2009/10/03
探検!地方自治体へ 第102号 「大きな失政がない=現職OK」の発想批判~川崎市長選~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 探検!地方自治体へ~川崎市政を中心に~ 第102号 09/10/03 ★「大きな失政がない=現職OK」の発想批判~川崎市長選~★ 1.要約 2.過去の評価と未来の選択 3.見えざる圧力と過服従 ~市長周囲の“空気”~ 4.市長=候補者の過剰サービス ~“空気”の横流し~ 5.それぞれ自由な投票を! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 1.要約 川崎市長選挙は来る10/25が投票日。 前号第101号「 川崎市長選~市民にとっての選択肢を広げる~」以降、 自民党支援の立候補者が決まり、現在4名の予定である。 1)阿部市長 (政党推薦なし) 現市長 2)岡本一氏 (共産党推薦) 前回立候補 3)福田紀彦 (民主党推薦) 新人(前県議) 4)唯是一寿氏(自民党支持) 新人 4名の立候補者が出てくる。市民の主体的意思で新たな川崎市を目指す 条件が整った。我々市民としてはこれまでの組織的しがらみ、既得権益、 自らの偏見などから自由になって、“新たな眼”でそれぞれの候補者と政 策をみつめることが必要である。 しかし、“新たな眼” といっても簡単ではない。自由な意識を拘束する 条件が実際はあるからだ。ここでは一般的に流布され、比較的受け入れられ 易い発想、「大きな失政がない=現職OK」を取上げ、知らず知らずに我々 の意識を拘束する側面の例として考えてみた。 2.過去の評価と未来の選択 「阿部市政の8年間に大きな失政はなかった。個人的には阿部氏でいい」。 民主党の或る市議から出された意見として報道されている。 阿部市長は総選挙翌日の会見で「無所属で政党政治とは区別した形で地 方自治を守りたい」と政党から距離を置く姿勢を示していた。しかし、そ の直ぐ後に民主党の「単独推薦で立候補したい」と公募に応じた。しかし、 民主党は市民の選択肢を増やす形で気鋭の若手・福田県議を抜擢する決断 をした。 阿部氏の変心について、この間の報道で見逃すことの出来ない意見と筆 者が感じたのが上記の「失政論」であった。 大きな失政とは何かという議論もあるだろう。おそらくこれを議論する だけでまとまらなくなるのは必至である。しかし、それはさておいても議 論する価値があると思う。確かに、汚職、裏金、新たな赤字事業(例えば、 東京都の銀行新設、最近の横浜市150周年記念)は川崎市になかった。 だが待て!市民にとって大きな失政がないのは当り前ではないか。あれ ば、議会もろともの責任である。 更に、市長選の本質は次期リーダーを 選ぶことである。過去を参照する必要があるが、それはあくまで将来へ向 けてである。市長は過去の実績で決めるものではない。 選挙で選ぶ理由は将来のリスクを共有するためでもある。 その意味で株を買うことと少し似ているかも知れない。いやそれよりも、 例えていうならば、会社の昇任人事と同じである。それは過去の論功行賞 ではない。先へ向けた期待である。であるから抜擢人事が生まれるのであ る。 民主党議員の「大きな失政はなかった。続けていい。」との論理は結果 として地方自治体首長の多選とそれによる澱みを生む源泉となる思想であ る。この思想を徹底的に分析しなければならない。 失政と政策意見の相違とは異なる問題である。失政は論外で、それがな いことは前提に過ぎない。そのうえで、お互いの政策意見を出しあい、そ の違いを明確にし、政策と対応した形で複数の立候補者が出揃って始めて 実質的な選挙になる。 残念ながら前回はそうではなかった。現市長と共 産党推薦候補では選択にはならないと判断した市民が多かった。36%と いう非常に低い投票率にあらわれている。 しかし、8月末に国政で選挙による政権交替が可能であることが示され、 国民として一つの達成感を感じているはずである。自治体首長選挙でも、 現職に対する挑戦者が出ることが必要なのである。今回、民主党推薦・福 田氏、自民党支持・唯是氏の立候補で環境が整った。再考すれば、阿部市 長のなりふりかまわぬ右往左往ぶりこそは政策以前の信頼関係を打ち壊す もので政策以前の問題、或いは失政以前の問題ではないだろうか? 3.見えざる圧力と過服従 ~市長周囲の「空気」~ 「大きな失政はなかった。続けていい。」との発想は平穏無事であれば 何よりとの考え方である。それ権力者は周囲にどのような影響を及ぼすの であろうか。 以下の例は市長の周りに醸し出される“空気”(山本七平)をどことな く感じさせる。 6月第2回定例会の一般質問で猪股美恵議員は「市長出馬要請」の質問 をした。 http://www.k4.dion.ne.jp/~kmk-head/001_0906_gikai_ippann.html 猪股さん特有のユーモアで「…私のところに出馬要請が来ないのでひが んでいるわけではない…」と笑いを誘いながら、5月29日に市内の団体が 阿部市長に市長選への出馬要請を要請したと報じられたことを取り上げた。 この段階で、阿部氏が出馬することは天下周知である。対抗馬は未だ岡 本氏だけである。後援会が出馬要請しても誰も驚かない。しかし、それは 地域団体の単なる連絡協議をする会であった。特定の人に「市長出馬要請」 する機能があるとは思えない。何らかの配慮が働いたのか働きかけた影の 人がいたのか、と考えるのが普通である。 その中に川崎市全町内会連合会、各区全町内会連合会が含まれており、 猪股議員は「質問」の中でそんな話は町内会員である自分も聞いていない と言っている。これは筆者も同じであるし、ほとんどの町内会員、即ち一 般市民は同じであろう。ほんの一部の取り仕切る人がとったアクションで ある。このように一般的に選挙では公正中立であるべきと見られている団 体が含まれているだけでなく、公的にも公正中立であるべきと規定されて いる選挙管理委員会委員、保護司、民生委員等の個人・団体も加わってい たのだ。質問は将に機を得ていた。 「…市の選挙管理委員会事務局は、各区の委員を集めて行う研修会では 選挙に関する中立公正を言ってきたわけであります。私は選管から中立と 公平を除くと選管の機能はないと思っております。本当に市の選管として よいのかどうか、改めて伺います。 それから、保護司、民生委員のところは、民生委員法の中に、政治目的 活動が第16条で禁止されています。特定の人に選挙に出てほしいという積 極的な要請を本当にしてもいいのか、もう一度伺います。」 選挙管理委員会事務局長「…関係規定上直ちに違法となるものではない …ただ、選挙管理委員の職責上、誤解を受けるおそれのある言動等には十 分留意すべき…」 健康福祉局長「…保護司及び民生委員・児童委員は特別職の公務員でご ざいます。公職選挙法第136条の2には、公務員等の地位利用による選挙 運動の禁止の規定がございます。また、民生委員法第16条にも同趣旨の規 定がございますが、具体的な内容等を承知しておりませんので、お答えし かねます。」 両者共に“知らぬ、存ぜぬ”と答えたが、調査するとは言っていない。 これでは職責を果たしているとは言えない。グレーであるが、限りなく 「黒」に近いと考えざるを得ない。これを権力者による見えざる圧力と呼 ぶのか、その下で権益の受け皿となる団体幹部の過服従と見るのか。両者 は裏腹の関係である。市長に対して弱き存在と感じてしまう彼らの存在と は何であろうか。 猪股議員は最後に以下のように結んだ。何か現時点(10月初め)での市 長選候補者の状況変化を暗示しているかのようである。 「…今の体制の中でよくないことはよくないと言えない体質そのものが、 私は今の問題だと思っております。…」 これがまさしく“空気”である。 ところで、川崎市長選では「連合神奈川」にも同じようなことが起きて いるらしい。同じ頃、連合神奈川は阿部氏に“出馬要請”をしていたのだ !先の市内の団体と同じく5月29日である。偶然の一致であろう(笑)。 「連合神奈川 阿部氏に出馬要請」 2009-06-26多摩川新聞 http://blog.goo.ne.jp/tamagawa-np1962/e/cb4c529260990d57e870691fa78c9bcf 「多摩川新聞」は地域の小さな新聞である。しかし、よく報道したもの である。感謝すると共にこれからも地道な報道をして頂きたい。 先にも述べたように、市議会6月定例会では正式出馬を表明することも 知られていた。このときに推薦よりも更に強く、積極的に出馬を「お願い」 したのである。候補者が出揃わず、マニフェスト等も未だという段階であ る。 労組の組合員が阿部氏を強く支持すると言っているわけでなないだろう。 連合神奈川が「お願い」する理由はどこのもないように思われる。機関で 本当に議論があったのであろうか。多摩川新聞は「連合神奈川が阿部市長 に対して出馬要請するのは初めて」と書いている。 後は推察である。民主党連合系で阿部支持の議員、連合幹部、阿部市長 がどこまで話を合わせたのか判らない。しかし、結局、既得権益の中で擾 乱を起こさないようにとの“空気”が閉ざされた一部の連合幹部を支配し ていたことは確かであろう。この“空気”が一般組合員を包むとき、表面 上は「反対無し、意見無し」で進められ、しかし、無関心が広がり、実際 の気持としてはわだかまりが残る。そんな風土が築かれていくのである。 以上のように、何となく阿部市長の思惑に沿った雰囲気ができあがって いくことが「魔の5/29」に象徴的に示されている。 4.市長=候補者の過剰サービス~“空気”の横流し~ 請願の署名が22万筆集まり、それに圧されてか、3月定例議会で「等 々力陸上競技場の全面改修」の請願が採択された。これが市長選候補者の 公約として突如浮び上がっている。しかし、こんなことよりも先ず議論し なければならない大切な政策は目白押しである。 例えば、「市営地下鉄」である。4,400億円の初期投資。 4,000億円のうち、約半分の2,000億円は一般会計の借金で賄う。その利 息900億円は一般会計のなかに隠して入れ、地下鉄特別会計に請求しない財 政構造になっている。知らないうちに一般会計が大きく圧迫される。 その利息900億円を考慮に入れなくても、乗客予測を5%下回ると稼働 からの黒字転換が現計画の20年程度から40年以上にもなる。横浜市営 地下鉄グリーンラインでは乗客予測は30%程度も下回っている。同じ程 度であれば川崎市営地下鉄の赤字は世紀をこえるだろう。 話を等々力に戻そう。請願に署名した22万人がどの程度等々力に関心 をもっているのかわからないが、その票を目当てにしたように新聞では報 道されている。 特に阿部市長が先ず発言、他のふたりの候補も単に釣られての発言とお ぼしき報道である。 口火を切った阿部市長は、9月16日に「200~300億円をかけ、 2017年完成」との方針を打ち出し、翌17日の記者会見で市債を財源 にする計画を明らかにした。 「等々力改修全員公約 サポーター票に熱視線 川崎市長選出馬予定3氏」 (2009年9月27日 読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20090927-OYT8T00118.htm しかし、現状は以下である。 川崎市議会3月定例会の環境委員会で3月12日(木)に「請願第48 号 等々力陸上競技場の改修」が審査され、採択された。 「川崎市議会を語る会 環境委員会 審議概要」 http://www.k4.dion.ne.jp/~kmk-head/001_0906_iinkai_kankyou.html その審査のなかで、環境局は学識者を初めスポーツ関係、商業・産業、地 域代表、行政から成る「等々力緑地再編整備検討委員会」で検討している ことを明らかにし、以下の予定を示した。 今年度末に再編整備方針を策定 夏ごろに再編整備の基本構想 平成21年度末に再編整備基本計画の策定 なお、庁内検討体制として高井副市長を委員長として関係局長から成る 「公園緑地まちづくり調整会議」を動かしている。状況をしっかりと把握 し、そのうえで検討委員会での答申を待って判断すれば良いことである。 再編整備することについては既に前提で検討しているのであるから、こ れをやらない、のであればマニフェストに載せる意義が大いにある。それ だけだ! 特に「市債」「完成時期」などとは現市長が検討途中に口走ることでは ない。「検討委員会」に諮問したのは市長だからである。「調整会議」に 対してもこの件の検討を預けているはずである。 自らのマニフェストに書くのであれば良いが市政の一環として発言して いるのであれば、全く自らの存在を区別できていないように思える。 何故であろうか。阿部市長を取り巻く“空気”が、見えざる圧力と過服 従との相互作用で一般社会から切り離されてしまっているからである。そ の“空気”中で現市長は候補者であり、更に次期市長の幻想にも浸れる。 その“空気”が川崎市の世界そのものだ、と勘違いすれば、何でも有りに なるのだ!市営地下鉄の「燃料電池電車」構想を突然言い出しても回りに は『ご無理ごもっとも』という追従者しかいないのであろう。それが“空 気”である。 阿部市長はその状態から“空気”を川崎全体へ横流ししようと試みる。 22万の署名にひたすら意味を求めて、等々力の改修を“空気”に載せよ うとする。この“空気”と「大きな失政はなかった。続けていい。」との 論理が結合すれば、4年前の選挙のように実質無競争選挙が成立する。こ れが一般的な“多選の構造”と考えて良いであろう。 今回の川崎市では既に「大きな失政はなかった。続けていい。」との発 想は福田氏の立候補で打ち破られている。 続いて、“空気”の横流しに対しては、同じ政策を掲げてキャンセルし、 他の話題をテーマにしようとする。やや軽薄な嫌いはあるが“空気”消す 作用は存外あるかもしれない。 5.それぞれ自由な投票を 民主党が福田氏を候補者に押し立てたところで、くびきが切れたように 次々と新たな動きが出てきた。現状に対する潜在的な不満は大いにあった のが明らかになった。 この動きは、さいたま市、千葉市、横浜市と連動している。しかし、こ れは何も他の3市に単に刺激されて出てきたわけではない。同じような潜 在的不満がそれぞれの都市の状況に媒介されて出現したのだ! 更に先の衆院選挙と同じ流れを引き継いでいる。それは何か?国民の主 体的な意思で政権交代を果たしたことである。このアナロジーは明らかで ある。 川崎市においても、市民の主体的意思で新たな川崎市を目指す条件が整 ったということである。少なくても4名の候補者が出てくるからである。 従って、我々市民としてはこれまでのしがらみ、既得権益、自らの偏見な どから自由になって、“新たな眼”でそれぞれの候補者と政策をみつめる ことが必要である。将来、少なくても子どもたちにツケを残さず、更に無 形・有形の資産を作り上げるために。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 編集発行人 吉井俊夫 ご意見・ご感想はメールでどうぞ t_yoshii@hotmail.com 本メルマガのまとめ http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/ine_mm.html (ここをクリックすると登録フォームがあります) 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000219072.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



