2009/10/13
探検!地方自治体へ 第103号 09/10/13
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 探検!地方自治体へ~川崎市政を中心に~ 第103号 09/10/13 ★川崎市の「住民自治」?市長選での争点?★ 1.要約 2.市営地下鉄建設に関する住民投票 3.区の権限拡大 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 1.要約 今回選挙における「住民自治」の争点は、以下の三点である。 1)4,400億円投資の市営地下鉄建設に関する住民投票 2)指定都市における区の権限拡大 3)その他、自治会等 このなかで最大の問題は1)住民投票の是非である。住民による市政の コントロールを可能にし、自治の進展を図るか、これまでと同じように市 長の権限をそのままに保つのか、将来の住民自治のあり方へ大きく影響を 与えると考える。 2.市営地下鉄建設に関する住民投票 市営地下鉄建設の第1期計画(新百合ヶ丘―武蔵小杉間)は投資総額 4,400億円、これまで計画は二転三転し、現状は国の許可を得るべく努力 中である。しかし、他の都市の例から赤字になる可能性は大いにあり、そ の影響は世紀を超えるかもしれない。それも含めて見通しは立っていない。 ここでは、地下鉄はこれ以上とりあげず、住民投票について考える。 今回の選挙では岡本氏(共産党推薦)、福田氏(民主党推薦)、原氏 (自民党支持)は中止、阿部氏(現職)は推進の立場。3候補者のうち、 福田氏1名だけ住民投票で決定するとの立場である。選挙はシングルイッ シューでおこなうわけではないこと、投資規模の大きな問題は住民投票を することが適切であることを理由としている。 一方、岡本氏は利害関係者の範囲が狭いので住民投票に馴染まないとい う。しかし、巨額投資であるからなおさら必要であるともいえる。孫子の 代まで赤字が続くかもしれないことである。また、岡本氏は「住民投票条 例」を使い易いものに改めるとしている。確かに市民にとってハードルが 高い “限りなく使えない”条例である。しかし、何に使うのか明示でき なければ条例そのものの存在意義が問われる。改訂以前の問題である。 また、原氏は有識者等を入れた委員会で議論するとしている。これが必 要なことなのか極めて疑問である。大切なことは市議会で徹底的に議論す ることである。そこで得られた情報を整理して市民に提示することは必須 である。これまでの市議会は常任委員会で議論したこともなく、しかし、 地下鉄の特別会計に賛成している。こんなことで良いのだろうか?原氏は 20年以上にわたって市議会議員だったのではないか。 阿部氏は決まったことを進めるだけとの態度である。しかし、二転三転 の当事者であり、そのことについて説明責任を果たしているとは言い難い。 ここで住民投票の意義である。先ず大規模投資、長期赤字の可能性があ る中で計画そのものを推進から中止へ転換することである。川崎市にとっ て、これほど大きな意思決定はないはずである。 更に例えば「中止、住民投票無」の市長になると、話は四転になる。で はその市長が現市長と同様に更に一転し、五転にならない保証はどこにも ない。説明責任を果たさなくても強引にできることは残念ながら先例があ る。七転び八起きしてギネスブックに載ることを狙っているわけでもある まい。一方、住民投票で長年の問題に決着を付ければ、市は結束して次の 課題に臨める。 4名の態度の違いは、住民投票条例を制定したときにしっかりとした議 論をしなかったことのツケが今ここに出ていると解釈する。改めて市議会 の責任を指摘しておきたい。 そこで住民投票とは何であるのか?具体例として岡本・東海大准教授が 研究されているスイス・チューリッヒ市の住民投票条例を再説する。 『「意思決定への住民参加」へ向けて~住民側からのアプローチ~』 http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/images/mail_magazine/58.html チューリッヒ市は人口36万人、1893年から住民投票は条例化されている。 これは“採決”であって、“尊重義務”というあいまいなものではない。 まさに、「意思決定への住民参加」である。 先ず、自治基本条例が300条近く、市政全般にわたってがっちりとで きるだけ具体的に考えて決められ圧倒される。 住民投票を義務とする事項は例えば以下である。 1)自治基本条例の改正 →憲法改正の考え方に相当するもので我々も判りやすい。 2)2000万フラン(約20億円)以上の特定目的の支出 →「公共事業」従ってハコモノも対象になる。 次に、住民発議による住民投票である。市議会の議決に対して、 1)4000人の有権者による請求(川崎市の10%規定を想起) 更に、有権者、個人でも政策や法令を提案できる。 1)提案に対して、4000人の有権者による支持必要 4000人は有権者の約1.8%(川崎市の10%規定を想起!) この考え方の基本は“少数意見の尊重”である。即ち、討論によって “少数”が多数に変わっていく過程が有り得ることを表現している。岡本 准教授は、チューリッヒ市の例と日本を比べ、“構えずに”制度をつくり、 実施することを強調されている。この地下鉄問題で住民投票をやらなけれ ば、住民投票もその条例も進化しないであろう。結果は住民自治のなし崩 しである。 3.区の権限拡大 今回、福田氏が“準区議会”を提案しているのには少し驚いている。後 述するように、区議会は市議会に含まれていると筆者は考えているからだ。 区の独立を考えると、先ず、市長が権限と予算を区長へ委譲することが 第一の作業である。これをできるだけ具体的に提案することが急がれる。 それを前提として、「準区議会」を設置するという提案が市長選で出た ことは、意義深いことである。最終的なゴールは各区を基礎自治体にする こと、すなわち各区を市に格上げして議会を置くことを明らかにすれば、 そのアプローチは色々あると思われる。 これも筆者の考え方として以下を参照願いたい。 『市議会の中に準区議会を創設~川崎市議会改革チャレンジ案(1)~』 http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/images/mail_magazine/87.html 川崎市は人口140万人に到達した。一般会計予算5,800億円である。区と しての特性も課題も異なる。しかし、市議会があるだけという旧態依然と した状況で、市民の政治参加の機会は非常に乏しい。 そこで、以前に「市議会の中に準区議会を創設」を提案した。 “準区議会”はその言葉通り、行政区としての区の独立を明確に志向す る考え方であり、その表現である。 7区に分かれ、平均20万人の人口であれば、特例市に相当する。そこに 区議会があるのが必然であろう。これはお隣の横浜市(人口365万人、18区) も含めて、どこの指定市でも共通の課題である。 原氏は「完全立区」を提案している。この意味が説明されていないので コメント出来ないのが残念である。そのなかで、区長を官民問わず公募す るとしている。しかし、これも権限と予算を区長へ委譲することがなけれ ば、気分の問題だけになる。宮前区が以前に民間人から区長を据えて話題 になったが、話題だけであって、何も残らなかったようである。準公選制 へのロードマップを描いて提案されると更に議論が弾むことになる。 一方、岡本氏がその準公選制を提案している。再説しないが、現状でこ れだけを取り上げてもどのような意味があるのか不明である。小学校の学 級会ではない。何でも直ぐに選挙で選べば良いわけではない。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 編集発行人 吉井俊夫 ご意見・ご感想はメールでどうぞ t_yoshii@hotmail.com 本メルマガのまとめ http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/ine_mm.html (ここをクリックすると登録フォームがあります) 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000219072.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


