2008/02/03
儲かる?体験ルポ 日曜刊行
おはようございます、
聖人になった阿部です。
先日お伝えしたとおり、現在通風の治療中でして。
この病の場合、最優先事項は食事なのだそうです。
大好きな肉を絶ち、野菜主体の食事に切り替えると。
あら不思議、短気がうせ、美しい婦女を見ても如何わしいことを考えなくなりました。
やはり肉食と煩悩とは、比例する因果関係があるようですね。
催眠商法 編
10時と13時の2回の打ち込みで26本を達成した。
新井さんの攻略にはまったく恐れ入る。
一日に1つの団地に絞り、それを3分割。
券撒きが重なりあわないようにして、スピーカーは鳴らさない。
巧みな攻め方であった。
3回目は18人と少な目なので杉ジィに頼むことにする。
ナベちゃんが毒に犯されないように、アシスタントは臨時で済ませる。
それは建前上で、実は新井さんとの相談事があったのだ。
杉ジィの聞きなれた口上が聞こえる襖一枚を隔てての我班の臨時ミーティングが始まった。
23区の地図を鳥瞰しながら意見を聞く。
明日からの券撒きの段取りである。
私の打ち込みの勉強などと体裁の良いことを言ってはいるが、実のところは内情視察に決まっている。
きっと明日から全車が団地打ちを始めるに違いなかった。
「どう、新井さん。
展開は楽に行きそうかな?」
「ん〜、なんとかなるじゃない。
今までは古い団地で成功しているから、やはりこのままで新興団地は馬鹿どもに任せよう」
「地図分けは可能かな」
「今日は思いきっリ飛んできたから・・・明日からは西を頂こう。
それで真打ちも話を進めてくださいよ」
「あいよ。
そんで大将連中の方は納得させられるかな」
「任しておいてよ」
本当に心強い返事だ。
後は夜のミーティングにかけるとして、
で、杉ジィはどうだろう」
お〜マットの説明に入っている。
相変わらず早いわ〜。
「本当にこのマットの効き目は凄いんだよ。
つい先日も寝たきりのばあちゃんが起き上がったんだから大変。
なに〜嘘。
そう言うと思ったよ」
と、手にクリアファイルを掲げた。
「ほらこの通り、お礼の感謝のお手紙がきている」
あちゃ〜ありゃ俺に来たヤツでないの。
大したタマだわ、ほんとうに煮ても焼いても食えない親父だ。
「ねっ、信じてくれた!
では、今日からでも使いたい。
いいものなら今すぐにでも使いたい!
そんな人。
その人にはこのウーロン茶だって、お手軽物干しだって、このぬいぐるみだって、
みんなタダであげちゃうよ。
ほら」
と、ぬいぐるみを客に投げつけた。
それを我先に奪い取る主婦連。
こりゃ子供には見せられないわ。
だいぶ券族も良さそうだし、少しは数字も出ると安心したとき。
久々の券族の良さに興奮をした杉ジィが吠えた。
「だうだ!これがオークションだ」
馬鹿か、このジジィは!
客には意味が分からないからいいようなもの・・・
甲羅を得た杉ジィでも、脳に血が上るほどの券族の良さなのだろう。
散らしをちょいと手伝い、8本の売り上げ。
ここは後のことも考えて、杉ジィの売り上げにしてやる。
「ほんとうですか!ありがとうござまいす」
と言うが、俺が売ったのだから俺のものだ、と顔に書いてある。
呆れていると、ナベちゃんがこそっと声をかける。
「阿部さん。
杉本さんって、あんなに酷い売り方なんですか?
話も阿部さんのが全然うまいすっよ」
「そうか」
知らないのだから当たり前の声だろう。
しかし俺も杉ジィと比べられるようではまだまだだな〜、
と、人並みに反省する。
明日からはきっと全真打ちが団地打ちを始めることだろう。
その際に起こる場所決めはとうに終わっているが、まだ打っていないところはたくさんある。
ここは新井さんのお手並みを拝見。
「西の方の団地は粗方終わっているし、北にするか東にするかで悩んでいたけど、
うちは1社、そっちは4社でやるんだから、団地の少ない上に北上していくよ。
団地は必ず沿線に沿っているから各沿線で振り分けよう・・・
待てよ。
いややぱっし、見つけたのは俺だし、ここはひとつゆっくりとやりたいから
そっちが北上してくれない。
埼玉にも結構あるからさ」
これに慌てる面々、結局は最初の言い分通りになってしまう。
西がまだ未開拓なのを知っているのは我社だけだ。
これで当分は安泰だ。
「この際だから東京は全部もらちゃいましょうよ。
どう真打ち、面倒だから連月にしない?」
と、こちらからは願ってもない申し出、即座に快答した。
それにしてもさすがは上座の大将、演技もゆさぶりも板についている。
たいしたものだ。
ナベちゃんの過去が抉って解ってきた。
一日で寝ている以外は常に行動を共にする仲、最初は私の話をするが、
そんな膨大な苦労話など持ちあわせていない。
ゆえに攻守交替で聞き手にまわった。
もう前の話だが、
ある揉め事から組織を代表して、ファッションマッサージ店に乗り込み、素人店長を脅かしたカドにより、実刑2年6月の懲役に。
出たら目出度く大兄ィになれる、と信じて満期で出所。
ところがそんなのは二昔も前の話で、実際には2年半の懲役ボケで完全に浦島太郎状態。
そんな人間に優しい手をさしのべる者など誰もいないのが、その世界。
完全なるお荷物だったそうだ。
そこで与えられたのが、覚せい剤の味見役。
つまり、薬の状態の良さを身をもって確認する作業。
絶対にシャブ中になる。
「へぇ〜、それで吟味ができたのかい」
「はぃ。それが薬が不思議なくらいに身体合いまして。
上からも褒められるほどの名人級でした」
「け、人間のクズだな」
「阿部さんはやったことがないんで?」
「馬鹿野郎、やるもへったくりもあるかい!
俺は大きっらいだ。
自慢じゃねぇが、盲腸の手術のときだって麻酔なしでやってもらったぐれぇ〜に、アンフェタミンは大嫌いだ。
まさか、おめぇ」
「とんでもない。昔の話ですよ」
と、ナベちゃんには意表をついた言葉だったのだろう、顔を曇らせる。
過去についてはお互いに言えた義理ではないので、ここは水に流すとして。
「いいか!あんなもの絶対に打つじゃねえぞ」
「はい、金輪際。それに足を洗ってからはきっちりと止めましたんで」
「ふ〜ん。ならいいけどよ」
だけど、快楽の凄まじさは凄いものがあるらしい。
留置場の大半は薬物による検挙者だが、
その連中が口を揃えて言うのが、
「早く出て、シャブ入れて一発やりて〜」
この言葉ばかり。
からかい気味に、
「良いっていうけど、どんなにいいんさ?」
「そりゃ凄いですよ。
言葉に表せませんが、しいて言えば。
1リットルぐらい射精する、って感じですか」
と言う馬鹿がいたくらいだから、その快楽は想像を絶するものであろう。
幸か不幸か、そのやり口の汚さに嫌気がさし、人間を廃業する前に組織と薬との縁を断ち切ったそうだ。
薬の件は腹が立つが、思えば可哀相なヤツであった。
信じていた組織に尽くした代償が、シャブのソムリエだなんて・・・
そりゃ親も長生きできないわ。
編集後記
良く聞く言葉で、
「興味本位で」ってありますよね。
そして次に続くのが、
「一度だけなら」
そんで「これでやめよう」
最終系は
「次で」
この流れは間違いないのです。
一度でもその世界に踏み込めば、後は負のスパイラルが待っているだけです。
これは薬に限った話ではありません。
人生に往々として、また身近にあることなのです。
儲け話、鬼畜な行い、破倫な肉体関係・・・・・
それらも全てがそうです。
その少しだけが、どっぷりと浸かってしまう第一歩なのです。
発行者 阿部 一義
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