2009/05/23
探検!地方自治体へ 09/5/23 第89号「討論」から「意思決定」へ~川崎市議会改革チャレンジ案(3)~
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 探検!地方自治体へ〜川崎市政を中心に〜 09/5/23 第89号 ★議事機関の“姿”を求めて 〜川崎市議会改革チャレンジ案(3)〜★ 1.要約 2.討論から意思決定まで 〜自由討論の習慣〜 3.反問権?討論権! 〜討論によるガチンコ勝負〜 4.本会議・委員会;方法の見直し 5.バックヤード機能強化 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 1.要約 今回は議会内部固有の課題を論じる。ひと言で言えば、議事機関の“姿” を追及することである。 委員会を中心として、 『市長提案―質疑応答―“論点形成―意見調整―修正案策定”―意思決定』 のスタイルを先ず確立すること。このとき、会派は公開の原則で運営しなけ ればならない。 議員から出された意見、提案は討論して意見書にすべき項目を決める。 更に、意見及び提案については市長等との討論をおこなう機会を設置する 、すなわち、市長等による討論権を認めることである。 更に、本会議・委員会の方法を見直しすること。 1)質問・一般質問を文書質問化 2)予算特別委員会・決算特別委員会を改組 3)常任委員会の見直し 加えて、バックヤード機能の強化である。 2.討論から意思決定まで 〜自由討論の習慣〜 本来、この領域は議員が自ら考え、内部改革を実行し、住民にいち早く報 告する事項である。ここでも出遅れは大きく、議会基本条例の素案にも具体 論が盛り込めず、住民からパブリックコメントで指摘されるという状態であ る。 先ず、自由討論の習慣を身につけることである。 栗山町の議会基本条例の前文は、『自由かっ達な討議をとおして、立案、 決定、執行、評価における論点、争点を発見、公開することは討論の広場で ある議会の第一の使命である。』と高らかに宣言している!これは憲法93条 における「議事機関」設置の規定を引き締まった文章で見事に言い換えてい る。 多数の議員による合議体としての議会は『議事による意思決定』を本質と している。『議事』とは事を議する、すなわち、討論することである。討論 無しの『意思決定』は意思の入らない単なる形式的な決定であって、印を押 しているようなものである。 これまでの委員会審議における議案は、 『市長提案―質疑応答―(取扱協議)―議決』 すなわち、討論なしで市長提案を議決、すなわち可決している。これを 「素通し議決」と言うが、市長の意思に追随するだけの形式的決定であって 、議会としての「意思」がまったく見えてこない。僅かに、「取扱協議」に おいて反対の意思表示と理由が述べられるだけである。この際、賛成理由は 述べられないのが慣例のようである。議会不要論が湧き出てくる根源はここ にある。 全国市長会のH19年度調査によれば、全国の市長提案の案件を原案可決以外 に処理(否決、修正、継続審査等)した件数は人口が少ないほど多い。 『人口10万未満1.1%、人口10-50万 0.7%、人口50万以上0.2%』であり、 少人口ほど議案修正等の確率は多い。それでも少ないが…現状では、これが 一桁多くなるだけで議会の存在価値は高まると思われる。 委員会審議を中心にし、議案に関する議員間の討論を活発に行い、 『市長提案―質疑応答―“論点形成―意見調整―修正案策定”―意思決定』 のルートを確立する。“論点形成―意見調整―修正案策定”が議員間の自 由闊達な討論であり、これまで全くなかった部分である。また、市長提案の 際には「政策の形成過程」の説明が必要である。 更に、修正が無い場合においても、討論の段階に出される「意見・提案」 を議会としてまとめ、「意見書」として決議し、市長へ提出すれば良い。そ の後、委員会としてフォローしていくべきである。 もちろん、修正はその必要に応じてである。しかし、これまでの議案はほ ぼすべて「素通し議決」であったことを考慮すると、直ちに議会(委員会、 議員)として提案を行おうとするよりは、市長提案を修正すること(否決も 含むが)に努力を傾けるべきであろう。 以上の考え方を実行に移し、『討論―修正』を確固たる習慣とすることが 第一の要件である。『討論の場』を形成し実質的な討論を行いうことによっ て議会の意思を示すことが議会の実質的な権限を拡大することになる。今は 十分に権限を活用していないのであるから、先ず、持てる権能をすべて発揮 することに議会は邁進すべきである。 今回の議会基本条例に関し、議会は『権限の拡大』を第一に掲げている、 であるならば、先ず、持てる権能を発揮することから始め、条例、予算、決 算等の議案を実質的な議論にかければ良い。その結果、議会としての結論が まとまれば必然的に素通し議決はなくなるのである。 次のステップとして議員(委員会)提案を活発化しなければならない。議 会が討論により争点を形成する段階において、種々の意見、課題認識が提出 されるはずである。それをもとに条例を定めるとの「提案」が出てきておか しくない。また、議会説明会等で住民と討論した結果、新たな「提案」が出 てくることもあり得る。これは議会として先ず考え方を意見書として提出し 、行政側にすべて任せず、委員会として「素案」を作るべきである。その後 、市長、行政職員を委員会へ招請し、討論を行い、その段階で「条例案」は 行政側に託しても良い。このプロセスでは、議会を中心にして議員間だけで なく、議員ー市長、議員ー職員、議員ー市民、でそれぞれ“自由討論”が展 開される。 最後に会派の位置づけについて提案する。 会派は議会のなかの公的存在であり、議会の一翼を担う。ここが基本的考 え方である。したがって、会派の運営はこれまで議論した「討論から意思決 定まで」における議会の運営を阻害しないようにすること更に、積極的に寄 与することが原則である。 これまでの「素通し議決」において会派が果たした役割は意見の集約であ る。その集約は会派の中だけではなく、会派間でも行われるので効率は良い が、透明性に欠ける。 例えば、2008年12月の総務委員会において、議案151号「水江町用地取得」 に関し附帯決議が可決された。これは12/8審議の後、12/9審議が開始される 前に会派間での相談で提案が決まったと推測できる。しかし、その間の経緯 、附帯決議が最善案であること等の説明は委員会で十分説明されていない。 先ず、基本的に情報を公開することが必要ある。また、議案を討論する過 程で様々な意見が出ると考えられるので、それらの意見はすべて開示し、集 約に至った場合はその理由を説明する責務がある。 また、議決に関する会派拘束は原則として外すべきである。議会は二元代 表制として市長との緊張関係をもとに運営される。国会のように議員内閣制 で与党が内閣と一体になって政策を進めるわけではない。従って、執行責任 の立場から会派として議員が同一歩調を示す制度的理由もない。会派は議会 の構成要素であるから、自由討論の結果である議員の選択を尊重すべき立場 に立つ必要がある。 3.反問権?討論権! 〜討論によるガチンコ勝負〜 委員会での議案審議で議員と市長・行政職員が質疑応答を行う。また、代 表質問、一般質問で市長・行政職員が回答する。ここで『議会用語解説集』 によれば「質疑は議案等について、討論、表決の前に疑問点をただすこと」 であり、「質問は議案とは関係なく市政全般について、現在の状況や方針・ 計画等について聞くこと」である。 http://www.city.kawasaki.jp/council/yogosyu.html ところで、委員会での議案審議において行政側提案説明の後、質疑応答に 入る前に、委員長が「ご要望、ご意見があれば合わせてどうぞ。」と発言さ れるのが慣習である。上記の用語集からすれば、質疑は疑問点を質すのであ って、行政側への要望、意見は厳密には質疑の範疇には入らず、これを気軽 に「質疑に合わせて」出すのは違和感を覚えないでもない。採択において否 決されれば、要望、意見も意味が無くなるのでは?とも思う。 また、本会議の質問において要望は茶飯事として出されており、項目によ っては要望だけというのも珍しくない。これも「市政について…聞くこと」 、からすれば範囲を越えているとも言える。 先ず、要望という曖昧な表現は止め、意見と提案にすべきである。更に、 議会あるいは委員会は議員から出された意見、提案について議員間で討論を おこない、委員会あるいは議会としての意見書にすべき項目を決議する。そ の時、全員一致、多数意見あるいは決議に至らなければ、少数意見として委 員名を出せばよい。また、議決ということではない意見(要望)を付加する こともあって良いと考える。また、「意見・提案」は委員会においてフォロ ーの方法・担当を決め、問題があれば直ちに委員会で対応するシステムを構築 すべきである。 以上のように考えれば、質疑、質問に対しては逆に聞き返すという意味で 市長等による反問権なり、質問権は当り前に存在する。それ以上に大切なこ とは、意見及び提案については市長等との討論をおこなう機会を議会として 設置することである。すなわち、市長等による討論権を認めることである。 なお、後述するように意見書以降の段階は文書でおこなっても良い。 4.本会議・委員会;方法の見直し 委員会を中心とした討論を「7.討論から意思決定まで」及び「8.反問 権?討論権!」に示すような考え方で改革していくと更に個々の方法につい て具体的な見直しが提案可能となる。 4-1. 代表質問・一般質問を文書質問化 委員会を中心とするなかで、形成化された本会議のやり方を実質的な方法 へ変えていくことがクローズアップされる。 先ず、代表質問・一般質問である。質問のほとんどは状況フォロー等で始 まる。ここでは表あるいはグラフも資料として有効になる。しかし、基本的 に判っていることの確認である。これを全部「文書質問」化し、議員へは事 前配布をおこない、傍聴席にも貸出しをおこなう。その後の問題点追及のあ るいは「提案」の部分だけ本会議場でおこない、これについては“討論”に よるガチンコ勝負!とする。 代表質問は、ほとんど「文書質問」で済むと考えられる。二問目以降だけ を本会議での質問にすれば十分である。一般質問も傾向として二問目までは 文書質問へ適用できそうだが、これは個々の質問内容による。これにより、 本会議圧縮・委員会審議充実へ向かうことができる。 4-2.予算特別委員会・決算特別委員会を改組 予算特別委員会で予算案が原案のまま可決されなかったことがないのはい つからのことからであろうか。現状は一般質問と同じ形式で議員全員に質問 する機会が与えられる。 問題はそれで審議が尽くされていると判断して良いのであるのか?これを 議会内部で課題として取り上げて調査したことがあるとは聴いていない。も ちろん、報告があるわけではない。これこそが先ずの問題である。今後の状 況を予測するだけしか考える糧がないことを改めて指摘しておく。それでも このままで良いとの楽観的な見方はまったく出てこない。 原案がそのまま、また、審議に関する客観的な調査もなく、これまで「素 通し機関」としての役割を果たしてきた。今、140万人の人口で喜んでいる 向きもあるが、2000年の老齢人口20万が2050年には70万に増え、年少人口が 2000年17万から2050年12万に減る。財政状況は厳しく、今後の予算案の審議 では議会として各議員が財政を理解したうえで予算の全体像を把握し、官僚 体制の既得権益擁護、前例主義、市長のシンボル主義(ハコモノ、イベント 等)をチェック、修正する機能が厳しく要求されるであろう。 特別委員会での総括的な審議と個別の精査を含めた分割審議が必要である 。また、3月定例会だけでなく、予算の概算要求のときから資料をもとに議 員間討論を活発におこなっていくことが更に大切である。従って、予算特別 委員会は総括的な討論の場として常任委員会化すること、個別の精査は例え ば現在の常任委員会でそれぞれ調査をおこなうことを提案する。また、決算 委員会も同じ仕組にして予算と決算の連動を計る必要がある。 上記のやり方からすれば、現在の特別委員会は総括質疑に切り換えること ができ、一般質問のやり方と同様に取り扱うことが可能になる。 4-3.常任委員会の見直し 「1.各区の特別委員会を議会内に設置」で示したように、地域別の委員 会と政策別の委員会のクロスオーバーとして委員会中心の議会運営を示した 。ここで、改めて現状の常任委員会が政策のカバー領域として適切なのか検 討が必要になってくる。すなわち、行政の組織別の編制だからである。また 、人数も各委員会12-13名が適切だろうか考え直す時期にきている。別の言い 方をすれば、議員数を問題にすることも含まれる。 この問題についてもこれまでの分析と今後の委員会のあり方をもとに議論 しなければならない。ここでは問題を提起するに止める。 5.バックヤード機能強化 これまで述べた真の議事機関としての議会へ改革を進めていくうえで、議 会局を始めとして、附属機関、調査機関、議会図書館等のバックヤード機能 の強化は当然必要である。問題はそのアプローチである。 議会局の職員は市役所の職員である。先ず、専門性として何を求め、その 専門性に対して市役所の職員としてのローテーションが妥当か、検討が必要 である。場合によっては神奈川県自治体議会事務局連合を組織する必要があ るかもしれない。また、附属機関、調査機関、としては民間の専門家、住民 のボランティア等を組織化することも必要であろう。更に、専門家として育 成するためには他機関との交流も必要かも知れない。 但し、必要性は感覚的に認められるだけであって、ここでも大切なのは仕 事のミッションを明らかにしてそこから現状を分析的に捉えることである。 ほとんど為されていない段階で機能の強化を主張しても説得力がない。今後 の検討課題である。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 編集発行人 吉井俊夫 ご意見・ご感想はメールでどうぞ t_yoshii@hotmail.com バックナンバー http://blog.mag2.com/m/log/0000219072/ (ここをクリックすると登録フォームがあります) 「本メルマガのまとめ」 http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/ine_mm.html 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000219072.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


