2008/03/02
儲かる?体験ルポ 日曜刊行
旅行に行く阿部です。
地元の方々と四万温泉に出かけてきます。
もちろんスーパーコンパニオン付きだそうです。
いまから涎が止まりません。
催眠商法 編
やり場のない憤りから自棄酒を煽る。
腹が立つが、怒ってもしょうがない。
どうすりゃいいんだ〜、やってらんねぇ。
と、独り言をぶつくさ。
ロビーで鍵をもらうと。
「おかえりなさい、阿部さん。
あの〜申し訳ございません、お部屋前の方をなんとかしていただけませんでしょうか?
他のお客様にも大変ご迷惑なもんで」
「なに〜」
いったい何事だろう?
赴くと、ナベが泣きながら正座をしている。
部屋はエレベーターのすぐ前なので、こりゃ確かに迷惑だわ。
俺も人が呼べないときは、良くやらされたっけ。
おっと、それどころではない。
「おい、とにかく中に入れ」
「いえ、許していただけるまでは動きません」
これだ、ホテルの従業員を困らせているのは。
きっとナベのことだ、頑として拒否してきたのだろう。
「解ったから、もういい。
早く入れ」
「本当ですか・・・
ありがとうございます」
と動こうするが、あまりの長時間の正座のために立てない。
こいつは何時間座っていたのだろう。
きっとナベなら私が帰るまで座り続けているのだろう。
そう思うと、また愛着が湧いてくる。
こんな一直線な男、滅多にいるもんじゃない。
しかも素直だ。
頭も良く、機転も回る。
やはり、私のところから出す真打ち第一号は、このナベだろう。
「もうやるなよ」
「はい」
もう顔がボロボロ、言葉には嗚咽が入る。
「俺も悪かったな、ナベがこんなことをやっているとき酒なんか飲んでいて。
ほんと、すまん。
仲直りだ、外の夜鳴きそばでも食いにいくべ」
一人では歩けず肩を貸す。
この引きずる足の重さこそが、私に対する信頼の証なんだろう。
きっとすげぇ真打ちにしてやるからな。
あがりまであと4日。
また記録の更新は問題がない。
東京はやりつくしたが、今度は千葉の県営住宅がある。
あいかわらず、根拠のない常勝思考である。
今夜もナベがトラックの手入に余念がない。
観察をしていると、ビニールテープの切り方がぎこちなく、とろい。
「貸してみろ」
と、交差している部分を引っ張ると。
「な、簡単にだろ」
「へぇ〜」
と、感慨深そうな息をはく、ナベ。
「やってみな」
「はい」
やはり要領が良いのか飲み込みも早い。
もっとも、こんなことは打ち込みの上手い下手に関係もなにもないのだが。
今までの苦戦の憂さを晴らすように次々にテープを開封していく。
「おい、そのへんにしとけよ」
「はい、しかし簡単で面白いほどですよ」
すると、その荷物の群の中に見慣れた名が。
○○○、こりゃ配送間違いだな。
この真ネタは去年までのものだ。
売り上げの向上を常と考える本社の提案で、マットの表示を代えて名も新しくしたのだ。
だが中身は昔のまんまのご機嫌石、こんなで売り上げが上がれば誰も苦労などしないだろう。
もっとも、2回3回と打っているところは別だが。
「お〜い、これ」
「はい」
痛い!
ナベが急にテープを引っ張るものだから人差し指が切傷した。
「いて〜」
「どうしたんですか」
と、真ネタの後から顔を出す。
「大変だ、血が出てますよ」
と、他人事。
「馬鹿。お前が引っ張ったから切れたんだよ」
事情を飲み込み焦るナベ。
「大丈夫だから。
タオルか何かを持ってきてくれ」
痛てぇ、この手の摩擦で切れる傷は後々まで痛い。
ついてないなぁ〜。
まったくナベ野郎、急に引きくさりよって。
「はい」
と、タオルをくれた。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?
すいません」
「大丈夫だ、ちょっと切れただけだろう。
ほら」
覗き込むと、赤い糸が垂れているような一直線の傷。
良かった〜大したことはなさそうだ。
と、安心した瞬間。
傷がぱくっと開く。
ギョ、やべぇぞ。こりゃ深いわ。
他人の血には強い私だが、己のものとなるとてんで意気地のない。
傷口の中に白いものが見えただけで、倒れそうになる。
これは貧血か。
「やばい。医者にいくぞ」
ナベが運転する横でズキンズキンと脈動する指を締め付ける。
早く止まれ。
車でいくほどの距離もなく、救急病院がみつかる。
やはり両国、お相撲さんの急患も多いだろうか。
それにしても、イタ〜イ。
縫合の際、無き面ではみっともないので。
「おい、俺は平気だから。
先に帰っていいぞ」
「そんなことはできません。
きっと兄貴は麻酔なしで縫われるのでしょう。
そんなお辛いときに、自分ひとりオメオメと帰れません。
最後までお供します」
あ!!!
そうだ、あの時のことを言っているんだ。
盲腸の手術も麻酔なしでやった、と言うあれだ。
あんなの完全に与太に決まっている。
立場上の言い回しであり、事実ではない。
もちろん盲腸もやったが、しっかりと麻酔をかけた。
おまけに尖端恐怖症なのもバレテしまう。
まずい。
それとも腹をくくるか?
いやとんでもない、くくれるはずがない。
今でこんだけ痛いのだから・・・縫うのはもっと痛いはず。
無理無理、絶対に無理。
「ねっ、さほど深くもなく。
あの〜バタフライかなんかで充分では?」
医者は呆れた顔。
「あのねっ、充分に深いの。
つまり縫合するわけ。今のは痛くないからね、大丈夫」
と、言うが全然大丈夫ではない。
「兄貴は麻酔が嫌いなんです。
麻酔なしで縫うつもりだから言っているんです」
か〜〜〜余計なことを。
それに、よりよってこんな場面で兄貴だなんて、風体もやばいければ顔つきもやばいのだから。
やはりその筋だと思うわなぁ〜。
え〜い、もう自棄のやんぱち。なるようになれ。
「いいんですね」
「どうぞ」かってに。
もう泣きそう。
バチッ!!
「ぎゃ〜」
編集後記
酷い話でしょう?
すべてはナベが悪いんです。
ん?
その前に与太話を飛ばした私が悪いのか?
判断はあなたにお任せします。
あ〜思い出すだけで左手の傷がうずきます。
あなたはこんなことしないですよね。
発行者 阿部 一義
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