住まいと法律~判例編  RSSを登録する

住宅をめぐる法律は激変したといっても過言ではありません。こうしたなか安心できる住まいの購入、トラブルの防止を実現するためには、かつての裁判例を理解することが重要です。住まいと法律(判例編)では、住まいにかかわる判例をわかりやすく解説します。

現在休刊中です    
解除

規約に同意して

2008/08/09

住まいと法律~判例編(82号)

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
住まいと法律〜判例編(82号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・事実
(最高裁平成18年1月17日、判タ1206号73頁判時1925号3頁)
被告は、鮮魚店を開業するために土地を買いました。そして、間口を広げるため
に、本件で問題となった土地などをさらに購入したのです。被告は購入した土地
を専用進入路として使用し、さらにその通路をコンクリート舗装しました。
 これに対して、原告は、被告が通路として使用している土地について実は原告
の所有物だったとして、所有権が原告にあることの確認と、コンクリート舗装の
撤去を求めて訴えを提起しました。
(事案を単純化しています)

・法律上のポイント
民法162条は、自分のものだと思って20年間にわたって土地を占有していた
人は、その土地が仮に他人のものだったとしても、自分のものだと信じ込んでい
た人の所有物になると、規定しています。
 しかしながら、判例は、20年間にわたる占有の後に、別の人がその同じ土地
を購入して、登記まで移転してしまった場合には、20年間も占有していた人で
はなく、土地を購入した別の人がその土地の所有権を取得するとしています。今
回の事案は、まさにこのようなケースでした(被告が20年以上にわたって占有
した土地を、原告が購入してさらに登記まで移転していた)。
 ただし、これには例外があり、土地を購入した別の人が「背信的悪意者」にあ
たる場合には、その別の人は「この土地は俺の物だ!」とは主張できないと、判
例は判断しています。「背信的悪意者」とは聞き慣れない言葉ですが、単に他人
による占有の事実を知っていただけではなく、「この土地は俺の物だ!」と主張
させるに値しない特別な事情(背信性)のある人のことです。法律上のポイント
は、本件の原告が、「背信的悪意者」に当たるかどうかです。
[佐久間物権78〜84頁]

・判決
判決は、背信的悪意者というためには、原告が少なくとも被告による「多年にわ
たる占有継続の事実を認識している必要がある」と、判断しました。高等裁判所
は「多年にわたる占有継続の事実」についての原告の認識の有無について判断し
ていませんでしたから、最高裁は高等裁判所に審理のやり直しを命じたのです。
仮に、原告が被告による長年にわたる占有を知っていたのならば、もしかすると
「背信的悪意者」だとして、原告の主張は認められないかもしれません。この場
合は、被告がこれまで通りに土地を利用し続けることができます。
 ここからは、少し専門的な話です。正直に言ってこの判決の正確な理解は難し
いです。判例タイムズは、「本判決は、所有権の時効取得について背信的悪意者
に当たるための要件を最高裁として初めて明らかにしたもの」と解説していまし
た。「背信的悪意者に当たるための要件」といわれても、漠然としています。お
そらく、背信的悪意者のうちの「悪意」の要件が、「多年にわたる占有継続の事
実」の認識なのでしょう。佐久間教授は、「これは、第三者の悪意を緩やかに認
定するものであるが、悪意の認定が緩和されるならば背信性が緩やかに認定され
ること(たとえば、他人の長期占有を知りながら、何らの確認もせずに前主の権
利を信じていた場合には原則として背信性を肯定すること)も十分にありうるだ
ろう」(佐久間物権84頁)と、本判例を解釈しています。
(判例は変更されることがあります。トラブルの際には弁護士などへご相談を)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行人:馬場 民生(法科大学院生)
HP:http://www.jttk.zaq.ne.jp/bagqn504/
掲示板:http://db.zaq.ne.jp/asp/bbs/jttk_bagqn504_1/frame/list
発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000209388.html 
現在休刊中です
解除

規約に同意して

最近の記事

上へ戻る