パラオ物語 Vol.071 「工事体制の立て直し −その2−」
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パラオ物語 vol.071
「 工事体制の立て直し −その2− 」
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☆この物語の舞台はスキューバダイバー憧れの南の楽園、パラオ諸島。
☆グアム島への観光客もまだまだ珍しかった昭和40年代後半、
☆更に800kmも南のパラオでリゾートホテル建設の命を受けた
☆新人企業戦士の新鮮な驚きに満ちた日々を綴る奮闘記です。
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[[[これまでのあらすじ]]]
パラオの建設工事事務所の所長、佐藤が当初の約束を違えて、
グアム所長との兼務であることが判明した。
山田が西南建設に専任の所長派遣を要求したところ
英語の話せない権藤という年配の所長と通訳の安西というコンビが答だった。
山田はその案を受け、強力な施工監理チームの必要性を感じ、
西南設計コンサルタントと密かに協議を始めた。
「パラオ物語」のブログ
http://blog.livedoor.jp/palaustory/
主な登場人物
三 島:東京の西南部に線路網を持つ西南急行電鉄グループの社長。
山田の勤務する西南不動産の社長も兼務している。後に会長就任。
財界の若手リーダーの一人で太平洋各地での開発に情熱を注ぎ
ニックネームが「ミスター・パシフィック」。
山 田:物語の主人公、西南不動産の若手の海外事業要員。
パラオでのホテル開発を担当している。
関 :山田の1年後にグアムに赴任してきて、
パラオの仕事を山田から引き継いぎ、
本社に復帰してからホテルの企画設計を作り上げた。
嶋 田:本社で関の部下としてパラオを担当し、
山田の復帰後には山田の部下となった。
杉 尾:西南不動産の専務取締役。後に社長就任。
ライオンのあだ名で部下に恐れられている。
宮 島:取締役開発本部長で海外事業も所管している。
後に専務となる。
村 山:開発本部管理課長。海外事業も担当するが英語は苦手。
矢 部:西南建設の海外事業部次長。
赤 川:西南設計コンサルタントの設計士。
パラオに駐在し、ホテル建設工事の監理を担当する。
宮 城:西南観光のグアム支店長
権 藤:西南建設の2代目のパラオ工事事務所所長
安 西:英語の話せない権藤のための通訳。
富 田:西南建設パラオ工事事務所の事務係長。
クロ・エジソン:
パラオ財界のドン。
最初西南グループのホテル開発計画の反対派だったが、
山田達が交渉してパートナーとなった。
ホテル用地を買収する会社、パラオ・ディベロップメント社(PD社)
の社長。
イナゴ・カツミ:
クロ氏の幼友達。本業はウィスキー製造とポルノ映画館主。
フェミニストでしかも右翼的。来日の際には必ず靖国神社に参拝。
クロ氏の紹介でパートナーとなりPD社の副社長となる。
イチロー・ウォン:
パラオ政府の公共事業大臣。
昔サイパンの太平洋信託統治領政府に勤務していた時代に
調査に訪れた山田に会ったことがある
キシダ・ノボル:
コロールのヒロシマ・レストランのオーナーでダイブショップも経営。
ヒロミ:ノボルの妻でヒロシマ・レストランを切り盛りする日本女性。
PRD:パラオ・リゾート・ディヴェロップメント社の略称で、
パラオでホテルを建設・所有する会社
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[[[ 工事体制の立て直し −その2− ]]]
パラオに西南建設の権藤とその通訳、安西が赴任して1ヶ月ほど経ったある日、
山田はパラオに向かった。
いつものように最初にパートナーのクロの事務所を訪ねると、
クロは山田の顔を見るなり言った。
「山田さん、今度の所長さんは偉そうな人らしいね。
一度挨拶に来たっきりで、その後は顔も見せないよ。」
どうも権藤所長が気に入らないらしい、と山田は感じた。
「来たばかりですから、現場の状況を把握するのに大変なんでしょう。
それに海外の経験は初めてですしね。」
山田は権藤を庇わざるを得なかった。
その足で工事現場に向かい、西南設計コンサルタントの赤川に会った。
「赤川さん、今度の所長はどうですか。」
「うーん、はっきり言ってまだ判りません。
現場の経験は豊富なようですが、
海外経験の豊富な下請け会社からの評判はイマイチですね。
通訳の安西さんを上手く使えていないのかなって気がします。」
「これから所長に会う積もりですが、赤川さんも同席して下さい。」
「この時間、権藤さんは現場を廻っているはずですから、
呼びにやりましょう。」
「それなら戻るまで待ちますよ。
その間に工事の進捗状況を教えてください。」
「判りました。
所長が戻ったら知らせるように頼んできますので、
少しお待ち下さい。」
部屋を出て行った赤川を見送った山田は窓の方へ視線を移した。
この部屋の窓は南西に向いているので現場は見えないが、海が見える。
パラオの海は相変わらず美しい。
夕方、水平線に沈む夕日を眺めながらビールを飲んだら美味いだろうな、
などと考えていると、赤川が戻ってきた。
赤川の報告によると整地作業は完了し、
建物を配置する部分の土地の掘削が始まったが、
雨が頻繁に降るので、思うように進んでいないとのことだ。
この土地は旧日本軍が飛行艇の基地にするため、海岸を埋め立てたものだ。
その為、地盤が弱く、地盤改良をしなければならない。
建物の下の部分の土を掘り出し砂と入れ替えるのだ
乾季のうちにその工程を終わらせる予定だったが、工事発注のズレと
土砂搬出のトラックの通行止め事件で大幅に遅れているのだ。
その上、まだ乾季のはずなのに雨が降り出したのは、
まさに弱り目に祟り目だ。
そうこうしている内に、事務係長の富田が呼びにきた。
所長が戻ってきたという。
山田は赤川と西南建設の部屋に移動した。
移動といっても、一度玄関に出て反対側のドアを開けるだけだ。
「お仕事中、お邪魔して申し訳ありません。
今日パラオに着きましたので、
まずは権藤さんにご挨拶しなければと思いまして。」
山田が挨拶をすると、権藤は深々と礼をしながら答えた。
「それはそれはご丁寧なことで、恐れ入ります。
赴任以来、毎日現場に出ていますので、何とか全体像がつかめました。
話には聞いていましたが、大変な現場ですね。
それだけに遣り甲斐があります。」
「そう言って頂けると、心強い限りです。
ところで、地盤改良の作業が捗っていないようですね。」
「雨が降り続くのには、参ります。
でも雨が止めば残業をさせて、遅れを取り戻すようにしています。
何とかキャッチアップ出来ると思います。」
「そうですか。それを聞いて少し安心しました。
それと言葉の方はどうですか。」
「ええ、何とか頑張っています。
現場にいるフィリピン人の作業員に話しかけて勉強しているんですよ。」
脇で聞いていた赤川が諭すような口調で話に割り込んだ。
「所長、作業員の英語はフィリピン訛りが強いから、
そんなものは覚えても無駄ですよ。
それより通訳の安西さんを連れ歩いて話させたほうが効率的ですよ。」
権藤は不服そうな顔つきで言い返した。
「人の口を借りると、何だか自分の気持ちが伝わらないような
気がするんでね。それに本当に正確に訳して貰っているのか、
不安なんです。」
これを聞いて、富田が慌てて言った。
「所長、そんなことを言っちゃ、安西さんに失礼ですよ。
あの人の英語は立派なもので、ちゃんと通訳してますよ。」
赤川がそれ見たことかというような顔をしたが、
山田は気がつかない振りをして言った。
「権藤さん、御社が高いフィーを払って安西さんを派遣したんですから、
上手く使いこなしたほうが宜しいんじゃないですか。
その方が権藤さんも楽できる筈ですよ。」
権藤は何も答えず、曖昧な表情で頷いただけだった。
山田は挨拶を切り上げて、赤川と一緒に現場に出た。
飛行艇を陸揚げしたコンクリートのランプの北側から海岸線を見て驚いた。
海の水が濃い茶色に濁っている。
こんなに濁った水の色を見るのは初めてだった。
「赤川さん、海がずいぶん濁っているけど、どうしたんですか。」
「今、土を掘り返しているんで、その土が雨で海に流れ出たんですよ。」
赤川は当たり前のことのように説明した。
「冗談じゃないですよ。土砂が海に流れ、それがサンゴの上に積もったら、
サンゴは死んでしまうんですよ。
このホテルは、綺麗な海があってのホテルなんです。
綺麗な海がパラオなんです。
その海を汚して、どうするんですか。」
「仰る通りです。海に泥を流さないようには言ったんですが、、」
赤川は取ってつけたような言い訳をした。
「事務所に戻って、所長に注意しましょう。」
山田は、赤川を促して事務所に戻った。
「所長、あれほど言ったのに、泥が海に流れているじゃないですか。
土留め対策はどうなっているんですか。」
赤川は、先ほどの山田への説明を忘れたかのような口調で、
権藤を問い詰めた。
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[[[編集後記]]]
今週の日曜日、飯田橋から早稲田まで、江戸落語の舞台となった地域を
歩きました。
あの辺りは、落語に出てくる懐かしい町名が残っている貴重な地域です。
土地の名前はその土地の歴史と深く関わっているもので、
大切に保存し後世に伝えていくべきものだと思います。
しかし、官僚が立案した町名変更の法律で、そうした伝統ある町名、地名が
殆ど消えています。
加えて、平成の大合併による市町村の統合で、訳の判らないような市や町の
名前がついてしまいました。
衆愚政治と官僚統治のシナジー効果ですね。
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