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身近にぶつかった問題点を、行政改革の視点から川崎市政へ課題提起している経験を生かし、ひとりでも地方自治体行政に参加できる方法論を提示します。更に、これを基盤に広く自治体の探検を志し、課題を共有する方々との交流による進化を目指します。

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2009/03/23

探検!地方自治体へ 第83号 09/03/23 改革を志す議会は争点を提起する

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探検!地方自治体へ〜川崎市政を中心に〜      第83号 09/03/23

★改革を志す議会は争点を提起する〜岩手県・多摩市・神奈川県〜★
1.要約
2.岩手県〜「再議」という制度〜
3.神奈川県〜「再議」を挟んで修正可決〜
4.多摩市〜編制替え動議可決〜
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1.要約

 地方自治体議会の首長提案修正が立て続けにマスメディアで話題になった。岩手県、
神奈川県、多摩市である。これが珍しいことなのか、たまたま報道されたことなのか、
にわかには判らない。
 しかし、岩手県、神奈川県は議会基本条例を成立させ、多摩市は市民参加を進めな
がら議会基本条例を検討している自治体であり、改革を志す議会という点で共通点を
見出したのだが、これもたまたまであろうか。

 筆者自身は先ず、岩手県の事件から「再議」という首長の権限があることを恥ずか
しながら始めて知った。
 補正予算の修正案を過半数で可決されたのだが、「再議」にかけることにより次の
議決で可決するには2/3以上を必要とすることになる。謂わば、拒否権である。
  但し、知事提案の原案は当然、否決されたままである。何も決まらないまま振り出
しに戻ることになる。岩手県の場合はこれに相当する。
 
 神奈川県の場合、争点についてはまったく異なる「受動喫煙防止条例」の修正が提
起された。新聞報道によれば、知事が「再議」をちらつかせ、議会で多数派が通そう
としていた「修正案」を更に「修正する案」で妥協が成立した。
 
 多摩市では、次年度予算案の編制替えを求める動議が賛成多数で可決され、市長は
市議会に提出していた予算案を撤回した。組替えの内容は福祉・教育予算へ建設費を
回すものであった。
 
2.岩手県

岩手日報(2009/03/07)
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090307_3
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090307_13

 県議会2月定例会は6日、本会議を再開。県立6医療施設の入院ベッドを廃止する
無床化計画に関連し、基幹病院への送迎バス購入費(約2,300万円)を削除した2008年
度一般会計補正予算案の修正案を賛成26人、反対20人で可決した。

 しかし、達増知事は県議会史上初となる「再議」を求めた。
 
 再開した本会議で採決の結果、成立に必要な3分の2以上(32人以上)の同意に達
せず、廃案となった。この後、県はバス購入費を除く補正予算案を提案し、全会一致
で可決した。

修正案の内容
 入院が必要な患者や家族などを基幹病院に送迎するマイクロバス5台の購入費
約2,300万円を除く。理由は5地域診療センター(各19床)の入院ベッド廃止(無床化
計画)を認めることになるからである。

以下は筆者コメントである。

 地方自治法176条(後出)で首長の議会議決に対する“再議”規定がある。それ
によれば、2/3以上の賛成がなければその議決は確定しない。
 この規定の考え方は現状の国会で、衆議院可決・参議院否決とときの「衆議院議員
2/3以上での再可決」とどこか似ている。

 但し、国会規定と異なるのは、首長の“拒否権”だということ。岩手県のケースも
反対が1/3以上で「第1の修正案」をブロックできるが、原案を可決することはで
きない。永遠のデッドロックを避けるためには更に「第2の修正案」が必要である。
「第1の修正案」の意義は争点、論点を整理し、県民に提示したことであろう。
 岩手県議会は、その持てる権能を十分に駆使したうえで、今回の修正案(但し、
否定するだけ)を提起したのか?疑問なしとはしない。今回の騒動は “議会の第一の
使命”である争点を提起する一里塚の意味であると理解したい。

 それよりも問題なのは政策内容にあると思う。地域診療センター(各19床)の入院
ベッドを廃止し、それに伴う入院用のマイクロバスを購入せざるを得ないという問題
である。ここまでくる間に問題を争点化してもっと根本的な対策を打てなかったので
あろうか。問題点をいち早く明らかにし、情報を政策決定レベルへ上げ、対策案を立
ててトップへ提案するシステムにどこか綻びがあるように感じられる。これは岩手県
に限ったことではないのであろうが。

 「医療」は国のレベルで、いつの時点かで基本的な認識に誤りが生じた、そのため
に全国的にシステムが混乱しているとの印象を受ける。特に疑問に思うのは「業界」
が自らの情報を編集できず、官僚―政治家へ問題点を伝えることができていないとの
印象をもつ。実際はどうなのであろうか。

参考 地方自治法 第七章 執行機関 
 第二節 普通地方公共団体の長 第二款 権限 
第百七十六条  普通地方公共団体の議会における条例の制定若しくは改廃又は予算に
関する議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特
別の定があるものを除く外、その送付を受けた日から十日以内に理由を示してこれを
再議に付することができる。 
○2  前項の規定による議会の議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、
その議決は、確定する。 
○3  前項の規定による議決については、出席議員の三分の二以上の者の同意がなけ
ればならない。 

3.神奈川県

受動喫煙防止条例案、飲食店罰則1年延期 神奈川知事と県議会が修正合意
2009/03/19  カナロコ
http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryivmar0903380/ 

 県議会で審議中の公共的施設受動喫煙防止条例案について、県議会の交渉四会派と
松沢成文知事は18日、飲食店などへの罰則適用を条例施行から一年延期する最終修正
案で合意した。当初目指した全面禁煙からは大幅に後退したが、全国で初めて民間施
設も規制対象にする条例案として、24日の本会議で可決、成立する見通しだ。
 水面下での妥協。知事の協議申し入れを議会が断った。しかし、結局は協議を受け
入れて妥協に到達。「再議」効果か。

「名」を取ったのは知事。罰則適用日が明示された。
「実」を取ったのは自民党、公明党、県政会の三会派。というよりは、施設運営業者
と喫煙者というところか。
 この名実については首長と議会は非対称というほどのことはないにしても、首長は
名に、議会は実に、分かれる。

 提案した知事としては「何とか条例」が可決されればともかく公約を果たしたこと
になる。ポイントを逃さなければ良い。今回は罰則規定とのことであるが、その他の
内容は二の次である。
 一方、議会は票がちらつく。事業者は花より団子であるからそれを背後に背負った
議員(議会)は何とか実をとることに必至となる。これは交渉が表立っていようが、
水面下であろうが基本的に変わることはない。

 肝心の受動喫煙者はどう思うだろうか。色々あるだろうが。『議会と当局の共同作
業』(知事)という評価にどの程度納得するのか。それが今後の動きを決めるであろ
う。

4.多摩市

多摩市 予算組み替えへ 福祉・教育関連巡り
市議会委動議可決(2009年3月14日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyotama/news/20090314-OYT8T00073.htm

 建設予算を今年から切られる部分の福祉・教育予算と差し替えるという案。1.7億円
分であるが、「修正」と同じである。予算案をすべて否定するのではなく、部分的な
修正であり、どこでも起こりそうな話である。

 動議を提出したのは、民主、改革ゆいの会、共産の野党3会派の6議員。市が計画
している福祉・教育予算の削減や自己負担増は、急激な景気悪化の影響を受けている
低所得者層の家計を直撃すると指摘した。

 組み替えは心身障害者のタクシー利用料金の助成基準や、小中学校就学援助費の認
定基準などの見直しを行わずに継続して助成する財源として、今月末に閉館する市役
所隣の「やまばとホール」の解体工事・跡地への駐車場整備工事のとりやめや、公園
用地の買収の撤回などを求めた。

 切られる部分の福祉・教育予算を建設予算と差替えるというのは、なるほどと思わ
せる。一番起こりそうな予算の組替えであるからだ。市の予算が前年度をベースに縦
割りで決まっていくのであれば、各局の裁量は限られている。そこで首長と職員のト
ップマネージャーによる指導がなければ、おそらく福祉予算は弱者の切り捨てとなる
ように思われる。

 その意味で今回の多摩市の事件はある種の前触れのようにも感じるのである。

 ともかく、今回知った事件は他でも起こっていて不思議はないし、また、先々もっ
と大きな形で起こる可能性を大いに持っているとも言える…我々にとって身近な問題
である。

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編集発行人 吉井俊夫
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