2009/06/01
[第65号]◆気軽に読む医薬翻訳ニュース・マガジン
みなさん、こんにちはKentiです。 「科学には国境はないが、科学者には祖国がある」 これは、ワクチンの予防接種という概念をはじめて示した科学者 パスツールの言葉です。 今、ワクチン開発の話題で取りざたされる新型インフルエンザの 話題を考えてみても、科学に国境がないことは容易に感じ取るこ とができるのではないでしょうか。 今回の医薬用語のお話では、いつもと少し趣向を変えて、その昔 に行われたある研究闘争のお話を取り上げてみました。 インフルエンザの対策にはワクチンが重要な役割をもちます。ワ クチンを発見したパスツールと細菌学の祖として有名なコッホの 研究闘争のお話は、人生ドラマとしてみても興味深いものではな いでしょうか? http://adventure.on.coocan.jp/journal/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ◆第65号◆ 気軽に読む医薬翻訳ニュース・マガジン パスツールとコッホの研究闘争 No.65 2009 vol.5 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 本メルマガでは最新の医科学論文、ITトレンドと雑学をお届けしています。 ━━━━━━━━━━━━━━ http://www.mag2.com/m/0000214844.html 交通網の発達によって、ある特定地域で生じた感染病が世界中に 広がるまでの拡散速度は、昔とは比べ物にならないくらい速くな っています。世界への感染拡大リスクを考える上で、一国の対策 だけでは難しいものがあります。また、ワクチン開発を迅速に行 って窮地を救う手段を提供することは、祖国の安全、そして祖国 の力を見せ付ける上で、科学者が負わねばならない課題なのかも しれません。 ★ [医学用語の雑学] ★ パスツールとコッホ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━………‥・ ■ 「科学には国境はないが、科学者には祖国がある」 この言葉の背景にはパスツールと並んで細菌学の祖と言われるコ レラ菌の発見者コッホとの学問闘争がありました。今から140年 ほど前のお話です。 二人とも細菌学の分野で非常に大きな功績を残した人物です。 この二人の国家を代表した研究競争についてのお話しするうえで 両者の業績を振り返ってみましょう。 ■ ルイ・パスツール (1822〜1895年:フランス) なめし皮職人の子として生まれ、ナポレオンの部隊に従軍 した軍人でもあった父から、ナポレオンと同じ名前をつけ られた。酒石酸結晶の観察から光学異性体を発見するなど 化学の世界で業績を残す。低温殺菌法の開発もパスツール の業績である。 ■ ロベルト・コッホ(1843〜1910年:ドイツ) 鉱山技師の子供として生まれ、田舎の小さな診療所から出 発し、後に多くの後進を育て「細菌学の祖」と呼ばれる。 ■ 二人の業績 1861年 自然発生説の否定(白鳥の首の実験)← パスツール 1876年 微生物が感染症の原因であることを立証← コッホ (炭素菌の発見) 1881年 炭素菌ワクチンの公開実験 ← パスツール * 実験は大成功するものの、世界中からのワクチン 提供依頼に、十分な品質のワクチンを提供できず、 被害続出 ←コッホによるパスツール非難 1882年 結核菌の発見 ← コッホ (細菌の染色法、固形培地、新たな培養技術の開発) * 1883年 インドでコレラ流行 コッホに引き続き、パスツールも遠征 1884年 コレラ菌の発見 ← コッホ 1885年 狂犬病ワクチンの発見 ← パスツール 1890年 結核ワクチン <ツベルクリンが有効と発表> ← コッホ * ツベルクリンは結核感染既往の診断にしか有効で なかったが、コッホの勇み足による発表で多くの 被害。 かつてのパスツールの失敗と同じ過ち <少しでも結果を速く出そうとした勇み足>をお かしてしまう。 フランスとドイツにおいて、交互に大発見を競い合ってき た二人の研究者ですが、二人して同じような失敗も経験し ています。学会で顔をあわせても会話を交わさなかった二 人ですが、それぞれの脳裏にはライバルの存在が常にあり、 負けるまいとする闘争心が次の研究への推進力となってい たのかもしれません(そうでないかもしれません)。 冒頭の言葉の後半部分「科学者には祖国がある」を考えるとき、 人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)を用いた開 発競争もまたその一つとして思い浮かびます。 新聞紙上に京都大学の山中教授の発表があったかと思えば、米国 研究者らによる研究成果が報告され、日本の科学の将来を背負う かのごとく、プロジェクトが組まれ・・・ 科学者は自分の発見を広く世の中の薬にてたいという思いを強く 持っているかもしれませんが、いつの間にか国家間の戦略上の論 争も生じたりして、「祖国」の利益も意識せざる得なくなるとい うことなのでしょう。 いずれにしても、科学論争が国家間戦争に発展したとしても、そ の成果の恩恵をうけるのは、国境を越えたものであってほしいも のではないでしょうか。 ★ [Web紹介] ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━………‥・ ▼ 感染と予防Web > 第4回:ワクチンについて http://www.kansen-yobo.com/kansen/bn04.html ワクチンの開発で忘れてならない重要人物がもう一人います。 エドワード・ジェンナー(英国)による天然痘ワクチン開発 です。「感染と予防Web」では、感染やワクチンについて非常 によくまとまったコンテンツを提供してくれています。 ★ [文献紹介] ★ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━………‥・ 近日中にメール配信する予定です。 http://adventure.on.coocan.jp/journal/modules/medical_science2/ ★ [書籍紹介] ★ 本メルマガはブッククロッシングの活動を応援中! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━………‥・ このコーナーでは、最近読んだ本の中から面白かった書籍を紹介しています。 -------------------------------------------------------------------- ▼ Value Seeds100(バリューシーズ100) ―ワーキングマザーが見つけたバリューのタネ 前田 めぐる 価格:¥ 1,260(定価:¥ 1,260) http://www.amazon.co.jp/dp/4778200470/ref=nosim/?tag=tinobouken-22 ちょっとした知り合いの書いた書籍。期待していた以上に良くできている と感心。生活の中に潜む隠れたヒトの欲求を見事に拾い上げ、新しい価値 創造を考えるヒントを提供してくれています。各項目の文章も軽妙でValue Seedsの命名も気が利いていてなかなかGoodです。 -------------------------------------------------------------------- ▼ ただマイヨ・ジョーヌのためでなく ランス アームストロング 価格:¥ 1,785(定価:¥ 1,785) http://www.amazon.co.jp/dp/4062102455/ref=nosim/?tag=tinobouken-22 マイヨ・ジョーヌ(黄色ジャージ)は、自転車レースで1位の選手だけが 着られる栄光のジャージ。世界有数の自転車選手を25歳で襲った悲劇─ ─睾丸癌。癌はすでに肺と脳にも転移していたが、彼は病気に向かい合い 、失望し、それを乗り越えて、今まで以上の強い選手へと生まれかわる。 なにかを成し遂げる人のすごさと、困難をプラスへと転換させることで得 られる人生のすばらしさ。ツール・ド・フランスという自転車競技の奥深 さもあわせて感じ取れる一冊でした。 ---------------------------------------------- ブッククロッシングジャパン http://bookcrossing.jp/ ---------------------------------------------- http://www.bookcrossing.com/mybookshelf/windfall/page_1/statusfilter_0 「世界中の街角を図書館に!」をコンセプトとした ブッククロッシングについて興味を抱いた方は、ぜ ひ、サイエンス、医療関連の書籍をお寄せください。 連絡は以下へ http://adventure.on.coocan.jp/journal/modules/inquirysp/ ◆編集後記(近況) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━………‥・ メルマガを出そうと思って前書きを書いたのが2週間以上前、 「ついに新型インフルエンザの国内感染が報告されました」 と書き始めて、そのままになり、いまとなっては過剰報道はなん だったのかと思うような状況になっています。 マスコミの情報操作に踊らされないための知識と判断力を国民 一人一人が持つことの必要性を強く感じる今日この頃です。 -------------------------------------------------------------------- いつもご購読ありがとうございます。 読者さんの本棚にて紹介いただけるとうれしいです。 http://www.mag2.com/wmag/osusume/toukou.html#osusume -------------------------------------------------------------------- _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★気軽に読む医薬翻訳ニュース・マガジン [読者数:470名] ・発行者HP:http://adventure.on.coocan.jp/journal/ ・発行者メール:ken.windfall□gmail.com (□を半角英数の@マークに変更してください) ★注意事項★ ・ 本メルマガで取り上げる情報は、医療行為を目的としていません。 ・ 数多くある研究報告の一部分を拾い出したに過ぎません。 ・ ニュースソースを記載していますが翻訳したわけではありません。 ・ 一部、創作の混じった文章であり、この点をご理解ください。 ★ご意見はこちら★ http://adventure.on.coocan.jp/journal/modules/inquirysp/ ★登録・解除★ http://www.mag2.com/m/0000214844.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C) reserved 2006-2009 by Kenti ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


