2008/02/10
儲かる?体験ルポ 日曜刊行
おはようございます、阿部です。
東京にまた雪が降りました。
首都でありながら、ほんと雪は滅法弱い。
電車は遅れるし、浅草には人はこない。
私にとっても雪は招かざる客です。
催眠商法 編
副社長が一応のあがりとなった。
あがりと言っても、都内の両国での活動なので普段のような格別な感情も薄いようだ。
「阿部よ、本社がガタガタとウルセェから後で連絡をするよ」
と、相変わらずの一方的な言葉を置いていった。
つまり今後のことについてを相談、いや完全に構想青写真であろう、
それを告げに来るらしい。
面倒なので、
「他の日でも良いのでは」
「馬鹿野郎。こういうけじめは早い方がいい」
なんて言っているところをみると、
私が新会社に着いていくのは当たり前だと思っているようだ。
確かに副社長のおかげで早期にこの地位を就くことができた。
しかし今後の動向まで支配されるのはたまらん。
最近では特にそうだが、
こんなに簡単に売れる、イコール、馬鹿みたいに儲かる。
そんな体の良い話など、簡単には転がってはいまい。
ちょっと幇間も過剰だったのか?
今ごろになって反省をしても致しかたないか。
う〜、成績が良いのに胃が痛い。
両国にちなんでか、
ちゃんこ鍋屋で副社長に合う。
めちゃ好きな鴨のつみれと、物凄く嫌いな魚の煮込み。
これがちゃんこ鍋と言うものだろうか?
他の店は知らないのでまったく解らんが、適当に相槌をうつ。
「ここのちゃんこは両国いちの味だ。
両国で一番って言うことは日本で一番だ。
分かるか?」
「はい」
相撲の町で一番だからか、副社長の個人的な舌のせいかはわからんが、ここは納得しておくしかない。
「そんで例の話だがよ」
きた!本題が。
上手くはぐらかせないか。
「俺は4月の20日であがることが決まった。
予定より遅れたおかげで新会社の身支度ができていねぇ。
そこで阿部も大変だろうがよ、準備が整うまでの間この会社に残って順次情報を俺に流してくれや」
良かった!瓢箪から駒だ。社長のワンマンが功を奏した。
危機が去れば、いつものように太鼓持ちに変貌する現金な私。
さっきの思いはなんだっただろう、と考えつつ。
「かしこまりました。
随時ご連絡をさしあげますので、その点はご心配なく。
ところで副社長、新しい会社って、何をするんですか」
「ま、慌てるな。
まだ9割がただから、キチッと決まったら教えてやるよ」
9割決まっていて教えられない?
いやな予感、それにこの会社の情報?
まさか、オークションでも始めるのか、いや以前に違うと言っていたことだし、さて。
「その新しい会社なんですけど、私ごときで勤まるのですか?」
「心配するな。
阿部には本部で指導をやってもらうつもりだ。
給料も300くらいでいいか、ま、最初はそんなもんだろう。
それから支度金も用意するとさ」
俺が指導・・・・ 一体なんの?
それに最後の言葉、完全に私らの外に第三者がいるように聞こえるが。
それに心配するな、と言うのが余計に心配になる。
とりあえず足枷は取れた。
別れてしまえばこちらのもの、後の言い訳はどうにでもなる。
ひとまずは安心だ。
満期で渋谷の本社に帰る車中、笑いがこみ上げてくる。
あの馬鹿大将ども、1団地を一回の打ち込みで駄目にしやがる。
そんな簡単に団地が密集しているところなど、そうざらにあるもんじゃない。
その辺は都知事がかぶらないようにしているんだろう。
そんな感じだから、移動に時間を取り過ぎ、一日に2会場がやっとの有様のていたらく。
まるでわかっちゃいない。
聞き手も馬鹿だが、伝え手が杉ジィだからこれでもマシなほうなのかもしれない。
その間も私らは、西の方でぬくぬくと打ち込んでいた。
結果も上出来、いや出来過ぎだ。
自己でも最高なのはもちろん、社内の記録までも塗りかえたようだ。
本数は668本、もう給料計算ができない。
きっとあのワンマン社長も喜んで握手を求めてくるだろう。
本社の長椅子にふんぞりかえり、皆の顔を見送る。
出てくる券撒きに満面の笑みが、そして私に礼を述べる。
この顔を見れたことで連月させたことへの罪悪感が拭える。
今日はおもいきっり飲ましてやんべぇ〜。
お、新井さんより先にナベちゃんが呼ばれた。
ナベちゃんも良く新人ながらやってくれた。
お小遣いは倍の20万くらいか?
待てよ、今回は2月分だから40万。
40万の数字が頭に浮かんでから急に惜しいような気になる。
待てよ、ナベちゃんが40万なら新井さんはいくらだ?
今回の成績の立役者は私以前に新井さんだ。
馬鹿な迷信的予備知識さえ持っていなければ、この立場にいたのは村上だ。
通常なら30万、二月で60万、いや成績が良かったので70万か。
けどセコク思われるのもシャクなのでここは80だろうか?
もし80だとして、ナベちゃんと足すと、120万!!
あ〜めまいが・・・・。
あ!待てよ、その前に俺の給料は幾らなんだ?
1本一万として、初月が300と数十本。
次が668本、合わせて約1000本で1000万。
先ほど違うめまいが襲う。
額が額なだけに、本当にくれるのだろうか?いちゃもんをつけられて値切られる、などと生い立ちが不幸なばかりに、そんな光景しか頭を過ぎらない。
「阿部さん」
キター!新井さんの顔もニヤケきっている。
手ごたえは充分過ぎる。
入室後、恒例の握手の後に社長のおことばが。
「いや!良くやった。
今回のは凄い記録だよ、きっとこの先もこの社に未来永劫残る成績だ。
たいしたものだ」
と、やはり上機嫌。
社長室に飾られる最優秀賞のスチール写真の撮影も終り、後は給料を貰うだけだ。
もったいぶらず、早く出せ、コノ!
すると、今度は打って変わった剣のある口調でいいはじめる。
「おまえはどうするんだ」
と。
編集後記
ほんとうに新井さんの機転の良さで窮地を脱することができました。
しかしこれもほんの紙一重、村上がたわごとを言い出さなければ、
この成績は彼のものになっていたの間違いありません。
そして私の売れない側であたふたとのた打ち回っていたことでしょう。
人生に於いて、ところどころにくる勝敗とは、こんな表皮のところにあるもんなんです。
発行者 阿部 一義
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