パラオ物語 Vol.069 「着工−その2−」
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パラオ物語 vol.069
「 着工−その2− 」
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☆この物語の舞台はスキューバダイバー憧れの南の楽園、パラオ諸島。
☆グアム島への観光客もまだまだ珍しかった昭和40年代後半、
☆更に800kmも南のパラオでリゾートホテル建設の命を受けた
☆新人企業戦士の新鮮な驚きに満ちた日々を綴る奮闘記です。
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[[[これまでのあらすじ]]]
1983年4月にホテルの建設工事が始まったが、土砂の搬出で道路を汚したため、
アラカベサン島の酋長から工事関係車両の通行が禁止された。
弱った西南建設は、工事監理者の赤川を通じて山田に助けを求めてきた。
山田は直ぐパラオに飛び、パートナーのクロと共に酋長に会い、
詫びを入れて禁止を解いて貰う事に成功した。
「パラオ物語」のブログ
http://blog.livedoor.jp/palaustory/
主な登場人物
三 島:東京の西南部に線路網を持つ西南急行電鉄グループの社長。
山田の勤務する西南不動産の社長も兼務している。後に会長就任。
財界の若手リーダーの一人で太平洋各地での開発に情熱を注ぎ
ニックネームが「ミスター・パシフィック」。
山 田:物語の主人公、西南不動産の若手の海外事業要員。
パラオでのホテル開発を担当している。
関 :山田の1年後にグアムに赴任してきて、
パラオの仕事を山田から引き継いぎ、
本社に復帰してからホテルの企画設計を作り上げた。
嶋 田:本社で関の部下としてパラオを担当し、
山田の復帰後には山田の部下となった。
杉 尾:西南不動産の専務取締役。後に社長就任。
ライオンのあだ名で部下に恐れられている。
宮 島:取締役開発本部長で海外事業も所管している。
後に専務となる。
村 山:開発本部管理課長。海外事業も担当するが英語は苦手。
矢 部:西南建設の海外事業部次長。
赤 川:西南設計コンサルタントの設計士。
パラオに駐在し、ホテル建設工事の監理を担当する。
宮 城:西南観光のグアム支店長
クロ・エジソン:
パラオ財界のドン。
最初西南グループのホテル開発計画の反対派だったが、
山田達が交渉してパートナーとなった。
ホテル用地を買収する会社、パラオ・ディベロップメント社(PD社)
の社長。
イナゴ・カツミ:
クロ氏の幼友達。本業はウィスキー製造とポルノ映画館主。
フェミニストでしかも右翼的。来日の際には必ず靖国神社に参拝。
クロ氏の紹介でパートナーとなりPD社の副社長となる。
イチロー・ウォン:
パラオ政府の公共事業大臣。
昔サイパンの太平洋信託統治領政府に勤務していた時代に
調査に訪れた山田に会ったことがある
キシダ・ノボル:
コロールのヒロシマ・レストランのオーナーでダイブショップも経営。
ヒロミ:ノボルの妻でヒロシマ・レストランを切り盛りする日本女性。
PRD:パラオ・リゾート・ディヴェロップメント社の略称で、
パラオでホテルを建設・所有する会社
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[[[ 着工 −その2− ]]]
アラカベサン島の酋長からトラック通行の許可を貰った山田は、
その足で建設現場にある西南建設の事務所に向かった。
パートナーのクロと西南設計コンサルタントの赤川も一緒だ。
プレハブ小屋の2階にある西南建設の入り口のドアを開けると、
奥の席にいた富田が慌てて立ち上がり、心配そうな顔で山田達一行を迎えた。
「山田さん、如何でしたか?
酋長のお許しが頂けたでしょうか?」
「酋長は大層ご立腹でしたが、
今後は泥を落さないように細心の注意を払い、
更に毎日道路を清掃するという条件で、お許しを頂きました。
一番重要なことは、この島の道路は旧日本軍が造ったもので、
それを酋長さん以下島の人達が大切に使ってきたことなのです。
あなた方がそこに気つかずに何度も汚したんですよ。
現場の日本人全員にこのことを伝えて下さい。
このパラオの人達の日本や日本人に対する好意を
逆撫でにするようなことを絶対にさせないで下さい。」
「本当に申し訳ございませんでした。
明日の朝礼の際、全員に伝えます。
お陰さまで工事を再開できます。
有難うございました。」
「本当にもう二度と同じ事をしないで下さいよ。
じゃあ、この件はこれでいいですね。
次に佐藤所長ですが、随分グアムに長く行ってらっしゃるようですね。
グアムでの後任への引き継ぎが、まだ残ってるんですか?」
この山田の問いに、佐藤は困惑の表情をしていたが、
意を決したように口を開いた。
「実は、後任は居ないのです。
居ないというか、佐藤がグアムの所長のまま、
この現場所長を兼務しているんです。」
「何ーッ、兼任だなんて報告は受けていないよ。
佐藤さんをここの所長にすることが条件で、
おたくに発注したんですよ。
契約違反だよー!」
「私共は本社の指示でここに赴任しましたので、
その経緯は存じませんが、
所長が兼務だなんて無理なことをするな、とは思っています。」
「富田さんに文句を言うべき事じゃないんだろうが、
この件は東京に行って、お宅の海外事業部から説明してもらいましょう。
帰り次第、当社に説明に来るようにと矢部次長に伝えておいて下さい。」
「判りました。すぐに伝えます。」
「それから文句ばかりで嫌なんだけど、
砂利をクロさんの会社から買って頂く件は知ってますよね。
それをロランの会社から買うとはどういうことですか?」
「勿論、承知しております。
最初にクロさんの会社にお願いに行きましたが
その担当の息子さんから、そんな大量の砂利は出来ない、
と言われましたので、仕方なくロランさんの会社から買いました。
それと値段が高かったことも理由の一つです。」
「クロさん、富田さんはこう言ってますが、
息子さんから何かお聞きになっていますか?」
「いいや、一度だけ値段と量を聞いてきただけで、
その後何の相談も無かった、と言ってた。
おかしいなと思っている中に、ロランから買い始めたんだ。」
「富田さん、そのことを何でクロさんに相談しなかったんですか?
道路を汚した件では何度かお願いに行ったんだから、
砂利の件も相談できたでしょうに、、。」
「ロランさんから買ったことはご存知の筈で、
それに対して何も仰らなかったので、
クロ社長も納得されたのかと思っていました。」
「富田さんねー、クロさんの立場を考えなさいよ。
工事を発注している会社の副社長の立場なんだから、
クロさんの方から買ってくれ、とは言いにくいでしょ。
パラオで仕事をしているのだから、
ちゃんとその辺を考えて下さいよ。
値段だって、一度聞いてお仕舞い、では子供の使いだよ。
予算書の値段を言って相談すればいいじゃないですか。」
「申し訳ありませんでした。
配慮が欠けていました。今後注意いたします。
クロ社長、後でご相談に参りますので、よろしくお願いします。」
「息子に言っておくので、じっくり相談して下さい。」
東京に戻った山田は、西南建設の矢部次長を呼び出した。
上司の村山課長にも同席してもらった。
契約前に佐藤所長の条件を矢部に伝えた時、村山も一緒にいたからだ。
「矢部さん、どういうことか説明してください。
契約時の約束や提出して頂いた組織表と違うじゃないですか。
私が今回パラオの現場で聞いて初めて判るなんておかしいですよ。
御社は最初から、佐藤さんをパラオに廻す積もりは無かったんでしょう!」
「山田係長、申し訳ありませんでした。
お約束は重々承知しております。
佐藤にはパラオに赴任する準備を命じたのですが、
本人が行きたくない、と申しましたので、
仕方なく兼務という形にしました。
時々出張ベースで行くことにさせ、
いずれご報告しようと思っていたのですが、、。
本当に申し訳ございませんでした。」
「冗談じゃないですよ。兼務の所長に勤まる現場だと思っているんですか。
問題ばかり起こして、当社のパートナーのクロさんや私が、
お宅の起こした火の粉を消しているんですよ。」
「エッ、何のことでしょうか。
現地で何か問題を起こしているんですか?」
「矢部次長、それは無いよ。
御社はどんな管理をしているのかね?
道路の泥の問題や、砂利の購入問題で、
山田君がパラオに飛んで、関係者に詫びて回ったんだよ。
そんなことも知らなかったの?」
「現地人が騒いで、土砂の搬出が遅れたという報告は受けましたが、
そのために山田係長がご苦労なさったことを知りませんでした。
現地に厳重に注意しますので、どうぞご容赦下さい。」
「兼務所長でしかも現地不在なんだから、
現場の管理が出来ないのは当たり前です。
行きたくない人に所長をやって貰うのは、迷惑な話ですし、
今後も問題を起こすに決まっています。
すぐさま選任の所長を任命して下さい。
英語が話せて外国での工事経験のある人ですよ。
それをしていただけなければ契約違反ということですから、
契約解除とか損害賠償とかの手続きを始めます。」
「そ、そんなことを仰らず、お願いします。
直ぐに会社に持ち帰り、ご要望に沿うような人間を調達しますので、
村山課長からも、どうぞお口添え下さい」
「矢部さん、この件に関しては、山田君の言う通りにして下さい。
何も条件の嵩上げを言っているのではなく、
最初の条件どおりにして欲しいを言っているだけなんだから。」
「判りました。会社を挙げて対処いたします。」
矢部は、頼みにしていた村山にも冷たく対応され、
諦めた様子で帰って行った。
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[[[編集後記]]]
ゴールデンウィークが始まりました。
ラジオやテレビから交通渋滞や新幹線の混雑情報が流れています。
世界中で問題を起こしている、オリンピックの聖火リレーも
ゴールデンウィークの人出には何の影響も与えていないようです。
人権蹂躙、北朝鮮の拉致や核武装などの国際情勢に加え
後期高齢者医療費やガソリン税の暫定税率など内政にも
問題が山積していますが、表面的にはとても平和に見える国ですね。
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