2009/08/13
探検!地方自治体へ 第97号 09/08/13 郵政選挙と政治改革へのアプローチ
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探検!地方自治体へ~川崎市政を中心に~ 第97号 09/08/13
★郵政選挙と政治改革へのアプローチ★
1.要約
2.『住民投票』としての郵政選挙
3.権力の味
4.直接的・迂回的・触媒的~政治改革へのアプローチ~
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1.要約
前回、山内衆院議員の自民党離党を「はるかに質の高い決断」と評価し
た。そこで、山内氏が自民党に公募し、当選した前回の「郵政選挙」とは
何であったのか、顧みることが大切であると感じた。
前回の衆院選結果を2001年からの衆参議員選挙と比較すると、投票率が
67%と高く、自民党の得票率も突きだしていること判る。それは、巷間、
言われているように「郵政民営化」を対象とした半ば住民投票(国民投票)
の側面を小泉首相が強く押し出したことによる。そこから多くのねじれが
生じてきた。改革の後退に繋がっている。
今後、さらに改革を進めるアプローチとして、
小泉流の“直接的アプローチ”、
一旦地方に回って、再度国政を目指す“迂回的アプローチ”、
新党「みんなの党」が提唱する“触媒的アプローチ”がある。
政治改革を最終的に住民自治へ結びつけるためには、
“迂回的アプローチ”が重要である。
2.『住民投票』としての郵政選挙
先ず、最近の選挙結果をできるだけ簡潔にまとめてみた。自由党が民主
党に合同したときは2003年11月の衆院選挙である。そこで比較のためにそ
の直前の2001年7月の参院選挙からから並べてみた。
2005年9月が郵政選挙である。
結果は比例区の得票率をまとめてある。政党支持という点で判りやすい
数字と考えたからである。投票率、得票率はデータそのものである。
一方、獲得率(投票率×得票率)はそれぞれの選挙を比較する意味での
投票数を意味している。
01/7 03/11 04/7 05/9 07/7 ―― 09/8
首相 小泉 小泉 小泉 小泉 安部 福田 麻生
選挙 参院 衆院 参院 衆院 参院 衆院
投票率 56 60 56 67 58
得票率
与党 56 50 45 51 41
野党 39 50 51 46 54
獲得率(投票率×得票率)
与党 31 30 25 34 24
野党 22 30 29 31 31
与党得票率
自民 39 35 30 38 28
公明 15 14 15 13 13
他 2 1
野党得票率
民主 16 37 38 31 40
共産 8 8 8 7 8
社民 7 5 5 6 4
自由 8 民主と合同
他 4 2
データの出典は以下の資料
1)『ウィキペディア』衆議院議員総選挙
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%86%E8%AD%B0%E9%99%A2%E8%AD%B0%E5%93%A1%E7%B7%8F%E9%81%B8%E6%8C%99
2)『ザ・選挙』
http://www.senkyo.janjan.jp/
先ず、全体の衆参議員選挙を比較すると、
1)郵政選挙の投票率は67%と突きだして高く、他は56―60%である。
2)与党の得票率は56%―41%(01/7―07/7)と6年間で長期低落傾向である。
3)しかし、郵政選挙で与党は得票率を51%に維持している。
4)更に獲得率に整理すると与党は34%と突きだしている。
5)野党はこの逆で、民自合同以降、基本的に得票率は増加傾向である。
ここから読み取れるのは先ず、「二大政党性の確立」から「政権交代」
への流れである。
従って、「郵政選挙」は卑近の他の選挙と比較して、ある種の異常さを
含んでいると言える。
それは、巷間、言われているように「郵政民営化」を対象とした半ば住
民投票(国民投票)の側面を小泉首相が強く押し出したことによる。
小選挙区制―二大政党制が軌道に乗ってきたところで、実際に国民が選
ぶのは「自民党(与党)」か「民主党(野党)」である。従って「郵政選挙」
はこの体制を前提とした国政選挙の軌道から実質的に外れていたと言わざ
るを得ない。
そこから多くのねじれが生じてきた。結果として、小泉改革は総括され
ることなく置き去りにされている。
国民の立場に立てば、分裂した自民党に対する評価を中心に迷いが生じ
る。小泉自民党、守旧派自民党、民主党の三者が競合している。しかし、
選択は自民党、民主党の二者択一になる。改革を巡るこの「三者競合・二
者択一」の状況では明確な意思決定が難しいのである。特に無党派と呼ば
れる人たちに代表される浮動層にとってである。
小泉自民党を一番に支持したいが、守旧派自民党がもし勢力を増すので
あれば、自民党よりも民主党を選ぶ方が良い、こんな選択もあり得た。4
年後の現実はこんなものではないだろうか。しかし、その時このように考
えて投票した人はどの程度いたであろうか。また、分裂した自民党は評価
の対象にはならず、ドロップアウトしたとみなし、民主党を選ぶ。これも
今考えれば、あり得た選択であろう。しかし、その時は無理であったよう
に思える。
実際に起こったことは、曖昧な状況を「郵政民営化を対象とした住民投
票」に単純化して意思決定する流れが小泉首相とマスメディアによって作
られていった…。それによって浮動層が(小泉)自民党に集中していった。
当然、不動層としての(小泉)自民党、(守旧派)自民党、民主党は基本
的にそのまま、自民党と民主党へ投票していると単純に考えてのことであ
る。
だが、逆に言えば、「郵政民営化」以外の論点は極めて曖昧にされたま
まであった。これが小泉改革の評価を善悪二元論的に裁くことしかできな
い現状をつくったともいえる。
3.権力の味
「郵政民営化を対象とした住民投票」で投票率も、自民党の得票率も突
き出した、その意味と影響は何であろうか。
もともと「郵政民営化」は権力者集団、すなわち自民党のなかのイッシ
ューであったはずだ。それが小泉氏という少数派のリーダーが自民党のト
ップに座り、その権力を巧みに使ってそのなかを強硬に突破し、参院で郵
政法案が否決されるやいなや、「国民に聞いてみたい」と言って内部抗争
を民主党も含めて外部化し、それを国民へ投げ出したのである。
その選挙で勝ったのであるから、『権力内部での直接的な改革』が成功
したと言って良い。戦後の自民党政治のなかで派閥による政権交代が常態
化してきたが、それは激しくなっても単なる内部抗争であって、『自民党
をぶっ壊す』というものではなかった。
しかし、この場合、一方が他方を駆逐することには必ずしもならない。
また、敗れた方が組織から飛び出ることにもならない。そこには“権力”
がまつわりついているからである。改革が進んだとしても守旧派は抵抗勢
力として内部で力を発揮し、既得権益をできるだけ確保する条件闘争をお
こない、なし崩しに改革を自らに有利な方向へ向けることを目指すであろ
う。与党内野党の方が野党になるよりも利があると考えるのは当然である。
それよりも、改革が成功したとすれば新たな利益集団が生まれてくるで
あろうし、権力への参入を試みる機会主義者も現れてくるのは必然である。
小泉チルドレンも自己保身という既得権益確保の集団として機能している
はずである。
『直接的な改革』に参加しようとの決意で新たな議員が小泉首相のもと
で誕生した。しかし、その後の「造反議員の復党」以降、“権力の味”を
巡っての守旧派の巻き返しにより「改革」は後退しており、それを表すか
のように、2007年7月の参院選挙では、自民党の得票率も元のトレンドに
もどった。小泉チルドレンも含めて自民党の一般議員は権力の気配に機敏
な機会主義者たち、すなわち「こうもり」であるから、獣にも鳥にもなれ
る。結局、『直接的な改革』は守旧派と機会主義者たちによって総括され
ないままにグチャグチャになっている。
4.直接的・迂回的・触媒的~政治改革へのアプローチ~
前回、山内衆院議員の自民党離党を「はるかに質の高い決断」と評価し
た。そこで氏が『自民党の方向と、自分の目指す方向とのずれ』を認識し
たことを書いた。その認識については異論がない。また、“権力の味”を
巡って自民党のなかで内部抗争をせず、自らの主張を鮮明にしたことは評
価したい。
しかし、逆に言えば、氏は自民党の一員になったのであるからこの4年
間の改革に対する内部闘争に敗れた結果であるとも言える。それは「郵政
選挙」の突き出した結果から明らかである。小泉首相といえども、「郵政
選挙の住民投票化」という尋常ではない主張によってのみ改革に対する信
任を国民から得られたという事実である。その尋常ではない状況の“真の
鬼っ子”が氏ひとりだけということが今明らかにされたのである。
氏は今後、「みんなの党」で活動するという第2に決断をされた。
自民党の改革が萎んだこと、先にも述べたように、権力への“直接的ア
プローチ”が国レベルでは非常に難しいことを意味している。既得権益グ
ループと機会主義者の跋扈でグチャグチャになるからだ。そこで、北川三
重県知事を嚆矢として松沢神奈川県知事、上田埼玉県知事のように、一旦
地方に回って実績と経験、人的繋がりを涵養して力をため、再度国政を目
指す“迂回的アプローチ”が試みられている。
ところで、神奈川新聞によれば、渡辺氏は新党「みんなの党」を選挙後
の政界再編をもくろみ「触媒政党」を目指す、という。一方、江田氏は
「自民は嫌だが、民主に任せて大丈夫かという声」の受け皿に、という。
これを“触媒的アプローチ”とすれば、それはちょうど“直接的アプロ
ーチ”と“迂回的アプローチ”の中間的な方法と考えらえないこともない。
しかし、「触媒」とは何だろうか。化学的いえば、変化を促進するが変
化の主体でもなければ変化後の生成物でもない。
すなわち、AB+XY→AX+BYのA,B,X,Yのいずれでもない。
反応を容易に生じさせるための反応経路を提供するだけである。
「自民+民主←→ バリヤ ? 」
「自民+民主 →(みんな)→ 民自+主民」 こんなところである。
江田氏流に言えば「みんなの党自体は好きでもなく、任せるとも言えな
い」という声が聞こえてきそうであるが、これで特に問題もなく、ふたり
とも満足しているかのようである。
これはある程度実績を積んだ渡辺氏、江田氏のクラスに適しているのか
もしれない。しかし、触媒の作用が終わった時には触媒政党の使命も終り、
ばらけてしまうと共に改革も収束されてしまうことも容易に想像できる。
自らの居場所が「幻想」として見えている人はこれで良いかもしれない。
しかし、「みんなの党」を改革の柱に育てようと意気込んでいる山内氏
はこれに満足するとは思えない。
筆者自身、改革の内容を考えると「急がば廻れ」の“迂回的アプローチ”
を薦める立場である。しかし、最近の知事会、市長会等の様子は本来の自
治とほど遠いように思われる。
片山前鳥取県知事は、テレビニュースで短いコメントを求められると、
知事会などの活動を取り敢えず評価するものの、必ず最後に加える言葉は
“大切なのは住民自治”である。政治改革が住民自治に繋がることこそが
目指すところだとの主張であり、筆者も同感である。
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編集発行人 吉井俊夫
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