2007/03/15
日本応用老年学会は高齢社会のネットワークセンターを目指しています
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 応用老年学ニュースレター 第6号 平成19年3月15 日発行 日本応用老年学会事務局 http://www.sag-j.org/ ■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆応用老年学ニュースレターは、日本応用老年学会事務局が毎月 発行するメールマガジンです。会員以外の方にもご購読 いただけます。 □ 目次 □-------------------------------------------------- 1 インターネットは高齢者への情報提供手段として有用か? 桜美林大学大学院老年学助教授 渡辺修一郎 2 世代間関係と世代間プログラムについて NPO法人日本世代間交流協会 矢島さとる 3 老いてこそ、人生はすばらしい! フリーアナウンサー 遠田恵子 4 “50−75歳の生き方”が面白くなる? マインドビジョン代表 楳林郁夫 ─────────────────────────────── ■■1 インターネットは高齢者への情報提供手段として有用か? ■■ 桜美林大学大学院老年学助教授 渡辺修一郎 ─────────────────────────────── このメールマガジンのような電子媒体が高齢者への情報提供手段とし てどの程度有用かを検討したことがあります(2002年の日本公衆衛生 学会にて発表).某企業の60〜75歳の退職者を希望により119名のEメ ール群と83名の郵便群に割り付け,Eメール群にはEメールまたはWeb ページによる質問票で,郵便群には郵送法で,生活習慣等に関する 初回調査を行いました.その後,Eメール群にはEメールとWebページ により,郵便群には印刷物の郵送により,高齢期の健康維持をテーマ とした800字程度の記事を2本ずつ,2週間に1回,半年間配信しました. 中間と終了時に同様の方法で,生活習慣,記事や配信方法に対する 評価や活用のされ方などを調査しました. まず対象の属性ではEメール群には,女性や独居者が少なく,インタ ーネット利用に関しては同居する若者等のサポートの存在が重要なよう です.調査の回答率は,初回は両群とも90%以上でしたが,Eメール群 の回答率は半年後には63%と郵便群の89%よりかなり低下しました. インターネットにアクセスするより能動的な行動が必要な追跡調査に は適していないと思われました.また,インターネットによる調査 ではEメールよりはWebページを用いた調査の方が利用しやすいという 意見が多くみられました. 記事の内容はEメール群の80%,郵便群の94%が大体読んでおり, 全般的な使い勝手も,ほとんどが「利用しやすかった」との回答であり, ふだんEメールを使っている高齢者にとってはインターネットによる健康 情報の配信は十分実用的と考えられます.ただし,記事が長すぎると いう回答は,Eメール群では22%と郵便群に比較し多く,Eメールによる 1回の情報量は1600字程度までがよいのではないかと思われます. その他の特徴では,記事の内容を同居者との間で話題にしたことがある 人は両群とも70%程度でしたが,同居者以外とも話題にした人はEメール 群の方が高率であり,インターネットによる情報は,本人や家族以外 にも広く伝播しやすいようです. また,記事を保管している割合はEメール群の方が高率でしたが, 再読したことがある人の割合は郵便群の方が高く,再読してもらいたい 情報はプリントアウトを促すなどの対応が必要と思われました. 有為転変の世ではありますが今後の情報配信の参考にしていただければ と存じます. ─────────────────────────────── ■■ 2 世代間関係と世代間プログラムについて □□ NPO法人日本世代間交流協会 矢島さとる ─────────────────────────────── 高齢者の社会貢献のなかでも、異なる世代が交流を通して互いに学習 したり一緒に何かを成し遂げる活動を「世代間交流」などと呼びますが、 このような取組は、文化や伝統の継承活動、まちづくり、環境保全活動、 地域住民による学校教育支援など、現実社会のニーズに応える多様な スタイルで実践されるようになりました。例えば学校教育では、 地域住民の経験や知識を、食育や環境教育、キャリア教育、文化伝承 活動の支援に生かす取組みがされていて、そこでは高齢者が大きな役割 を果たしています。また、多くの子育て支援活動では子育て後の中高年 女性や退職後の男性高齢者などが支援にあたっています。 昨年の夏に、NPO法人日本世代間交流協会として世代間交流国際フォー ラムの準備運営に携わらせていただきました。多くの世代間プログラム の実践が紹介され、教育や福祉など様々な領域から、300名近くの実践者、 研究者がご参加くださいました。日本では、世代間“交流”と紹介される ためか、交流することが目的?と考えられがちですが、交流や協働は アプローチであり、参加者に新たな社会的関与を提供すると同時に、 地域社会などの問題解決をはかろう、という目的が根底にあります。 また、実践は普及しているものの、研究はまだ萌芽期にあると言える でしょう。独特な文化的背景をもつ日本における世代間の関係や関与 のあり方には、独自の理念や方法論が必要ではないかと考えられます。 国際的には、学術誌:Journal of Intergenerational Relationships がHawarth Press社から発刊されたり、国際世代間交流協会が設立される など、研究者と非営利団体などの協働による基盤づくりが進んでいます。 米国では1970-80年代から「子供v.s.杖(老人)」や「(社会保障資源 を貪る)貪欲な老人」などという揶揄にみられるように社会保障資源 をめぐる世代間抗争的な風潮があり、それに対する形で、「抗争」では なく「相互理解と共存」による社会を実現しようと、青少年、高齢者の それぞれの権利擁護団体が共同してGenerations United(諸世代連合) を設立しました。現在に至るまで、世代間関係の向上を目指したプログ ラムの推進や政策提言などを行っています。 昨今、日本でも世代間関係については必ずしも楽観的ではいられません。 ぜひ老年学の立場から明らかにし、領域やセクターを超えて紹介しなけ ればならない点が多いと実感します。世代間プログラムのような取組が、 世代間扶助に支えられた社会保障システムに対する人々の理解と意識、 また就労の場での多世代の共存のあり方など、より広い意味での世代間 関係の向上に寄与することも視野に入れていく必要も感じます。 ─────────────────────────────── ■□ 3 老いてこそ、人生はすばらしい! ■□ フリーアナウンサー 遠田恵子 ────── ───────────────────────── このところ、元気な高齢者との出会いが多い。職業柄、さまざまな分野 で活躍している方にお目にかかるが、ひときわ明るい “元気オーラ”に 包まれている人は、なぜかご高齢の方が多い。はつらつと生きる方と言葉 を交わすうちに、こちらまで元気になるから不思議だ。とりわけパワーを いただいた方たちをご紹介したい。 クラリネット担当・82歳、大太鼓担当・76歳・・・大正末期に結成 され代を替えながら80年もの間続いてきたのが、『北村大沢楽隊』。 リーダーの渡辺喜一さんは2代目の82歳、現在のメンバー5人の平均年 齢は74歳。宮城県の旧河南町(現・石巻市)の北村大沢地区で農業を営 んでいる面々だ。平成17年にはCDを出してしまうほどそのファンは多く、 地域にとってはなくてはならない人気バンドとなっている。地元の小学校 の運動会には結成当初から欠かさず参加、子供たちのリレーや玉入れ競技 を生演奏で盛り上げている。「時々、音がずれたりするけど、楽隊の演奏 がないとやる気がしない。」「おじいちゃんたちが頑張っているので、 ボクもがんばって走る!」と子どたちからも大人気。「みんなが喜んでくれ るのが何よりも嬉しい」と語るメンバーたち。夏祭りや敬老会などあちこち から声がかかる。地域に密着し、人々から愛される元気な高齢者である。 「身体が動く間は社会活動を続けないとね。生きている限り、何かの役に立 ちたい。」と話すのは、卒寿を迎えた大石さきさん。31年続く劇団の主催 者で、脚本家、そして女優という多彩な顔を持ち、そのパワフルな生き方は 02年に映画にもなった。劇団を始めたのは、市役所の仕事を定年退職した 時。「嫁と姑」「介護」「痴呆」など、お年寄りの視点から捉えた高齢者問 題を題材にした公演は、780回を数えた。小中学校で公演したり、大学生 と共演したりするなど、世代間をつなぐ役割も担っている。 にぎやかな鉦や太鼓、派手な衣装で街を練り歩くチンドン屋さん。その音 と姿に出会う機会はめっきり減った。この3月で91歳になる。現役最高齢 の親方・菊乃家〆丸さんがこの道に入って77年。日本の庶民文化の移り 変わりと重なるそのチンドン人生は、子供向けの社会科絵本にもなった。東 京の下町に暮らし、人情を大切にする生粋の江戸っ子である。庶民文化とし てのチンドン文化を守り続ける〆丸さんのもとには、弟子入り志願の若者が 多く訪れる。 地域での社会貢献、世代間交流、文化や伝統の継承・・・これからの社会 に欠かせないキーワードが、それぞれの生き方からよく見えてくる。長年の 経験や知恵をいかしていきいきと輝く高齢者の姿を通して、同じ高齢世代 には“生きる勇気”を、若い世代には“未来への希望”を感じてもらえる のではないかと思う。これからも、こうしたお年寄りの姿を丁寧に描き、 年を重ねることの素晴らしさを伝えていきたい。 「老いてこそ人生はすばらしい!」・・・いつか自分でもそう思える日が 来ることを願いながら。 ─────────────────────────────── □■ 4 “50−75歳の生き方”が面白くなる? ■□ マインドビジョン代表 楳林郁夫 ─────────────────────────────── ここ1年、企業で「50歳ライフキャリアデザイン研修」が増えている。 それまでは50歳代後半が対象の研修が大半で、その中身は残り少ない 会社人生をどう貢献するか(あるいは社外転出計画)、あるいは定年後のラ イフプランなどが中心だった。しかし、リストラから一転、労働力不足や 65歳雇用の時代に変わる中、「65歳まで能力を発揮してもらいたい」(経営 側)、「定年後も含めてじっくり人生設計を考えたい」(働く側)という 双方のニーズが絡み合って50歳での研修が増えていると思われる。 ところで50歳といえば、まだ仕事に追われる一方で、社会的にも自分の 限界が見え、体力の衰えや後輩からの旧世代扱い、家庭でも組織でもだんだ ん居心地の悪さを感じる時期でもある。せいぜい60歳前後で定年を迎えた 後は悠々自適か、経済的理由や健康、生きがいから働き続けるか、というよ うに、将来の選択は割と限られていた。 そんな中、50歳で将来のライフキャリアをデザインしようと思っても、 なかなか思い浮かばない。「50歳から60代、70代までをを含め、どう 生きるか」なんて、そんなことこれまで考えたこともないという人が大半だ からだ。研修の場面では頭を抱えて戸惑う50歳がかなりいる。 しかし、それでも変化は着実に起きている。1つのきっかけは団塊の世代 が定年後を見据えていろんな生き方を模索し始めてきたことだ。50歳代も 団塊の世代の動向を見据えながら、もっと長期的に、つまり75歳位までを 視野に入れた生き方、働き方を考え始めているともいえる。 最近出た1冊の本が50歳代でも読まれている。五木寛之の「林住期」で ある。古代インドでは人生を「学生期」「家住期」「林住期」そして 「遊行期」の4つの時期に分けて考えたという。「林住期」とは、年齢的に は50歳から75歳位。一見、世の俗世間から離れ、自然の中に独り住む イメージがするが、それだけではなく、人が本来なすべきこと、自分が本当 にやりたいと思うことは何か、を本気で自分に問い返してみる、そんな時期 でもあると五木は述べている。 老年学の分野でも近年、「サードエイジ」という考え方が出てきている。 これは老化を退行としてみるのではなく、生涯発達と捉える考え方である。 学者によって多少違うが、大体50歳から75歳位を「第2の成長期」 として、再生、復興、若返り、あるいは新しい価値観、新しい生産性などが キーワードになっている。 古代インドどころか、日本ですら1945年の平均寿命は49.8歳。 つまり、「林住期」あるいは「サードエイジ」をじっくり味わいながら 生きた人は非常に限られていた。しかしすでに、大半の人が50歳から 75歳を生きる時代を迎えている。誰もがすでに「林住期」や「サード エイジ」の持つ豊かさや成熟さを享受できる時代にいるわけだ。 戸惑いながらも、企業の中の50歳代も自らの人生を考え始めている。 そこが面白い。定年まで10年以上ある。その後はさらに20年以上も あるのだ。これからどんな多様な生き方、働き方が出てくるのだろうか。 ───────────────────────────── お知らせ:当学会の会員の方は是非ご自身の体験やご意見を投稿ください。 投稿された方には1千円の図書券を謝礼としてお送りさせていた だきます。貴重な体験や意見、考えなど800〜1000字にまとめて 楳林(Email: ume-i@extra.ocn.ne.jp)までお送りください。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 日本応用老年学会事務局発行 オフィシャル・メールマガジン【応用老年学ニュースレター】 このメルマガは『まぐまぐ!』を利用して発行しています。 ---------------------------------------------------------------------- 応用老年学ニュースレター 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000211090.html 無断転用はお断りします。 編集:柴田博(日本応用老年学会理事長) 楳林郁夫(マインドビジョン代表) 日本応用老年学会事務局 e-mail ume-i@extra.ocn.ne.jp 〒173-0015 東京都板橋区栄町35−2 東京都老人総合研究所 自立促進と介護予防研究チーム内 ◎応用老年学ニュースレターのバックナンバー ⇒ http://blog.mag2.com/m/log/0000211090/


