、そのことを考えてのことです。
ぼくは今、演劇はちょうど変わり目かなと考えています。
そろそろ野田秀樹や三谷幸喜や松尾スズキの時代から、
新しい世代が出てくる、その準備の時期のように思えるのです。
今回演出のタニノクロウは、
その次の時代を担う第一の候補だと思っています。

ぼくが今回やりたいのは、演劇というのは一体、
どれだけのことが出来るのかということです。
この舞台は、僕自身にとっても新たなる出発だと考えています。

笹部博司



――――――――――――――――――――――――――



えりさんは、このお手紙で、火の車にのる決心をして下さいました。
「本の力」
笹部は、そう言います。
「野鴨」はとんでもない本だと。
えりさんもこの本に、惹き付けられてしまったんですね。。。。。。。

ラストシーン、ギーナの、石田えりの、叫び声は、
あなたの心に、どんな風に響くのでしょうか。


さぁ準備はよろしいですか。
ご一緒に舞台への扉をひらきましょう。
劇場でお待ちしています。



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