2008/12/06
住まいと法律~判例編(97号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 住まいと法律〜判例編(97号) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・事実 (最高裁昭和44年7月15日、判タ242号158頁判時570号46頁) 被告は、ある人から建物を賃借して居住していました。そして、建物のある土地 は、建物の所有者とは別の人(原告)が所有するものだったようです。原告が被 告に対し、建物からの立ち退きと土地の明渡しを請求したことから、今回の紛争 に発展しました。 原告の主張に対し、被告は建物の所有者が土地の所有権を時効で取得したと主 張したのですが、高等裁判所では主張が認められなかったようです。そこで、被 告が上告したところから、今回の判断が示されました。 ・法律上のポイント 時効によってものの所有権を得るためには、「時効取得する!」と主張しなけれ ばなりません(時効の援用と呼ばれています)。民法145条には、「時効は、 当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」と 規定されています。要するに、当事者が時効を援用しなければならないわけです。 それでは、民法にいう「当事者」とは誰を指すのでしょうか。今回の事案では、 建物の所有者が時効を援用できる「当事者」であることは間違いないでしょう。 しかし、被告は建物の所有者ではなく、建物を借りている人に過ぎません。法律 上のポイントは、建物の賃借人が建物の建っている土地の取得時効を援用できる のかどうかです。 [山本総則501ー507頁] ・判決 判決は、被告が「建物を賃借しているにすぎない」とした上で、被告は「土地の 取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから、右土地の所有権の取 得時効を援用することはできない」と判断しました。その結果、原告の請求が認 められますから、被告は建物から出て行かなくてはなりません。 もし被告の主張が認められていたら、建物の所有者(賃貸人)は土地の所有権 を取得することになり、被告は建物を借りて住み続けることができたはずです。 それにもかかわらず、判決は建物の賃借人が「直接利益を受ける者ではない」こ と理由に、被告の主張を認めませんでした。 (判例は変更されることがあります。トラブルの際には弁護士などへご相談を) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行人:馬場 民生(法科大学院生) HP:http://www.jttk.zaq.ne.jp/bagqn504/ 掲示板:http://db.zaq.ne.jp/asp/bbs/jttk_bagqn504_1/frame/list 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000209388.html


