インド to インドシナ旅行記“India CUTTERS” 055
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India CUTTERS by site_roof 8/4/2008
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実際にかかった日にちとしてはほんの2か月あまりの行程だったのが、メル
マガとしては1年半も続いてしまいました。
長いことおつきあいいただき、本当にありがとうございました。本文に記し
た内容の数時間後、たしか夜の11時半くらいだったと思うのだけれど、ぼくを
乗せたベトナム航空機が成田に向けてサイゴンを離陸、旅もとうとう終わりと
なりました。
話に出てくる女の子の写真が、手元に一枚だけ残っています。
もう一度会いにいきたいなぁという気持ちもなくはないけれど、でもたぶん、
そういうことはしないほうがいいのでしょう。
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"インド to インドシナ旅行記" 055
<サイゴン・エピローグ 「偶然と愛と執着」2>
サイゴンで、いつも分けへだてなく子どもたちに接するよういいきかせなが
ら、ぼくはセンターに通いつづけた。
思いっきりぶつかってきたり抱きついてきたり、子どもってこんなにも元気
な生き物なのか、最初はひたすらそう感心するばかりだったのだけど、日が経
つにつれ、一人ひとり、ぶつかり方にも抱きつき方にもそれぞれ違いがあるこ
とがわかってくる。
「自分からぶつかったり抱きついたりできない子たちもたくさんいるはず」そ
うきいていたこともたしかにその通りだった。そして、ぶつかれない「ぶつか
れな方」、抱きつけない「抱きつけな方」も、やはり一人ひとり違っていた。
最初その女の子は、「警戒」というと言葉が強すぎるかもしれないけれど、
すぐに懐っこく寄ってくる子、いきなり大人びた挨拶を送る子、恥かしそうに
笑みを浮かべる子、などなどと比べて、「こんにちは」と声をかけたぼくに、
随分おっかなびっくりに、無言で表情を返した。
でも、逃げてはいかなかった。一定の距離を保ちながらも、離れようとしな
い。ぼくはとにかく、「自分から抱きついてこれない」こういう子にも「分け
へだてなく」接しなければと思い、お名前は? 幾つ? そう訊いてみた。何
も答えてくれなかった。
翌日、翌々日と、会う度に少しずつそばまで近づいてくるようになり、そし
て何日目だっただろうか、とうとう彼女のほうからぼくの手を握ってきた。
相変わらずほとんど言葉は交わさないのだけど、ベンチに座れば膝に乗り、
「抱っこ」をねだるようになり「おんぶ」をせがむようになり、ついには休み
時間の間じゅうぼくから離れたがらなくなってしまい、今度は逆の意味で、彼
女と他の子たちとを「分けへだて」ないようにするのが大変になった。
ついにセンターからお別れする日になり、子どもたちみんなが、去っていこ
うとするぼくにちっちゃな手を大きく振り、日本語でサヨウナラの挨拶を贈っ
てくれた。いつものままの抜けるような笑顔たちに手を振りかえしながら、最
前列に立っていた例の女の子だけが今にも泣きだしそうに見えた。こらえてぼ
くは背中を向けた。
数歩進んだところで振りかえってみると(こういうとき振りかえってはいけ
ないのだ、きっと)、その子ひとりがまだぼくに手を振りつづけている。はっ
きりと、泣いているのがわかった。とうとうぼくは、回れ右をして、「元気で
ね」と彼女に言いに戻らないとならなかった。
分けへだてない、イコール、自分の「自=セルフ」を注ぐ「他=アザー」を
選択しない、ということ?
けれどどうしようもなく気持ちは騒ぐ、「この人に自分を注ぎたい」と感情
が叫ぶ、しかし一方で、「自分がいなかったらこの人は生きていけない」とま
で進みそうになる思いには、たぶんストップをかけたほうがいい、その発想は
自分の存在に意味を持たせたいがための自己憐憫、たとえもし自分がいなくな
っても「この人」は生きていくだろうし地球は回る。
そのまた一方で「人は人なしでは生きていけない」のもきっと真実。ならば
「人は人なしでは生きていけない」そのお互いの「自=セルフ」と「他=アザ
ー」との間に「選択」を生じさせてしまうもの、それは単なる「偶然」なのか、
それとも「愛」なのか、実は「執着」に過ぎないのか。
「分けへだてなく」ではなく「自分ひとりにだけあなたのセルフを注いでほし
い」こう願うのは、「偶然」と「愛」と「執着」の関係を学ぶ過程にいる子ど
もだけに許された特権か、果たしてぼくはそれを子どものときにちゃんと学べ
ているのか、ぼくはそれを子どもたちにちゃんと伝えられているのか。
サイゴンのミー・チーとの対面に備えてインドの人たちを断りつづけたぼく
の「選択」は、そして、去っていくぼくに涙を流した女の子のそばにもう一度
戻らないではいられなかったぼくの行動は、「偶然」なのか「愛」なのか「執
着」なのか。
最後の最後にぼくはまた、門を出るところでセンターを振りかえってしまっ
た。他の子たちがみんな日常のお勉強を始めている部屋の入り口から、彼女ひ
とりだけが、ぼくに手を振りつづけてくれている。
その顔が、まだ泣いているのかそれとも笑っているのかまでは、そこからで
はもう見えなかった。
<サイゴン・エピローグ 「偶然と愛と執着」おわり>
(執筆:2006‐10‐19)
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旅はこれで終わりですが、以前もお話したとおり、この旅行の冒頭、東京を
発ってインドに着いてから2週間あまりの日記を(このメルマガでは触れなか
った話です)、「インド to インドシナ旅行記」の『番外編』として、次号か
ら数回お送りしてみようと思います。
なので、よろしければもうしばらくお付き合いください。
それと、これも前々からいっていた、日本での旅のメルマガの発行準備が整
いました。こちらもぜひまたお付き合いいただけると嬉しいです。
今度は、日本の「あれこれあちこち」歩きまわった先々の「場所」で、出会
ったヒトや観たトコロや聴いたオトや感じたコト、などなどについて綴りつづ
けられることになります。
一応「旅」の行程の話が多くなるとは思うけれど、ぼくが住んでいる東京で、
「あれこれあちこち」歩きまわりながら観たり聴いたり感じたりしたことなど
も、取りあげることもあるかもしれません。
取りあえず最初は、今年の正月明けに西国を旅してまわったときのことを記
してみたいと思っています。
タイトル 『にほんの場所たち “Japanese CUTTERS”』
購読案内 http://www.mag2.com/m/0000262092.html
※同じURLでパイロット版も掲載されていますのでご参照ください。
India CUTTERS 055/8/4/2008
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