2006/11/16
日本応用老年学会は高齢社会のネットワークセンターをめざします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 応用老年学ニュースレター 第2号 平成18年11月15 日発行 日本応用老年学会事務局 http://www.sag-j.org/ ■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆応用老年学ニュースレターは、日本応用老年学会事務局が毎月 発行するメールマガジンです。会員以外の方にもご購読 いただけます。 □ 目次 □-------------------------------------------------- 1 日本応用老年学会からのお知らせ 2【巻頭言】アメリカから学ぶべき応用老年学 3 今、問われる介護職者の資格 (その1) 4 生き地獄 5 定年後の海外ロングステイ -------------------------------------------------------------- 日本応用老年学会事務局の楳林です。学会の設立総会も終わり、 これからが本番です。会員の皆様といろんな企画を考えて いきたいと思います。 ─────────────────────────────── ■ ■ ■ ■ 1 日本応用老年学会からのお知らせ ─────────────────────────────── 「設立総会の御礼」 去る、10月28日(土)野口英世記念会館におきまして、無事設立総会を 終えることが できました。これもひとえに役員、会員、出席者並びに 関係者の皆様方のおかげと心より感謝申し上げます。 設立総会ではまず芳賀博東北文化学園大学院教授がこれからの老年学には 介入型、問題解決型の研究が必要であるとして応用老年学会への期待を 語っていただきました。また産業界を代表して若杉史夫・東京経営者協会理事が 高齢者が豊富な知識を生かし就労や社会貢献に活躍する時代であることを 強調されました。ジャーナリストの小林節子さんからは90歳代の両親と 一緒に暮らすことで学べたこと話していただきました。 柴田博・桜美林大学大学院教授は日本における老年学が研究だけでなく、 教育の必要性を述べていただきました。最期に柴田雅人・内閣府統括官が 高齢者のための政策が社会のニーズに応えようとしていること、そして 応用老年学会の社会的役割に対する期待を語っていただきました。 なお設立総会には219名、懇親会にも113名の方が参加され産・官・学・民 における学際的、職際的交流が活発に行われ ました。 現在会員数は354(個人319名 団体47)となりました(11月15日現在)。 ================ ●講演会のお知らせ ================ 【講演内容】 「老いを学ぶ」−身体・心理・社会的なよりよき老化− 【講 師】 日本応用老年学会 理事長 桜美林大学大学院老年学教授 医学博士 柴田 博 【日 時】 11月26日(日)14:00〜16:00(開場13:30) 【場 所】 〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館8階 【定 員】 70名(先着順) 【会 費】 1,000円(非会員2,000円)当日会場にて 【申し込み】 ホームページ(http://www.sag-j.org/)から申込書を ダウンロードできます ─────────────────────────────── ■■ 2 アメリカから学ぶべき応用老年学 ■■ 日本応用老年学会理事長 柴田 博 ─────────────────────────────── 1 応用老年学の大切さ すでに述べたように、老年学のきわめて重要な領域に応用老年学があります。 英語ではapplied gerontologyとよびます。学問は実社会に何らかの貢献を すべきものですから、応用できない学問の価値は高くありません。 しかし、これまでの学問の担い手はこの応用を軽視してきました。 応用は、専門性を薄めたものと考えたり、ひどい場合は学問を不純にする という発想すらあったのです。しかし、プラグマティズムの国アメリカでは 事情が違っていて、老年学の応用も早くから心がけてきました。 2 アメリカにおける教育老年学 アメリカの応用老年学には教育老年学(educational gerontology) と産業老年学(industrial gerontology)などさまざまの領域があります。 今回はとくに、教育老年学の問題を取り上げます。 人種差別(racism)、性差別(sexism)に次ぐ3つ目の差別として年齢差別 (ageism)の克服に乗り出したアメリカは、老年学の教育に力を入れてきました。 1965年「高齢アメリカ人法(Older Americans Act)」を成立させ、 この法律にもとづき、さまざまな大学に老年学教育のための予算をつけました。 現在、老年学のメッカとなっている多くの大学はこのとき教育予算を配布された 大学です。 1974年「高等教育老年学会(Association for Gerontology in Higher Education, AGHE )」を設立しました。この年、「国立老化研究所 (National Institute of Aging, NIA)」も設立されました。 以上のように、アメリカでは、教育と研究がバランスよく両輪として 機能しています。むしろ教育が先行しているといえるでしょう。 3 日本の課題 日本では、1972年の東京都老人総合研究所、1988年の長寿科学振興財団、 2004年の国立長寿医療センターの歩みにみられるように、研究と医療には 大きな前進がみられます。しかし、教育に対する施策が遅れています。 アメリカには40近くある学際的老年学を専攻できる修士課程が1私学である 桜美林大学にしかないというのもお寒いかぎりです。学校教育・社会教育を 問わず、教育老年学を充実させていくことが喫緊の課題です。 ─────────────────────────────── ■■ 3 今、問われる介護職者の資格 (その1) □□ 鈴木知佐子 星さ大学非常勤講師 ─────────────────────────────── 54万5000人・・この数字は何を表しているか、ご存知でしょうか? これは平成18年4月現在のものですが、介護の専門職である 介護福祉士資格登録者の数字です。(これは登録者ですから、 必ずしも全員が現在、介護現場で働いているとは限りません) 勿論、介護現場で働く人はこの資格以外にもホームヘルパー1〜2級の資格 を持った人達も従事しています。 厚生労働省が調査した平成17年、全国の介護保険施設、 居宅サービス事業所及び居宅介護支援事業所の概数は、 介護老人福祉施設(5,535施設)、介護老人保健施設(3,278施設)、 訪問介護事業所(20,588事業所)、通所介護事業所(17,651事業所)、 となっており、利用者・在所者数は、介護老人福祉施設395,319人、 訪問介護では1,097,769人で、いずれのサービス機関も前年度に比較して 利用者は確実に増えています。これらの高齢者、障がい者の介護サービスを 支えているのが、介護福祉士であり、ホームヘルパーである事は、今や、 殆どの国民が知る所となりました。しかし介護サービス利用者に対して、 介護職者の数は決して充足しているとは言えず、地域差はあるものの、 多くの介護老人施設・事業所は介護職者不足に悩んでいます。 平成元年に介護マンパワーの資格を国の資格としてスタートさせて以来、 転職者を含め、多くの若者が、この仕事を目指して資格を取得してきました。 そして今、18年の歳月を経て、介護サービスを支えるマンパワーは、 若者の職場としても定着しつつあるのです。ある介護老人施設の職員の平均年齢が 24,5才である事を見てもその実態がうかがえます。勿論、地域差もありますが、 全国的に見て若い世代の職場となっている傾向は変わらないでしょう。 日本の高齢者施策はドイツや北欧の福祉政策を追随しながら今日に至っていますが、 これからは、日本固有の福祉社会の構築と、更なるサービスの質の向上を 目指していくことがこれからの日本における課題です。 その課題を実現するためには一方で、若者を含め、この仕事を目指す人達が、 やりがいや誇りを持って従事できる介護職者の賃金の保障と、 労働環境の整備も最重要課題であると思います。介護福祉士の資格が、 十分な賃金や安心できる労働環境の保障を受けるためには、資格に見合った 体系的で専門的な教育を受けていることや高い倫理観や教養を持ち、 信頼出来る豊かな人間性等が求められるのは当然の事です。 ─────────────────────────────── ■□ 4 生き地獄 ■□ 中辻 萬冶 桜美林大学加齢・発達研究所研究員 ─────────────────────────────── いつだったかのNHKの認知症の特集番組で、家族を介護している方2人の 投書が紹介されました。そこには共通の言葉がありました。「生き地獄」です。 出演したある著名な女性も、長く続いた舅の介護を「生き地獄でした」 と表現されました。 「生き地獄」、この言葉は介護する家族の苦しみを端的に表しています。 認知症の周辺症状としてよく知られていることを考えてみれば、 介護が生き地獄となることは容易に想像できます。 金を盗んだ犯人に仕立てられる。食後直ちにまた食事を要求するのを、 過食を恐れて断ったら、「うちの嫁は食事も食べさせてくれない」と 近所に触れ回わる。徘徊を追って、くたくたになって町中を歩き回る。 淫らな行為をされる。汚物が塗られた壁の拭き掃除をする。 こんなことが重なれば、正に生き地獄でしょう。 病気だとはいえ、こんな悪行を重ねて自分を苦しめるその心の内を計りかね、 長年の同居生活の中での気まずい出来事などを思い出して、 これはその仕返しだと考えたとしても、不思議ではありません。 「早く死んでくれれば」、そんな恨みを抱いたことをも含めての 「生き地獄」なのでしょう。 しかし、この「生き地獄」論には一つの大きな落とし穴があるのではないか。 そんなことを私が感じたある経験があります。毎週傾聴ボランティアとして 活動しているグループホームで、ある日Kさんは職員に向かって激しい口調で 詰め寄っていました。「知らない人が入ってきて、お茶なんか馴れ馴れしく 飲んでいるのは、おかしいんじゃないか。」これは正論です。 しかし実は馴れ馴れしくお茶を飲んでいたのは、別の利用者Tさんのお嫁さんで、 週に一、二度はやって来る人なのです。Kさんも何度も会っています。 しかしそれを記憶していないKさんには、知らない人でしかありません。 職員は当然「あれは知らない人じゃないのよ。Tさんのお嫁さんよ。 Kさんも何度も会っているでしょう。」と反論します。 そんな記憶がないKさんには、こんな反論は納得できません。 自分の主張を受け入れてもらえず、激高されます。その時私は 「生き地獄」の原点を見たような気がしました。 認知症の方には記憶や見当識の障害という中核症状が起きます。 こうした障害を持った人に見えている光景は、われわれが見ている光景とは 違います。この違いが生き地獄を生むのではないでしょうか。 そして、どのように見えているのだろうかということに介護する側が 思いを致せば、生き地獄は薄らぐのではないでしょうか。 これが「パーソン・センタード・ケア」ではないでしょうか。 ─────────────────────────────── □■ 5 定年後の海外ロングステイ ■□ 安藤新平 桜美林大学加齢・発達研究所研究員 ─────────────────────────────── リタイア後の第二の人生、夫婦のかねてよりの夢は中国で日本語教師として 活躍することだった。当時68歳のS氏はもともとある高校で40年間英語を担当 してきたベテラン教師、リタイア後は学生時代に専攻した中国語を活かして、 中国での日本語教師を第二の人生の目標にした。定年前から機会を見つけては、 さびついた中国語に磨きをかけてきた。 一方妻のAさんは中国行きには大賛成、「以前から海外生活を体験したかった」と、 夫にまけじと中国語習得にいそしんだ。そのかいあって中国南東部の都市にある 大学の日本語教師として迎えられた。任期は3年間だった。 海外ロングステイとは生活の源泉を日本に置きながら、比較的長い期間 海外で生活することである。定年を目前に迎えた団塊世代に向けた調査から、 「定年をきっかけにしたいこと」という質問に対し、12%が「海外ロングステイ」 を選択している(n=416、回答方法:複数回答可、電通シニアプロジェクト)。 オーストラリア、スペイン、タイ、マレーシアなどは、就労をしないことを 約束にいわゆる「リタイアメントビザ」を発給している。一定の条件を満たせば、 これまでの貯蓄や年金でロングステイが可能であるというわけだ。 スペインでは基本生活費が日本円で15万円程度、マレーシアでは12万円もあれば かなり豊かな生活ができるらしい。タイでは住む地域により差はあるが、 かなり優雅な生活で20万、チェンマイなどの地方都市では5万円程度でも 生活できるらしい。 東南アジアの国々の人口ピラミッドは、日本の釣鐘型とは違い裾に行くほど広い、 ようするにまだ若い国々なのである。医療面では一人の看護師で5人の患者を診る 日本とは対照的。フィリピンは一人の患者に二人の看護師といった、なんとも うらやましい環境にある。将来は年金だけでは最低限の生活もままならない高齢者が、 年金で海外生活をおくることや、海外での介護施設入所も増えるのではとの予測もある。 東京にすむEさん、若い頃から海外生活にあこがれていた。 定年後は海外にロングステイするかどうか思案中。 現在どこの国が最適か情報収集をはじめて1年、Eさんが出した結論は 海外ロングステイは「あわてない」ことが大切ということだ。 多くの人がビザ申請代行業者や、現地の不動産会社のすすめで、 あわてて多額の手続き料を払いビザ取得ついでに不動産も購入。 最初の数ヶ月は観光気分で見るもの全てが珍しくあっという間に時間が過ぎる。 ところが1年もするとそろそろ日本食も恋しくなるころ、 言葉の壁で現地のコミュニティーにもなかなかとけこめない。こんな具合で、 ものの1年で帰ってきてしまう人が半数近くもいるらしい。 まずはじっくりビザなしでその地を訪れる。気候、食事そして フィーリング合うか、医療のレベルは、言葉はある程度通じるか、 気の合う日本人が住んでいるか、また日本の家は、親の介護は、 そしてなによりも大切なことは「その地で打ち込める何かがあるか」 なのである。最初にご紹介したSさん夫妻は、若い学生の力になることが できたと満足顔、おまけにエネルギーをもらって若返ったと目をかがやかせた。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 日本応用老年学会事務局発行 オフィシャル・メールマガジン【応用老年学ニュースレター】 このメルマガは『まぐまぐ!』を利用して発行しています。 ---------------------------------------------------------------------- 応用老年学ニュースレター 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000211090.html 無断転用はお断りします。 編集:柴田博(桜美林大学大学院) 芳賀博(東北文化学園大学大学院教授) 楳林郁夫(マインドビジョン代表) 日本応用老年学会事務局 e-mail ume-i@extra.ocn.ne.jp 〒173-0015 東京都板橋区栄町35−2 東京都老人総合研究所 自立促進と介護予防研究チーム内


