歴史の雑記帳-025
歴史の雑記帳 ◇No.025 2008.5.8◇
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前回の発行から2ヶ月も過ぎてしまいました。
もう廃刊かな、
とか思われましたか?
言い訳してもしょうがないんですが、
不動産賃貸業界って2〜3月が1年で一番忙しいんっす。
おまけに2度も風邪を引くは、4月に引越をするわ、
ばたばたが続いて、
ようやくこのGWで落ち着くことが出来ました。
やっと、発行を再開したいと思います。
これからもよろしくお願いします。
第25話 クリスマスと布袋さん
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
大阪の京阪沿線で生まれ育ちましたので、
小中学校の遠足での定番はやはり京都の宇治でした。
無論、成人してからも何かしらのイベントで訪れたり、
失業中にぶらぶらと一人で行ってみたりと、
私的には結構お気に入りのスポットでもあります。
宇治と言いますと・・・、
十円硬貨でおなじみの平等院鳳凰堂、
宇治橋に宇治茶に宇治金時、
なんかが有名ですよね。
ところで、この宇治に萬福寺というお寺があるのを
ご存じでしょうか?
黄檗(おうばく)宗という仏教の宗派の総本山であり、
江戸時代初期の1654年に中国より渡来された隠元禅師により
1661年に開創されたお寺です。
数年程前だったでしょうか、
この萬福寺をふらっ、と訪ねたことがあります。
黄檗宗は、建物や仏像などが伝来当時の中国の様式に
のっとっているため、我が国の他の仏教寺院とは
建物の形状や伽藍の配置も異なりますし、
仏像の様式と言いますかデザインも
オリエンタル?というか、日本で平安以来発展してきた
様式と比べると感じがかなり違う印象を受けました。
もっとも、個人的にはその伽藍配置には何か秩序美と言いますか、
心地良さを感じましたが。
さて、お寺の三門
(日本では一般的には山門と言う方が多いと思いますが)
をくぐりますと、まず最初に天王殿という建物があります。
これが中国風の伽藍配置の一般的なスタイルなのですが、
そこには弥勒菩薩(みろくぼさつ)と韋駄天(いだてん)
が祀られています。
しかし、韋駄天はともかく、
弥勒菩薩は日本人が見れば知らない人は絶対に
これがそうだとは思わない像が置いてあります。
しかし、これはやはり日本人なら誰もが知っている仏像、
というより神様ではあります。
下記の萬福寺のサイトを見て頂くのが一番早いのですが、
http://www.obakusan.or.jp/keidai/index.html
そこに祀られているのは「布袋さん」なのです。
そう、あの宝船に乗って、
上半身裸で大きなお腹で大きな袋を担いでいる
七福神のメンバーの布袋さんです。
* * *
布袋は9世紀末頃の中国に実在したお坊さんで
僧としての名前は契此(かいし)と言います。
あのスタイルで寺には住まずにあちこちを泊まり歩いていた、
言い換えれば乞食して回っておりました。
如何にも奇僧であるがゆえに、
様々な奇談が伝えられており、
彼の死後、布袋さんは実は弥勒菩薩の化身だと言う人が現れ、
それが一般に流布されていきました。
それゆえ、中国では現在でも弥勒菩薩というと
フツーはあのお姿であるというわけなのです。
この布袋さんの弥勒菩薩は、
中国の仏教寺院のみならず道教寺院でも盛んに
祀られています。
しかし、弥勒菩薩とは、釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)に継いで
仏になると約束された菩薩であり、
釈尊入滅後、つまりおしゃか様が亡くなった後、
56億7千万年後にこの世に現れて
おしゃか様の救いに洩れた衆生(しゅじょう=人々)を
ことごとく救済するという未来仏であります。
56億7千万年後は地球そのものが無くなっているんじゃないの、
という現実的な問答は無しにしても、
弥勒菩薩というと、先の説明からしても
形而上的な救いのための存在というイメージが
本来強いんですよね〜。
しかし、中国の特に民間信仰である道教では
同じ七福神のひとつに選ばれている「福禄寿」に見られるように、
福(幸福、裕福)・禄(封禄、官職を得る)・寿(長寿)という、
形而下的と言うべきか、世俗的な欲求が強く求められており、
布袋さんのあの丸々とふくよかな体や満面の笑み、
大きな袋などが「福」を呼ぶイメージが強いことが、
弥勒菩薩の化身だという風評と相まって、
人気が出たのかなとも思われますが・・・。
我が国の奈良県にある中宮寺の弥勒菩薩像とは
どうも正反対のイメージであるようです。
* * *
ここで話題をコペルニクス的に転換してみましょう。
皆様、クリスマスの起源をご存じでしょうか?
無論、クリスマスはキリストの誕生を祝う宗教行事(降誕祭)
ではあるのですが、
元々あった12月25日の冬至の祭りを
後にキリスト教が取り込んで今に至っているのです。
では、なぜ冬至の祭りを行ったのでしょうか?
ここに、古代の宗教で現在では実態がよくわからない
ミトラ(ミトラス、インドではミスラ)教という宗教が出てきます。
この神は、元は古代にインドからイランの地域の出身であり、
本来は「契約」を意味する神であったようなのですが、
後に太陽神の性格を帯びるようになります。
この神を崇める宗教がミトラ教であり、
イランより西方に伝わり、古代ローマの領域でも信仰されていました。
キリスト教が勢力を広める時期にローマ領内で既に
既知の宗教として存在し、
いやキリスト教と同等以上の存在であったとの説もあるようです。
このミトラ教で冬至の祭りを盛大に行っていたらしいのです。
冬至とは1年で最も日が短い日、
つまり太陽のある時間が最も短い日です。
この日を境に日が長くなる、
つまり太陽神が復活するということを祝う意味があったようです。
この冬至のお祭りが後にキリストの降誕祭という意味の
クリスマスという行事として、
キリスト教に取り込まれていったのです。
そして、このミトラ神なのですが、
一説によると後に仏教に取り込まれて
弥勒菩薩とされたというのです。
弥勒菩薩は古代インドのサンスクリット語では
マイトレーヤと言うようなのですが、
ミトラ = マイトレーヤ = みろく
と発音も良く似ていますよね。
まあ、元々インドの仏典を中国人が取り入れて翻訳しているわけで、
多くは音をそのまま残しているので当たり前と言えば
当たり前なのですが。
ちなみに、真言宗などで用いる弥勒菩薩の真言は
「おん まいたれいや そわか」です。
まいたれいや = マイトレーヤ = ミトラ
というわけですね。
中東から南アジアで生まれた太陽神信仰が、
西へ伝わり時代を経てクリスマスという形に変わって、
キリスト教諸国のみならず全世界で親しまれる
行事となる一方、
仏教に取り込まれて東方に伝わり、
弥勒菩薩というカタチで、
さらに、布袋さんというカタチでも現在に繋がっている・・・、
二千年以上の昔から時間と空間を超えて、
宗教や風習や人々の願いが、
こんな形で繋がっているって、
なんだか、不思議ですよね。
* * *
◆ あとがき
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
全国の多くの神社仏閣を訪れていますが、
萬福寺はまた訪れてみたいお寺の一つです。
奈良の唐招提寺、東大寺(観光客の少ない二月堂から北側のエリア)
静岡の本興寺なんかも、また訊ねてみたいですね。
個人的には誰もいないところで、
一人で佇まいや庭園を眺めたりしているのが好きですね。
心が癒される感じです。
そんなオススメのスポットがあれば教えてくださいね〜。
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