住まいと法律~判例編  RSSを登録する

住宅をめぐる法律は激変したといっても過言ではありません。こうしたなか安心できる住まいの購入、トラブルの防止を実現するためには、かつての裁判例を理解することが重要です。住まいと法律(判例編)では、住まいにかかわる判例をわかりやすく解説します。

現在休刊中です    
解除

規約に同意して

2008/09/27

住まいと法律~判例編(86号)

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
住まいと法律〜判例編(86号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・事実
(最高裁平成18年1月17日、判タ1207号144頁判時1927号161頁)
商店のシャッターや文化財などへの落書きが社会問題化しています。今回の事案
では、公共施設に落書きをしたことが、器物損壊罪という刑罰を科すに値するの
かどうかが問われました。
 被告は、区立公園内に設置された公衆便所へ落書きをしました。ラッカースプ
レー2本を用いて、赤色と黒色のペンキを吹き付け、建物の側面をほとんど埋め
尽くすような形で、「反戦」「戦争反対」「スペクタクル社会」と大書したので
す。被告が大書した文字を消すために、約7万円の費用を要したようです。

・法律上のポイント
被告にどのような目的があったにせよ、このような落書き行為が社会的に許され
ない行為であることは明らかでしょう。問題は、落書きを消す費用を負担させる
に止まらず、刑事罰という非常に重い責任を負わせなければならないような行為
を、被告がしたのかどうかです。
 法律的には次のような問題となります。器物損壊罪(刑法260条)を適用す
るためには、建物を「損壊」しなければなりません。仮に被告が、公衆便所を重
機を使って破壊したのならば、建物を「損壊」したといえるでしょう。法律上の
ポイントは、落書き行為が、建物の「損壊」に当たるのかどうかです。
[新論点講義シリーズ2刑法各論(井田良・弘文堂)100頁]

・判決
判決は、「本件落書き行為は、本件建物の外観ないし美観を著しく汚損し、原状
回復に相当の困難を生じさせたものであって、その効用を減損させたものという
べきであるから、刑法260条前段にいう『損壊』に当たる」と判断しました。
つまり、被告の落書き行為は、器物損壊罪という刑法上の罪を科するに値すると
いうわけです。
 この判決の評価は人によって分かれると思います。「文化財ならともかく、た
かが公衆便所で刑罰を科すのは厳しすぎる」と考える方も、少なくないかもしれ
ません。それでは、通常の住宅に落書きした場合はどうでしょうか。次のように
説明して、刑罰の対象となるという意見もあります:「通常の住宅の外壁一面に
ペンキで醜悪な落書きをされたような場合(あるいは、外壁一面を派手な色に塗
られた場合)、そのままで居住し続けることが心理的に耐えられないという場合
が想定できる。そのような場合に、そのままで居住し続けられないのは、住宅の
建物が本来備えていた美観、外観が著しく損なわれたからに外ならないであろう。
そして、原状回復に相当の困難があれば、所有者、管理者の被る財産的な損害は、
建造物の一部を物理的に毀損された場合と実質的に異なるところはない」(判例
タイムズ1207号144頁)
(判例は変更されることがあります。トラブルの際には弁護士などへご相談を)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行人:馬場 民生(法科大学院生)
HP:http://www.jttk.zaq.ne.jp/bagqn504/
掲示板:http://db.zaq.ne.jp/asp/bbs/jttk_bagqn504_1/frame/list
発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000209388.html 
現在休刊中です
解除

規約に同意して

最近の記事

上へ戻る